起業する予定のある人、起業したばかりの人の資金調達は、日本政策金融公庫から融資を受けるケースが多いです。
融資の審査を受けるためには「創業計画書」の提出が必要となります。創業計画書は融資の審査を左右するといっても過言ではありません。
とはいえ、創業計画書の「内容を知らない」「作成したことがない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では創業計画書の書き方と必要書類、作成時のポイントを解説します。
これから起業を検討している方、起業したばかりの方はぜひ参考にしてください。
創業計画書とは、起業する方が「どのような事業を始めるのか」をまとめた書類であり、日本政策公庫から融資を受ける際に提出する書類です。
具体的な事業内容と売上げ予想、取引先などを記載し、日本政策金融公庫が審査してもらう際に必須書類となります。
創業計画書には以下の8項目を記載します。
創業する動機、目的を記載します。面接の志望動機とは異なり、熱意などを記載するのではなく、創業を行う目的や起業までに行った準備、これからの目標、それらに付随する根拠などを記入しましょう。
経営者の略歴では、これまで携わってきた職種、勤務先名、役職などを記載します。さらに過去に起業したことがあるのかについて以下の3項目からチェックマークをつけます。
事業を経営していたことはない。
事業を経営していたことがあり、現在もその事業を続けている。
事業を経営していたことがあるが、既にその事業をやめている。
また「取得資格」と「知的財産権」の有無もチェックマークをつけ、あれば内容を記載します。経営者の職歴などは、起業しても優秀な経営者になるかを判断する重要な項目です。
金融機関は融資審査をするうえで、過去の実績や経験を考慮するため、プラスになる職歴は積極的に記載しましょう。
取り扱う商品やサービスなどを記載し、セールスポイントや販売戦略、ターゲット客、競合などを記載します。細かく記載できる方は、市場分析ができていると判断されやすいため、融資の可否のポイントにもつながります。
販売先や仕入れ先など、取引関係が分かる内容を記載します。すでに仕入れが決まっている方は、準備が整っていると判断され、融資審査に対して好印象につながります。
一方で何も決まっていない方は、起業しても良いスタートができない可能性が高いと判断される場合もあるため、取引先は創業計画書を作成する前に固めておきましょう。
創業して3か月以上継続して雇用を予定している場合は記載します。融資には直接関係性が低いものの、雇用の創出が融資の条件としている「新創業融資制度」などを受ける場合は従業員が必要となるため注意してください。
現在の借り入れ状況を記載します。住宅ローンやマイカーローンなどを借入している方は、残債と月々の返済額を明記しましょう。月々の返済額が大きいと、見合った収入を確保できるのかがポイントとなります。
借入していることを隠したりしても、日本政策金融公庫の方で借入の有無を調べるので、必ず記載してください。
起業するための必要な資金や捻出できる自己資金などを記載します。もちろん自己資金が多いほど、余剰金を持ち合わせていると判断してもらえるため、融資の審査が有利に働く傾向にあります。
設備資金を記載する際は、根拠となる見積書が必要となるため、事前に用意しておきましょう。また自己資金のエビデンスも必要となるため、直近の預金口座のコピーなども用意しておきましょう。
創業当初の利益と軌道に乗った場合の利益を想定して記載します。もちろん予測の数値となりますが、できるだけ根拠を示すことが大切です。
売上高が〇〇円になる理由やロジックを証明するものや、仕入れ原価がわかる見積書などをもとに計算することが大切です。創業計画書を提出した際に、「事業の見通しになる根拠はありますか」と聞かれることもあるため、準備しておきましょう。
創業計画書は日本政策金融公庫のホームページにある「国民生活事業各種書式ダウンロード」にてダウンロード可能です。PDFとエクセルの2種類あり、さらに業種ごとの記入例もあります。
日本政策金融公庫の融資を受けるためには、創業計画書その他に以下の書類を用意しなければいけません。
収支計画書とは、毎月の利益を想定したものです。先ほど「事業の見通し」で紹介した内容を一月毎に細分化し、どのような計画で進めるかを表した書類です。
一般的には創業当初の月は売り上げが少なくなるものの、徐々に高い利益を出せる計画書が多いです。また資金繰り計画書も収支計画書と同じような内容であるため、どちらか一つでも良いと判断される場合もあります。詳しくは融資打診をする日本政策金融公庫に確認してください。
事業計画書は融資を受けてから数年後までの計画を記入した書類です。創業当初は「事業の見通し」に記入し、その後の計画を事業概要書にまとめます。
事業計画書は受ける融資や事業によってひな形が異なるため、「国民生活事業各種書式ダウンロード」で確認しながら作成してください。
市場調査に関する資料や見積書などを用意します。市場調査資料があると、より売り上げ高や利益が具体的な数字であることを証明できます。
設備資金を借入する方は、必要な項目ごとの見積書が必要です。日本政策金融公庫は、「見込みの数字が正しいのか」「借入しても十分返済していける事業なのか」をチェックします。そのため数字の根拠となる書類ができるだけ用意しておきましょう。
上記の他に以下の書類が必要となります。
運転免許証またはパスポート
住民票
最近2期分の確定申告書・決算書
許認可証(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)
他にも借入する融資や事業によって必要書類が異なるため、事前に日本政策金融公庫へ問い合わせしておくことをおすすめします。
最後に創業計画書の完成度を上げ、融資の審査をクリアするためのポイントを3つ紹介します。
創業計画書を初め、提出する書類の分かりやすさを意識することが大切です。「どのような事業計画なのか」「数字に対する根拠はあるのか」「将来性が見込める事業なのか」を分かりやすく簡潔に伝えることで、信用力が伝わり、融資の可否に大きく影響します。
融資は信用問題と言われるほど、起業者の人格や人柄を大切にします。もちろん事業計画も大切ですが、将来的な話であるため、最終的には人も判断材料となることから、相手に伝わる書類を心がけましょう。
売上高や原価、利益などの数字は第三者から見てもおかしくないと思われることが大切です。架空の数字や希望の数値を記入しても、現実味がなければ融資は認可されないでしょう。そのため根拠となる資料を集め、客観的に見てもおかしくない数字を揃えるようにしましょう。
初めて起業する方は、専門家のアドバイスを受けて創業することが大切です。弁護士や中小企業診断士など、融資のことはもちろん、事業計画を作成するうえで様々な助言をしてくれます。
右も左もわからずに起業しても、事業が成功するとは限らないうえ、融資の審査が下りないケースも多いです。そのため専門家に相談しながら創業計画書を作成しましょう。
今回は創業計画書の書き方と必要書類、作成時のポイントを紹介しました。
日本政策金融公庫の融資を受けて起業する方は、必ず融資審査の段階で必要となります。これから始める事業内容や収支計画、必要な資金をまとめた書類を分かりやすく作成しましょう。
初めて作成する人は専門家などに相談すると、より具体的な数字と必要書類を集められるため、ぜひ一度専門家に聞いてみても良いでしょう。