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事業譲渡の仕訳方法は?消費税・のれんなどの会計処理や税務の注意点を解説

経営財務
M&A・事業承継
|
更新:2024/02/04

事業譲渡では事業資産の譲渡と対価の支払いが行われますが、これらはどのように仕訳すればよいのでしょうか。

この記事では、事業譲渡における仕訳方法を消費税やのれんも含めて解説し、さらに税務での注意点も解説します。

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事業譲渡とは

事業譲渡とは、ある事業を営むのに必要な資産をまとめて他の者に譲渡し、営業活動を引き継いでもらうことです。事業の営業活動を引き継ぐのが目的なので、単なる資産の譲渡とは異なります。

事業譲渡はM&Aの手法の一つですが、株式譲渡と違って株式の売買は行わず、譲渡側と譲受側が子会社・親会社の関係にならないのが特徴です。

事業譲渡の仕訳方法

事業譲渡は事業資産を売買するので、株式を売買する株式譲渡とは仕訳方法が異なります。

基本的には、設備や不動産などの譲渡資産と、譲受側が支払った対価を計上することになります。ただし、事業譲渡では無形資産を「のれん」として譲渡価額に上乗せするのが一般的なので、単なる資産の譲渡とは違う部分もあります。

また、譲渡資産には消費税がかかるものとかからないものがあるので、これらの仕訳の違いも理解しておくことが大切です。

基本的な仕訳方法

まずは基本的なケースとして、消費税ものれんも発生せず、譲渡側が資産・負債を売却して譲受側が対価として現金を支払う時の仕訳方法を考えます。

消費税ものれんも発生しないというのは現実的ではありませんが、仕訳方法を理解するための基本的な例として解説します。

譲渡側の仕訳方法

のれんが発生しない場合、譲受側が支払う対価は、譲受した資産・負債の時価総額と一致することになります。この場合の譲渡側の仕訳方法は以下のとおりです。

①借方(資産)の部に、譲受側から受け取った対価の額を「現金預金」として計上します。

②貸方(負債)の部に、譲渡した資産を簿価で計上します。勘定科目は譲渡する資産によって「棚卸資産」「機械装置」「商標権」など適切なものを選びます。

③譲渡した資産の中に買掛金などの負債がある場合は、それらを借方の部に計上します。負債は簿価・時価といった区別はせず、弁済義務のある債務額を計上するのが一般的です。

④時価総額と簿価総額の差額は譲渡側の利益となるので、これを「事業譲渡益」として貸方に計上します。

借方(資産)

貸方(負債)

①受け取った対価を「現金預金」として計上する

③譲渡した負債を計上する

②譲渡した資産を簿価で計上する

④譲渡した資産・負債の時価総額と簿価総額の差額を「事業譲渡益」として計上する

具体例として以下の場合の仕訳を考えてみましょう。

勘定科目

簿価

時価

諸資産

200,000

300,000

諸負債

100,000

100,000

「諸資産」は実際には「棚卸資産」「土地」など複数の具体的な勘定科目が入り、「諸負債」には「借入金」「買掛金」などが入ります。

この場合、支払対価は

支払対価 = 諸資産の時価(3億円) - 諸負債の時価(1億円)

     = 2億円

となります。事業譲渡益は

事業譲渡益 = 支払対価(2億円) - (諸資産の簿価(2億円)- 諸負債の簿価(1億円))

      = 1億円

となるので、仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

現金預金

200,000

諸資産

200,000

諸負債

100,000

事業譲渡益

100,000

譲受側の仕訳方法

譲受側の仕訳方法は以下のとおりです。

①受け取った資産を借方に時価で計上します。譲渡側は簿価で計上するのに対して、譲受側は時価で計上するのが注意点です。

②買掛金などの負債を譲受した場合は、貸方にそれらを計上します。

③支払った対価の額を「現金預金」として貸方に計上します。

借方

貸方

①譲受した資産を時価で計上する

②譲受した負債を計上する

③支払った対価を「現金預金」として計上する

具体例として、譲渡側の時と同じ以下の仕訳を考えてみましょう。

勘定科目

簿価

時価

諸資産

200,000

300,000

諸負債

100,000

100,000

この場合の譲受側の仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

諸資産

300,000

諸負債

100,000

現金預金

200,000

消費税の仕訳方法

実際の事業譲渡では、譲渡・譲受した資産の中に消費税のかかるものが含まれていることがほとんどです。ここでは消費税のかかる資産を譲渡・譲受した時に、どのような仕訳になるか解説します。

