2024年よりスタートした新NISA。テレビや雑誌で多く取り上げられておりますが、そもそも「新NISAって何?」と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。
この記事では新NISAの特徴や旧NISAとの違い、活用するメリットについて紹介します。
新NISAとは、積立投資や成長株への投資を行う際に利用できる非課税制度のことです。
本来、日本では投資で得た利益に対して20.315%の税率を掛けた税金を納めなければいけません。たとえば100万円で買った株を150万円に値上がりした時に売却した場合、売却益である50万円に対して約20%(=約10万円)の税金がかかります。この税金分が免除される制度です。
新NISAは個人の資産運用を後押しするために国がつくった制度です。活用するデメリットはあまりないため、投資をするのであればまずは新NISAで取引を行うのがおすすめです。
新NISAは2024年よりスタートしましたが、以前は「つみたてNISA」「一般NISA」という制度でした(この記事では、まとめて旧NISAと呼びます)。旧NISAから新NISAになって変わった点を以下の表にまとめました。
項目 | 新NISA | 旧NISA |
---|---|---|
制度の併用 | 可能(積立投資枠と成長投資枠の併用が可能) | 不可(つみたてNISA・一般NISAのどちらかのみ) |
非課税期間 | 無制限 | つみたてNISA:20年(最長2042年) 一般NISA:5年(最長2027年) ※新NISAへの引継ぎ不可 |
年間投資枠 | つみたて投資枠:120万円 成長投資枠:240万円 | つみたてNISA:40万円 一般NISA:120万円 |
生涯非課税限度額 | 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで保有可能) | つみたてNISA:800万円 一般NISA:600万円 |
投資枠の再利用 | 売却した場合、翌年以降に利用可能 | 売却した場合、投資枠は復活しない |
最も大きな変更点は、新NISAによって「非課税で運用できる金額が増えた」ということでしょう。つみたてNISAや一般NISAは年間投資枠が小さいうえ、最大の非課税期間も5年~20年と限られていました。
しかし新NISAでは非課税期間が廃止され、簿価(買付金額)ベースで最大1,800万円までは生涯非課税で運用できるようになったため、非課税のメリットを存分に受けることができます。
参考:金融庁
ここでは新NISAの特徴について5点紹介します。
引き上げられた年間投資上限額
つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能
非課税期間無期限
生涯非課税限度額設定
NISAと新NISAは別口座
既につみたてNISAや一般NISAで運用している方は、新NISAによって大きく変わった点も多いため、一つずつ確認しておきましょう。
先程もお伝えした通り、新NISAでは年間投資上限額が引上げとなっています。つみたてNISAは年間40万円でしたが、つみたて投資枠では約3倍の120万円となっています。その結果得られる非課税メリットも大きくなります。
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能です。つみたて投資枠は金融庁が認める一定の投資信託のみですが、成長投資枠は投資信託に加えて株式にも投資ができます。以前は、つみたてNISAと一般NISAは併用できませんでしたが、新NISAでは併用可能となり、短期~中期の投資は成長投資枠を、中期~長期の投資はつみたて投資枠を活用するなど、投資目標に合わせて柔軟に組み合わせることが可能です。
新NISAでは非課税期間が設けられておらず、いつ利益が出ても課税されません。旧NISAでは、つみたてNISAは20年、一般NISAは5年と期限が設けられていました。投資は本来長期的に行うものであるにも関わらず、期間が限られていると非課税メリットを受けるために途中で売らないといけなかったり、活用しづらい点がありました。
新NISAでは長期間運用しても非課税メリットを受けられるようになったため、売買タイミングは自由に選択できます。
新NISAでは、最大1,800万円まで運用することができます。仮につみたて投資枠で年間120万円運用した場合、15年間積立可能です。とはいえ、年間60万円であれば、30年間の積立ができ、老後のタイミングなどに合わせて出金することなども可能です。
さらに、つみたてNISAと一般NISAでは保有していた金融商品を売却した場合は、投資枠が復活しませんでしたが、新NISAでは翌年以降も非課税保有限度額が利用可能となったため、柔軟に資産運用することが可能です。
旧NISAと新NISAでの運用は別口座です。既につみたてNISAや一般NISAの口座を所有している方は、自動的に金融機関で新NISAの口座が新たに開設されます。旧NISAから新NISAに運用は引き継げませんので、注意するようにしましょう。
