SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの頭文字をとってつけられた経営分析手法であり、経営やマーケティング戦略を検討する上でよく使われる考え方です。
SWOTは3Cや4P、PEST分析などと並んで頻繁に利用される概念ですが、名前を聞いたことがあっても使い方や具体例はあまり知らない、という方は多いのではないでしょうか?
今回は、そんなSWOT分析について、活用する目的やポイントなど、基本的な事項をまとめて紹介します。
自社の市場における分析は、補助金を申請する際の事業計画においても重要な考え方になりますので、経営分析を行う方だけでなく補助金申請を行う方も是非参考にしてみてください。
SWOT(スウォット)分析とは、企業の外部環境や内部環境をポジティブ要因とネガティブ要因に分類して分析する方法です。
冒頭で紹介したStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4要素に分けて分析することで、マーケティング戦略や意思決定、経営資源の最適化などを行うための分析方法になります。
SWOT分析の目的は、企業ごとに適した経営戦略やマーケティング戦略を立てることです。
事業展開を検討するにあたっては、経営戦略やマーケティング戦略が必要になってきます。
その中で、自社がおかれている状況や競合企業の状況、市場の成長性など、複数の要素を正確に把握し分析することは、近年ますます重要になってきています。
SWOT分析は、そのような要素を4つの要素に分類・整理し、活用しやすいようにフレームワーク化した考え方です。
SWOT分析が重要な理由は、経営戦略やマーケティング戦略を立てる以外にも2つあります。
1つ目は、今行っている事業の改善点を見つけられることです。
事業が停滞期を迎えると、何から改善していけば良いか分からなくなる場合も多いです。
そんな時、外部・内部環境で把握している事実をSWOT分析の4要素に分けて書き出してみると、見落としていた問題点を発見できるかもしれません。
2つ目は、新規事業における将来的なリスクを発見できることです。
新しい事業をスタートさせる際には、外部環境として市場がどのような競争環境なのかがわからなかったり、内部環境として提供するサービスが安定しなかったり、その事業が将来的にどうなるか不透明なことも多いです。
仮に新市場の開拓に成功し、はじめは競合なしの一人勝ち状態であっても、資金力がある大手企業の参入により、徐々に衰退していくケースもあります。
SWOT分析の活用により、競合負けしないために必要な要素を把握することができるようになります。
SWOT分析は有効なフレームワークですが、万能ではありません。
メリットもあればデメリットもありますので、それらを理解した上で活用する必要があります。
SWOT分析のメリットは、客観的に自社の状況把握ができることです。
内部環境と外部環境を4つの要素に分類して考えることで、市場全体を客観的に捉えて分析することができます。
また、項目ごとに分析することで、対象の事業に対する理解が深くなり、社内の意思疎通やすり合わせがしやすくなる点もメリットです。
一方、SWOT分析を活用するデメリットは、内部環境の特徴における「強み」と「弱み」を考えるとき、どちらと捉えるかは、考え方と分析者によって変わってしまうことです。
SWOT分析では、判断が難しい要素も必ず分類する必要があります。
客観的な分析ができる反面、分析する人によって結果に違いが出ることは注意すべきポイントでしょう。
次に、SWOT分析のやり方を手順を追って解説します。
分析を始める前にSWOT分析を行う目的を明確にします。
目的を明確にすることで、実際に策定した戦略を実行した後に成果を判断することができるようになります。
更に目的の達成度合いについては具体的な数値目標を立てることで、より事業戦略に落とし込みやすくなります。
「機会」の分析では、自社にチャンスとなる市況の変化やそれに伴う競合他社の動きをチェックします。
この分析では、市場の中で自社を取り巻く外部環境について正確かつ細かく情報収集を行うことが重要です。
インターネットを活用して検索する、社内外の有識者にヒアリングを行う、リサーチ会社を活用して網羅的に行うなど、目的に合わせて最適な方法を検討してみてください。
「脅威」の分析では、自社への影響が想定される市況の変化や、その変化による競合他社の動きを分析します。
比較的ネガティブ要素が強いと考えられる脅威ですが、分析することで新しいビジネスチャンスや見えない課題の発見にもつながることもあります。
「強み」の分析では、「マーケットの中で自社が差別化できているポイント」や「自社商品の販売が順調である理由」など、顧客目線で考えてみると良いでしょう。
また、現状で強みとは言えない小さな要素も、将来的に磨いていくことで強みと呼べるレベルまで成長することもあります。
「強み」の分析は、自社の将来的な成長性に影響する可能性がありますので、様々な視点から考えてみることが重要です。
