突然ですが、皆さんが経営されている会社やお勤めの会社は、ブラック企業ではないと言い切れるでしょうか?
ブラック企業は、一般的に過度な労働条件であったり、給与が少ないと思われがちですが、その他にもさまざまな特徴があります。
経営者とすれば、もしブラック企業の条件のいくつかに該当してしまっているのであれば、いち早く対処し優良企業を目指さないと、新入社員はおろか、既存従業員の退職にもつながりかねません。
しかし実際には、社員の労働環境や雇用に関して十分に考慮・対処できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事ではブラック企業の特徴について紹介するため、会社の現状と照らし合わせてみてください。
ブラック企業には明確な定義はないものの、「長時間労働を課す」「パワハラが横行する」「労働者に対して過度の選別」「正当な残業代を支払わない企業」を行うと言われています。
もちろん、個人によってブラック企業の捉え方は異なります。
そもそもブラック企業は、就職氷河期の2001年に2ちゃんねるの就職活動板で生まれた言葉です。
当時、就職してはいけないブラックリスト企業が作られ、そこからブラック企業と呼ばれるようになりました。
その名残が続き、新卒社員はブラック企業であるかを見極めてから就職活動を行っている状況です。
しかし、ブラック企業であるかは就職してからでないと見極められないのが実態です。実際に働いてみると、当初の話と異なる点が多く、「ブラック企業なのかも」と気が付く社員も多いことでしょう。
また、現在は優良企業であっても、将来的にブラック企業になる可能性もゼロではありません。ブラック企業の特徴を理解しつつ、状況に応じて経営を改善していくことが必要です。
ここではブラック企業の特徴を紹介します。
ブラック企業の特徴の1つ目は、長時間労働です。
月の残業時間は45時間以内、超える場合は労使協定を結ぶのが「36協定」です。
しかし、業種や職種に特別な理由がなく45時間以上超えて残業している場合は、ブラック企業であるという可能性もあります。
月80時間を超えると過労死してしまう可能性も指摘されており、長時間労働をさせている経営者は注意が必要です。
有給休暇が取りたくても取れないというのもブラック企業の特徴の一つです。
労働基準法第39条では「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と明記されています。
有給の消化は労働者の権利であるにも関わらず、有給が取れない状況はブラック企業である可能性も考えられます。
2017年に発表した旅行会社のエクスペディア・ジャパンの調査によると、日本の有給休暇の取得率は50%で、世界30カ国の中で2年連続最下位でした。(下図参照)
出典:有給休暇の取得率、日本は2年連続最下位:日本人は休み下手? - ITmedia ビジネスオンライン
日本企業の中には「休んでいる暇があるなら仕事しろ」という価値観が強い企業があることも事実で、「有給休暇の取得時に罪悪感を感じる」という従業員も多いです。
しかし、有休の消化は労働者の自由なため、有休が取れない企業は注意が必要です。
経営者の方は、自身が休まないことから部下も働いて当たり前という感覚になってしまったり、そこまでいかなくても部下の休みを管理できていない可能性もあります。
社員がしっかり有給を消化できているか確認してみましょう。
最低賃金を下回ることは違法であり、ブラック企業に該当する特徴の1つと言えます。
最低賃金は都道府県によって異なり、厚生労働省の「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」で確認できます。
たとえば東京都の場合、最低賃金は1,113円です。
それを基に、東京都で働くYさん(仮想)の収入と労働状況から、最低賃金を上回っているかを確認する方法を見てみましょう。
<Yさんの労働条件> ・基本給:18万円 ・通勤手当:5,000円 ・時間外手当:1万5,000円 ・住宅手当:2万円 ・合計22万円 ・一日の所定労働時間:8時間 ・年間所定労働日数:250日 |
まずは、通勤手当と時間外手当、住宅手当は最低賃金の対象とならない賃金に含まれるため、合計から差し引きます。
22万円-(5,000円+1万5,000円+2万円)=18万円 |
次に時間額に換算して計算します。
(18万円×12か月)÷(250日×8時間)=1,080円 |
結果、1,080円<1,113円であることから、最低賃金を下回っていることがわかります。
最低賃金は、名前のとおり、最低ラインです。
違法なうえ、従業員が離れていく要因にもなるため、即座に改善するようにしましょう。
一般的な企業の労働時間は1日8時間ですが、10時間などと長い場合はブラック企業に該当する可能性があります。
1日の労働時間にバラつきがある場合の企業は、労働時間を月や年単位で調節する変形労働時間制を設けていることが多いです。
しかし、調節する必要があることを理解せず、何時間でも働かせても良いと勘違いしている企業もあります。