色々な面で条件が緩和された新NISAですが、そもそもなぜ新NISAを活用しなければならないのでしょうか?新NISAで投資を行うメリットを2点紹介します。
新NISAで運用しておけば、老後資金の代わりにすることができます。日本では、未だ老後2,000万円問題が明確に解決していません。さらに、若い世代の人は「公的年金が受給できない」と言われており、自身で貯蓄を行って老後資金を用意しておかなければいけません。
新NISAで運用しておけば、計画的に資金を積み立てることができるため、老後の金銭的な不安を軽減することができるでしょう。
新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠を併用することにより、柔軟な運用が可能となります。
つみたて投資枠は金融庁が選定した長期の積立・分散投資に適した投資枠です。一方、成長投資枠は一括買付も積立投資も可能です。
双方をうまく組み合わせることにより、若いうちはリスクを取って成長株に投資する、定年が近くなれば安定した商品を少額ずつ積み立てるなど、ライフステージに合わせた投資ができるようになります。
つみたてNISAの時、20年間複数の投資先に資金を分散した場合の平均利回りは「2%〜8%」前後であると金融庁が公表しています。(下図参照)
公表内容に沿って、新NISAでも利回り5%と仮定すると、以下の表のようなシミュレーションになります。なおシミュレーションに配当は含まれていないため、配当分も増えることになります。
運用期間 | 月々1万円 | 月々5万円 | 月々10万円 |
---|---|---|---|
10年 | 120万円→155万円 | 600万円→776万円 | 1,200万円→1,552万円 |
15年 | 180万円→267万円 | 900万円→1,336万円 | 1,800万円→2,672万円 |
20年 | 240万円→411万円 | 1,200万円→2,055万円 | 2,400万円→4,110万円 |
もちろん投資する金融商品によって利回りは異なるため、上記の金額は目安としておきましょう。また保有期間が短いと短期的な下落により元本割れのリスクが伴うため、長期目線で運用することが大切です。
どれくらいの金額になるか事前にシミュレーションしたい方は、金融庁の資産運用シミュレーション を利用してみましょう。
新NISAで購入することができるのは主に以下の3点です。
投資信託
国内株式
外国株式
それぞれ特徴が異なるため、一つずつ確認しておきましょう。
投資信託とは投資の専門家である金融機関が、複数の投資から資金を集めて金融商品へ投資し、得られる利益を投資家へ分配する仕組みです。運用をプロに任せられるため、投資初心者の方でも始めやすいという特徴があります。新NISAの投資信託は以下の4つの銘柄が投資先となります。
投資対象が主に株式で構成された投資信託のことです。債券と比較すると値動きも大きいため、大きな利益を得られる反面、下落するリスクも大きいという特徴があります。
債券型とは、投資対象が主に債券で構成された投資信託のことです。債券は利子で増えていく仕組みで、債券の発行体が安定さえしていれば短期の業績によらず値動きも緩やかな傾向があります。大きく上昇しない反面、大きな損失も生まれにくいという特徴があります。
バランス型は、株式や債券など一つの資産だけに投資するのではなく、複数の資産へ分散してバランスよく投資する投資信託のことです。
コモディティ型とは、原油やガソリンなどのエネルギーや、トウモロコシや大豆などの穀物、金やプラチナなどのことを指します。投資対象商品の受給変動によって値動きが大きくなることもあります。
日本国内の企業が発行している株式のことを国内株式と言います。国内株式は日本でも馴染みのある企業も多いうえ、ニュースなどで企業の動向を追えるため分析しやすい特徴があります。国内株式は、主に以下の3つに分かれます。
国内株式とは、日本企業が発行する株式のことを指します。証券取引所に上場している株式が該当します。日本人の投資家にとっては身近である上、株式の優待を受けられることもあります。
J-REITとは、投資家から資金を集めて不動産を運用して得た賃料収入等を元に投資家に分配する金融商品のことです。通常、不動産取引を行うためには大きな資金が必要となりますが、J-REITは小口化されているため個人の投資家でも投資しやすい商品です。
国内ETFとは、日本国内の金融商品取引所に上場している株価指数などの特定の指標に連動することを目指した投資信託のことです。上場投資信託とも呼ばれており、日経225などが代表例です。
外国株式とは、海外の企業が発行する株式のことです。外国の証券取引所および国内の金融商品取引所に上場している外国株式などが該当します。新興国など値動きの大きな株式が含まれており、国内株式に比べるとハイリスク・ハイリターンである傾向があります。