譲渡側の仕訳方法

消費税のかかる資産がある時、譲受側は消費税込みの額を対価として譲渡側に支払います。この場合の譲渡側の仕訳方法は以下のとおりです。

①まず、受け取った対価を消費税込みの額で「現金預金」として借方に計上します。

②受け取った消費税額は「仮受消費税」として貸方に計上します。

これ以外の部分の仕訳は前節の「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

①受け取った対価を税込価格で計上する

②受け取った消費税額を「仮受消費税」として計上する

具体例として、前節の「基本的な仕訳方法」の時と同じ状況で、そこに消費税が20,000かかる場合を考えてみましょう。

この場合、支払対価は税込で220,000となるので、仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

現金預金

220,000

諸資産

200,000

諸負債

100,000

事業譲渡益

100,000

仮受消費税

20,000

譲受側の仕訳方法

消費税が発生する時の譲受側の仕訳方法は以下のとおりです。

①まず、支払った消費税を「仮払消費税」という勘定科目で借方に計上します。

②支払った対価を税込価格で貸方に計上します。

これ以外の部分は前節で解説した「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

①支払った消費税額を「仮払消費税」として計上する

②支払った対価を税込価格で計上する

具体例として、先ほどの譲渡側と同じ状況を考えてみましょう。この場合の譲受側の仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

諸資産

300,000

諸負債

100,000

仮払消費税

20,000

現金預金

220,000

のれんの仕訳方法

実際の事業譲渡では、資産・負債の時価総額に加えて、企業の将来性やブランドイメージなどの目に見えない資産を「のれん」という名目で買収価格に加えるのが一般的です。

のれんは特許や商標などと同じ無形固定資産の一種で、他の資産と同様に仕訳をする必要があります。ここではのれんが発生する場合の仕訳方法を解説します。

譲渡側の仕訳方法

のれんが発生する場合の譲渡側の仕訳方法は以下のとおりです。

①受け取る対価にはのれん代が含まれているので、受け取った対価の総額をそのまま「現金預金」として計上すればのれんが反映されます。

②のれんを含めた譲渡益を「事業譲渡益」として貸方に計上します。

これ以外の部分は前節の「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

①のれんを含めた対価の総額を「現金預金」として計上する

②のれんを含めた譲渡益を「事業譲渡益」として計上する

具体例として、「基本的な仕訳方法」と同じ状況で、そこにのれんが50,000ある場合を考えてみましょう。

この場合、支払対価はのれんを足して250,000、事業譲渡益ものれんを足して150,000となるので、仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

現金預金

250,000

諸資産

200,000

諸負債

100,000

事業譲渡益

150,000

譲受側の仕訳方法

のれんが発生する場合の譲受側の仕訳方法は以下のとおりです。

①のれん代として支払った額を「のれん」という勘定科目で借方に計上します。

②のれん代を含めた支払対価の総額を「現金預金」として貸方に計上します。

これ以外の部分は前節で解説した「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

①のれん代を「のれん」として計上する

②のれん代を含めた支払対価の総額を「現金預金」として計上する

具体例として、先ほどの譲渡側と同様に、のれんが50,000千円ある場合を考えてみましょう。この場合の譲受側の仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

諸資産

300,000

諸負債

100,000

のれん

50,000

現金預金

250,000

負ののれんの仕訳方法

「負ののれん」とはマイナスの額ののれんのことで、譲渡側に偶発債務や訴訟などのリスクがある時に、それを反映したものとして生じることがあります。

負ののれんと区別するために、プラスの額ののれんのことを「正ののれん」と呼ぶことがあります。

譲渡側の仕訳方法

譲渡側の負ののれんの仕訳方法は正ののれんの時と基本的には同じで、額がマイナスになる点が違います。仕訳方法は以下のとおりです。

①負ののれんがある時はそれを差し引いた額が対価として支払われるので、受け取った対価の総額をそのまま借方に計上すれば負ののれんが反映されます。

②負ののれんの分だけ譲渡益が減少するので、「事業譲渡益」から負ののれんの額を差し引いて貸方に計上します。

これ以外の部分は前節で解説した「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

①受け取った対価を「現金預金」として計上する

②負ののれんが差し引かれた譲渡益を「事業譲渡益」として計上する

具体例として、「基本的な仕訳方法」の時と同じ状況で、そこに負ののれんが50,000ある場合を考えてみましょう。

この場合、支払対価は負ののれんを引いた150,000、事業譲渡益も負ののれんを引いて50,000となるので、仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