1日10時間などと所定労働時間が長くなっている企業は、ブラック企業である可能性が高く、なおかつ残業代を支払っていない場合も多いです。
離職率が高い企業は、労働環境が悪く、ブラック企業に該当する可能性があります。
労働時間やノルマがきついだけでなく、不要な社員の不当解雇や退職勧奨が多い場合もあります。
社員が離職すると、その都度次の社員を募集する必要があるため、常に人材募集しているような企業は職場環境などにも問題がある可能性が考えられるでしょう。
離職率が高くなるほど労働環境が悪い傾向にあるため、確認しておくべきポイントの一つです。
経営者や上司の一言ですべて指示されるトップダウンも、ブラック企業の特徴の一つです。
もちろん、トップダウンのすべてが悪いわけではなく、社内が年功序列をベースとしたルールになっていたり、中小企業ではカリスマ経営者がトップダウンでグイグイ引っ張っているという会社もあるでしょう。
一方で、トップダウンはパワハラと表裏一体にあり、怒られることが当たり前という考えを持っている人がいる場合は要注意です。
経営者には自分に厳しい人も多く、同じ感覚を他人にも求めてしまいがちです。怒る回数が多くなってしまっていないか確認してみましょう。
従業員が仕事でストレスを抱えてしまうと、私生活にも影響が出たり、体調を崩すことにもなりかねません。
リーダーシップがあることは大変良いことですが、ブラック企業の多くはトップダウンの会社である傾向が強いということは理解しておきましょう。
ブラック企業でよく出てくるのが、精神論ばかりを言う会社です。
「やればできる」「言い訳するな」「文句ばかり言うな」と上司が言っているような場合は注意してください。
仕事は長時間働くことが良いのではなく、短時間で効率よく結果を残すことが重要です。
仕事の効率などを考慮せず、精神論でしか指導してこない上司は、「長く働く=頑張る」と思っている可能性があります。
うまく行っていないことについて、仕事の内容ではなくメンタル的な話をする会社は、ブラック企業に該当する可能性も高いため注意しましょう。
これまでブラック企業の特徴を紹介しましたが、該当していると感じた方もいらっしゃることでしょう。
しかし、ブラック企業に勤務していると、その企業の労働環境が基準となっている方も少なくありません。
他人から見たら明らかにブラック企業であるにも関わらず、自分では気が付いていないということも多いです。
自分の会社がブラック企業に該当しているかは、非営利一般社団法人安全衛星優良企業マーク推進機構の「ブラック企業一覧」で簡単に診断することができます。
客観的な指標として、ぜひ活用してみましょう。
ここではブラック企業にならないための方法を3つ紹介します。
同じく忙しい会社でもブラック企業とそうでない企業があるのは、従業員がそれに納得しているかどうかはポイントの一つです。
従業員が納得していないと、仕事が厳しくても成果が出ず、ますますブラック化していきます。
一方で従業員が納得していると、仕事の意味を理解しているため、成果が出て仕事の効率が高まります。
そのために必要なことは、経営理念や会社のビジョンの共有です。経営者と従業員が同じビジョンを持つことで、企業は大きく成長します。
経営理念を共有し、同じ目的に向かって仕事をしてくれる組織となれば、成果も大きく得られるでしょう。
経営理念を共有させるためには、トップである経営者が従業員にしっかり伝えることです。
伝え方は、部下から間接的に伝えてもらうのではなく、従業員を集めて経営者自ら伝える方が有効です。
経営理念やビジョンは採用時に明確にしておくと、それに共感した社員が集まり、離職率の低下にも繋がります。
社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を整備するのも、ブラック企業にならないための対策の一つです。
上司が一方的な職場環境となると、パワハラなどに発展し、従業員の退職原因にもなりかねないためです。社員が上司に意見を言いにくい環境となっている場合は、即座に解消したほうが良いでしょう。
若い従業員でも積極的に意見を言える風通しの良い会社を目指すことで、従業員に仕事のやりがいを感じてもらうことができます。
従業員のサポートができる体制を整えるのも企業のブラック化を防ぐ一つの方法です。
ブラック企業になると、従業員が不満を感じ、離職してしまう可能性が高まります。
しかし、優遇がよかったり福利厚生が充実しているなど、従業員の生活や人生をサポートする仕組みがあれば、離職を抑えることにも繋がります。
ブラック企業は給与が高くても退職される可能性が高いため、従業員を支える環境を意識して整えるようにしましょう。
ブラック企業には、過度な労働条件や従業員の差別、残業代の未払いなどの特徴があります。
経営者の方は、お金の流ればかりに目が行きがちで、職場環境などを意識できていない方も多いのではないでしょうか。
ブラック企業になってしまうと、既存社員が離職してしまうだけでなく、新入社員も入ってこず、経営のリスクが高まります。
そうならないためにも、一度会社の労働環境などを確認し、見直しをしていきましょう。
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