先進国株は、主に北米、EU、アジアの先進国の企業の株式のことを指します。先進国は通貨価値が比較的安定しており、大きな値崩れを起こしにくく、比較的安定しています。米国のシリコンバレーのような、テクノロジーの進化によって大きく上昇する株式も含まれています。
中国、インドなど、新興国における企業の株式です。新興国には、人口の大幅な増加や経済の急成長によって、ものやサービスの需要が一気に高まっている地域があり、うまく投資できれば大きな利益を得ることができます。一方で、財務的に安定していない国があったり、他国、特にアメリカの景気に大きく左右されるような地域は、株価が大きく下落してしまうリスクがあるため注意が必要です。
海外ETFとは、海外の取引所に上場している投資信託のことです。株価指数など特定の指標への連動を目指す投資信託であり、かつ、上場しているため株式のように売買できる点にあります。有名なところでは、主要な米国企業に投資できるS&P500などが人気です。
最後に、これから新NISAを始める方に向けておすすめの証券会社を3社紹介します。
SBI証券
楽天証券
マネックス証券
自分に合った証券会社を見つけるためにも、一つずつ確認しておきましょう。
SBI証券は、手数料の低さ、取り扱い商品の多さ、口座数、企業の安定性などを踏まえて、最もバランスの取れた証券会社です。クレカ積立ができるカードや貯められるポイントの選択肢が多いという特徴があります。新NISAをはじめ、投資信託などで運用すると、保有残高に対しても多くのポイントが付与されます。
ポイントはTポイント、Pontaポイント、Vポイント、dポイント、JALのマイル、PayPayポイントの6種類から貯めるポイントを選ぶことが可能です。
さらにSBI証券は国内株式、株式、海外ETFについてNISAの売買手数料が無料です。
<SBI証券の新NISAの取引銘柄>
項目 | 内容 |
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総合口座の数 | 1,168.6万(2023年12月時点) |
つみたて投資枠の銘柄数 | 219本(2024年2月1日時点) |
成長投資枠の取扱い銘柄数 | 1,164銘柄(2024年2月1日時点) |
成長投資枠で買える海外株 | 米国、中国、ASEAN |
楽天証券の新NISAにおける最大のメリットは、楽天カードと楽天キャッシュを併用してキャッシュレス決済することにより、月10万円までの投信積立が楽天ポイント付与の対象になることです。そのため楽天ユーザーにとってはおすすめの証券会社です。
新NISA初心者に向けた学習コンテンツも多数閲覧できるため、勉強しながら始めることが可能です。
<楽天証券の新NISAの取引銘柄>
項目 | 内容 |
---|---|
総合口座の数 | 1,020万(2023年12月時点) |
つみたて投資枠の銘柄数 | 221本(2024年2月1日時点) |
成長投資枠の取扱い銘柄数 | 1,122銘柄(2024年2月1日時点) |
成長投資枠で買える海外株 | 米国、中国、ASEAN |
参考:2024年から始まる新NISA制度(新しいNISA) | 楽天証券
マネックス証券はIPO株、米国株など取り扱い商品のラインナップが特徴的な証券会社です。他社同様、投資信託の積立額をマネックスカードで決済するとマネックスポイントが1.5〜2.2%還元されるキャンペーンもあります。
貯まったポイントは投資信託や株式手数料に利用できます。その他にもAmazonギフトカードやdポイント、Tポイント、Pontaポイント、nanacoポイント、WAONポイント、ANAやJALのマイルなどに交換することが可能です。
またマネックス証券はNISA口座について日本株、米国株だけでなく、中国株の売買手数料も無料です。中国株は他の証券会社では取り扱い銘柄数も少ないですが、マネックス証券では2,000社を超えるため、選択肢が大きい特徴があります。
<マネックス証券の新NISAの取引銘柄>
項目 | 内容 |
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総合口座の数 | 225.1万(2023年12月時点) |
つみたて投資枠の銘柄数 | 218本(2024年2月1日時点) |
成長投資枠の取扱い銘柄数 | 1,106銘柄(2024年2月1日時点) |
成長投資枠で買える海外株 | 米国、中国、ASEAN |
新NISAとは、投資で得られた利益にかかる税金が非課税になる、少額投資非課税制度のことです。2024年より年間投資枠が増え、非課税期間の制限がなくなったことで、非常に活用しやすくなりました。
投資は早く始めて、長期間運用することでリスクを減らしていける仕組みになっています。それぞれのライフステージに合わせて、国内株式、外国株式、投資信託など、それぞれの特徴を踏まえて最適なものを選択してみてください。
まだNISA口座を開いていない方は、この記事で紹介した証券会社はどれも信頼のできる会社ですので、一度問い合わせてみてください。