「弱み」の分析では、強みとは逆に「マーケット内で他社にあって自社にないもの」や「自社の苦手なポイント」など、自社内の要素を客観的に整理していきます。
ここでは、「弱み」と「脅威」の混同に注意しましょう。
内部環境である「弱み」は、自社の努力次第で強みに変えることができ、外部環境である「脅威」は自社の努力では変えることのできない部分になります。
SWOT分析で挙げた項目はあくまで現状把握になりますので、そこから戦略を練ることが重要です。
ここからは、SWOT分析から戦略を導く方法について解説します。
SWOT分析で現状の把握をした上で、4要素を掛け合わせて多面的に分析することをクロスSWOT分析と呼びます。
クロスSWOT分析では、当初設定した目的を達成するために、要素のかけ合わせにより該当事業の戦略としての落とし込みを行います。
例えば、レガシー企業で既存事業からの収益や財務的な安定性という「強み」があり、かつ市場においては新興企業やIT企業の参入という「脅威」を持った企業の場合、それらをかけ合わせると、財務的な厚さを活かしてベンチャー企業へ投資を行い、先端技術やIT技術などの技術力を確保し脅威に立ち向かう、といった戦略が導かれます。
5フォース分析は、SWOTのT(脅威)を分解する手法です。
「新規参入企業の脅威」、「買い手の交渉力」、「供給企業の交渉力」、「代替品の脅威」、「競争企業間の敵対関係」といった自社の収益性に影響する5つの競争要因からマーケットを分析します。
分析結果からマーケット内の力関係が弱いとその市場の収益性は高く、逆に強いと収益性が低いと判断できます。
マーケット内における自社の外部環境や収益構造を分析し、今ある改善点や参入を検討している市場について客観的に状況を把握できる考え方です。
たとえば、「代替品の脅威」を分析した結果、スーパー・ドラッグストア・銀行がそれぞれ代替になり得るという結論が出た場合に、ドラッグストアで生鮮食品を販売する、スーパーにATMを取り付ける、ドラッグストアで保険の案内を行うなど、具体的な施策アイデアを検討することができます。
PEST分析は、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4要素から、自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)を分析する方法です。
4つの要素における自社への影響やビジネスチャンス、課題を見つけることに役立ちます。
外部環境における要因をより細かく分析する考え方であり、SWOT分析を行う場合に、外部環境を詳細に分析するためのオプションとして活用できます。
たとえば、政治的要因を機会として捉えた場合、電子帳簿保存法の緩和を受けマーケット拡大を果たしたクラウド会計ソフト等が成功例として挙げられます。
SWOT分析にはメリット・デメリットがあり、万能な考え方ではありません。
そこで、それらの特徴を把握した上で、SWOT分析をうまく活用するためのポイントを紹介します。
ただフレームワークに当てはめるだけでは効果が得られませんので、実際にSWOT分析を行う際にはこれから紹介する内容を参考にしてみてください。
1つ目は、目的を明確にすることです。
SWOT分析のやり方の1つ目でも紹介しましたが、「何のためにSWOT分析をやるのか」が定まっていないと、リサーチ範囲の絞り込みができず分析に膨大な時間がかかってしまうだけでなく、その結果の良し悪しも適切に判断できないという状況になってしまいます。
「事業が何となく停滞している気がする」など、漠然とした問題設定で行ってもうまく成果を得ることは出来ません。
「売上を伸ばすため」「自社の技術を活用しながら新しい市場に参入するため」「これまで獲得していなかった顧客を獲得するため」など、目的を明確にし、社内で共通認識を持った上で分析をスタートしましょう。
2つ目は、前提条件を整理することです。
曖昧な前提条件のもとで進めても、分析の軸が定まらず正確な結果が得られなくなります。
「分析対象とする商品は何か」「競合企業として検討するのはどの企業か」「顧客として扱うのはどのセグメントの人たちか」等、前提条件を整理して分析メンバーと共有しておきましょう。
3つ目は、最適なメンバーを選ぶことです。
SWOT分析は客観的な分析手法ですので、広い視野を持ったメンバー選びが重要になります。
経営幹部だけでなく、製造部門、資材部門、営業部門、技術部門など、分析対象や目的に合わせて最適なメンバーを選びましょう。
たとえば、「若い女性向けの商品のマーケティング戦略を検討したい」のであれば、経営幹部である中年の男性が会議室に集まって行うといったやり方ではなく、顧客と目線の近い女性や、SNSなど新しいマーケティング手法に長けている若手を加えるなど、様々な立場やスキル、価値観を持ったメンバーを選定することが重要です。
この記事では、SWOT分析の基本的な内容や活用方法について紹介しました。
自社を客観的な視点で分析し経営戦略を練るために、SWOT分析は効果的な考え方の1つです。
事業の停滞感を感じている方、新しい市場に取り組みたい方など、今回の内容をヒントにしていただき、是非自社に合った経営戦略を考えてみてください。