現金預金

150,000

諸資産

200,000

諸負債

100,000

事業譲渡益

50,000

譲受側の仕訳方法

負ののれんがある場合の譲受側の仕訳方法は以下のとおりです。

①負ののれんの額を「負ののれん」という勘定科目で貸方に計上します。

②負ののれんが差し引かれた支払対価を「現金預金」として貸方に計上します。

これ以外の部分は前節で解説した「基本的な仕訳方法」と同じです。

借方

貸方

(譲受した資産を時価で計上)

①負ののれんの額を「負ののれん」として計上する

②負ののれんが差し引かれた支払対価を「現金預金」として計上する

具体例として、先ほどの譲渡側と同様に、負ののれんが50,000ある場合を考えてみましょう。この場合の譲受側の仕訳は以下のようになります。

借方

金額

貸方

金額

諸資産

300,000

諸負債

100,000

負ののれん

50,000

現金預金

150,000

事業譲渡の税務の注意点

事業譲渡では譲渡益などに対して税金がかかるので、税務も理解しておくことが大切です。ここでは、事業譲渡の税務において注意しておきたい点を解説します。

法人税・所得税の税務処理

譲渡側は事業売却益が出た場合、それに対して法人税または所得税がかかります。

譲渡側が法人の場合は、受け取った対価を益金、譲渡した資産の簿価を損金、その差額を事業売却益として法人税を計算します。

譲渡側が個人事業主の場合、「事業所得」「譲渡所得」「雑所得」など所得が10種類に分かれているため、譲渡した各資産がどれに該当するのか留意しなければなりません。所得の計算方法は所得の種類によって変わるので、きちんと分類することが大切です。

譲渡した資産の所得は譲渡所得に該当することが多いですが、一部例外もあります。譲渡した資産がどの所得に該当するかをまとめると以下のようになります。

譲渡した資産

所得の種類

棚卸資産(商品・原材料など)

事業所得

金銭債権(売掛金など)

雑所得

それ以外の資産(土地・建物・機器類・特許など)

譲渡所得

所得税の計算は、原則として各所得を合算して税額を計算する「総合課税」になりますが、土地・建物と株式は合算せず個別に税額を計算する「分離課税」になるのが注意点です。

事業譲渡では譲渡企業の株式は譲渡しませんが、譲渡企業の子会社の株式を譲渡することがあるので、株式の譲渡益が発生するケースもあります。

のれん・負ののれんの処理

事業譲渡で発生したのれん・負ののれんは、それぞれ「資産調整勘定」「差額負債調整勘定」という科目で譲受側の税務に反映されます。

資産調整勘定・差額負債調整勘定とは、支払った対価と譲受した資産の時価総額の差額のことで、大まかにはのれん・負ののれんと似たようなものです。

しかし、税務と関係ない資産や負債(引当金など)は資産調整勘定・差額負債調整勘定には反映されないので、のれん・負ののれんの額と一致しないこともあります。

のれん・負ののれんと資産調整勘定・差額負債調整勘定はともに減価償却されますが、損金として税務に反映されるのは資産調整勘定・差額負債調整勘定の償却のほうで、のれん・負ののれんの償却は損金になりません。

両者は償却方法が違うので、損金になるのは資産調整勘定・差額負債調整勘定のほうであることを把握しておくことが重要です。

消費税の税務処理

消費税は譲渡対価の一部として譲受側が譲渡側に支払い、それを譲渡側が納税します。

消費税がかかる資産とかからない資産があるので、両者を区別することが大切です。消費税がかかるのは固定資産・棚卸資産・のれんなど、かからないのは土地・売掛金・株式などです。

不動産を譲受した場合の処理

不動産を譲受した場合は、登録免許税や不動産取得税がかかります。税額は登録免許税が0.2%、不動産取得税が3%または4%です。

まとめ

事業譲渡の仕訳は、譲渡・譲受した資産・負債とその対価を計上し、消費税やのれんがある場合はそれらも計上します。

税務では資産ごとの所得の種類に注意すること(個人事業主の場合)、のれん・負ののれんの税務処理について理解しておくことが重要です。

事業譲渡は仕訳処理以外にも複雑な事務作業が沢山あります。実際に事業譲渡を行う際には、専門家に相談するようにしましょう。

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