投資を検討する際には、キャピタルゲインという言葉を聞く機会が多くなります。株式や債券など有価証券の売却により得られるキャピタルゲインは、短期間で大きな利益を得られる可能性があります。
一方で、元本割れなどの大きな損失が出るおそれもあるため、キャピタルゲインの概要をしっかりと理解しておくことが重要です。
この記事を通じて、キャピタルゲインについて理解を深めていきましょう。
キャピタルゲイン(譲渡所得もしくは値上がり益とも言う)とは、保有資産の売却により得られる、購入時と売却時の差額(利益)をさします。対象となる主な資産は以下の通りです。
株式(上場・非上場)
債券
投資信託
仮想通貨(暗号資産)
金
不動産
プラチナ
保有資産の価値は一定ではなく、世間の情勢や景気などにより大きく左右されます。資産価値の上昇に伴い売却価格が上がれば、キャピタルゲインも上がります。しかし、売却価格が下落すれば利益も減り、利益がマイナスになるとキャピタルロスと呼ばれるのです。
キャピタルゲインが得られるチャンスは、ひとつの資産につき一度きりです。市場の相場変動をチェックしながら、売り時を見極めることが大切です。
例えば、株価100万円で購入した株式が120万円になったとします。この場合、差額である20万円から、税金や手数料などを差し引いた額がキャピタルゲインです。
キャピタルゲインは、金融商品の運用で得られた譲渡所得に該当し、税金がかかります。差額の全額がキャピタルゲインとはならない点は、必ず覚えておきましょう。
キャピタルゲインをどのように計算したら良いのか、株式を例にして方法を解説します。
最初に、以下の計算式で譲渡所得を計算します。
譲渡所得の金額(譲渡益)= 譲渡価額 -(取得費+委託手数料等) |
キャピタルゲインは、譲渡所得に以下の税率をかけて計算します。
キャピタルゲイン = 譲渡所得の金額 -(譲渡所得の金額×20.315%*) *税金の内訳は、取得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315% |
例として、以下の条件で株式を売却した際のキャピタルゲインを計算してみましょう。
取得費 100万円
譲渡価額 120万円
委託手数料等 2,000円
譲渡所得 = 120万円 - (100万円 + 2,000円) = 19万8,000円 キャピタルゲイン = 19万8,000円 - (19万8,000円 × 20.315%) = 15万7,776円 |
なお、不動産や金などのキャピタルゲインは、株式とは計算式が異なります。
インカムゲインは、資産の保有により得られる利益です。主なインカムゲインは以下の通りです。
株式の配当金
債券の利息
投資信託の分配金
株式発行会社から受ける株主優待
不動産の賃貸収入
キャピタルゲインとインカムゲインは、以下の表のように違いがあります。
項目 | キャピタルゲイン | インカムゲイン |
---|---|---|
所得区分 | 譲渡所得 | 配当所得 |
資産の保有期間 | 短期 | 長期 |
リスク | ハイリスク・ハイリターン | ローリスク・ローリターン |
収益率 | 数倍以上を狙えるものの、元本割れするリスクも高い | 高くても8%程度 |
ここからは、キャピタルゲインにおける主なメリットを、2つ解説します。
キャピタルゲインの売却対象である株式や投資信託は、購入後すぐに値段が上がるケースがあります。このタイミングで売却すれば、短期間で利益が出る可能性が高いです。少ない元手でも始められ、2倍から3倍の利益になることもあります。
インカムゲインは、長期的な運用が必要ですが、キャピタルゲインは短期間で運用でき、できるだけ早く利益を得たい人に適しています。
キャピタルゲインは、保有資産の売却によって得る利益であり、インカムゲインに比べ額は大きくなります。ハイリスク型であるものの、タイミング次第で大きな利益が出る可能性があります。
キャピタルゲインは、手に入る利益の大きさから、メリットだけに目が向きがちです。しかし、デメリットも加えておかないと、大きな損失が出る恐れもあります。ここでデメリットを確認しておきましょう。
株価の暴落などにより資産価値が下がってしまうと、キャピタルゲインではなくキャピタルロスが発生することがあります。実際に、リーマンショックやコロナショックの際には、株価が一気に下がりキャピタルロスを実感した人も多くいました。
投資資産が大きい分、キャピタルロスによる損失も大きくなります。キャピタルロスのリスクを軽減するには、積立投資や分散投資などを併用するのもひとつの方法です。
キャピタルゲインを得るには、保有している投資資産の売却が必要です。一度売却してしまうと、同じ資産を再度購入することは難しくなります。
資産を本当に手放すのか、売却の判断に時間がかかることもあるでしょう。売却のタイミングによってキャピタルゲインの額も変わってくるため、慎重な判断が求められます。
キャピタルゲインにかかる税金の計算方法は、法人と個人で異なります。どのように異なるのか、不動産を例に挙げて特徴を解説します。
法人が所有する不動産に対してキャピタルゲインが発生した時には、法人所得にキャピタルゲインを加算して法人税を計算します。法人税・住民税・事業税などを考慮した税負担率「実効税率」は、29.74%です。他の取引による所得との損益通算ができるのも、法人の特徴です。
個人では、他の所得と不動産のキャピタルゲインは分離して課税する必要があります。所有期間によって税率が異なり、所用期間が5年以下の短期譲渡では39.63%・5年を超える長期譲渡では20.315%です。他の所得との損益通算はできませんので、注意しましょう。
キャピタルゲインの中には、先ほど少し触れた法人の不動産におけるキャピタルゲインのように、他の所得との損益通算ができるものもあります。また、キャピタルゲインにかかる税金は、未確定である含み税は課税対象外です。含み税の確定を翌年に繰り越すと、節税対策になります。
その他にも、個人であればNISA口座を活用して非課税範囲内で投資を行うのも、節税対策のひとつです。
この記事で解説してきたように、キャピタルゲインはハイリスク・ハイリターンの投資方法です。
投資の場面では、インカムゲインとどちらを担うのか戦略を立て、バランスの取れた投資を行うことが大切です。
事業譲渡などで大きな利益を得た際には税金も相当な額になります。事前に専門家に相談し、利益を最大化できるように検討してみてください。