初めて融資を受けようとする時には、書類の作り方や手続きの流れなどがわからず、迷うことも多いでしょう。金融機関へ融資の相談に行こうとしても、きちんと話せるか自信がない、何か話せば良いのか分からないなどといった不安もあるのではないでしょうか。
このような場合に、事業者の強い味方となるのが融資コンサルです。融資コンサルは融資の専門家であり、融資を受けるためのアドバイスやサポートを行ってくれる存在です。
この記事では、融資コンサルの概要・選び方・注意点など、融資コンサルを利用する際に知っておきたいポイントを詳しく解説します。これから融資の利用を検討している事業者の方は、参考にしてみてください。
融資コンサルとは、資金調達のプロとして、事業資金を必要とする事業者に対し、融資が受けやすくなるようサポートしてくれる専門家をさします。具体的には、以下のような場面でアドバイスをしてくれます。
融資に関する相談やヒアリング
融資先金融機関の選定や交渉
資金繰り計画や事業計画の作成
融資申請書の作成
必要書類の準備
模擬面談
融資金利や返済条件などの交渉
融資の申請に限らず、事業計画や経営戦略など、経営そのものに対するアドバイスも受けられます。企業の現状を見極めたうえで、リスクや問題点を見つけ出し、融資を受けるための解決策を一緒に考えてくれる存在です。
融資コンサルの仕事をするのに、必須とされる資格はありません。しかし、資金調達についてアドバイスをするための経験は必要です。経験を積んでいれば、それだけ幅広いケースに対応でき、融資の成功確率を上げられます。
融資コンサルの中には、税務・会計のプロである税理士や会計士などの有資格者がいるほか、銀行で働いていた経験を持つ人もいます。これらの資格や経験によって得意分野が異なるため、自社のニーズに適した人を選ぶことがポイントです。
融資コンサルは、担当する融資制度によって3つの種類があります。それぞれのコンサルタントの業務内容について見てみましょう。
事業向け融資に関するアドバイスを行うコンサルタントです。資金調達の手段として融資を利用したい事業者に対して、金融機関からの借入による融資に向けた支援を目的としています。
これから会社を設立・起業しようとする経営者に対して、創業融資に関するアドバイスを行うコンサルタントです。融資制度への申請サポートを始めとして、創業計画の作成や会社設立支援にわたるまで、創業に必要なコンサルティングを幅広く手がけています。
融資だけでなく、資金調達全般に関するアドバイスを行うコンサルタントです。会社の経営状況に合わせて、融資・ビジネスローン・ファクタリング・社債などから適切な資金調達方法をアドバイスしてもらえます。事業計画書や提出書類作成などの支援サービスも受けられます。
融資のコンサルタントと言えど、その業務は多岐にわたります。何も考えずにコンサルタントを選んでしまうと、求めるアドバイスが受けられなかったり高額な手数料を取られたりする可能性があるため、慎重に選びたいものです。融資コンサルを選ぶ際には、以下の2点に注目しましょう。
融資コンサルを利用した同業経営者から、利用した感想やコンサルタントの評判などを聞けると、融資コンサルを見極めるポイントなどが分かり、良い融資コンサルが選びやすくなります。
インターネットのサイトに記載された実績や口コミも参考にできますが、実際に利用した経営者から聞いた感想は、最も信頼できる情報源と言えます。
顧問税理士や会計士は、税金や会計のエキスパートであるものの、資金調達については専門でない場合がほとんどです。ただ、人脈が広いことで知り合いの融資コンサルを紹介してもらえる可能性があります。知り合いのコンサルタントがいなくとも、他の税理士などから融資コンサルに関する話を耳にしていることも考えられます。
具体的な融資コンサルを聞けなくとも、コンサルタントを探すポイントについてのアドバイスは受けられるでしょう。
信頼のおける融資コンサルを選ぶには、以下の点に着目することが重要です。それぞれの注意点について、ひとつずつ解説します。
融資コンサルごとで、得意分野やサービスの内容などが異なります。複数のコンサルタントでサービス内容を比較し、求めているアドバイスが受けられるか、融資に限らず経営全体の戦略策定をしてもらえるかなど、希望するサービス内容と合致するか、必ず確認しましょう。
融資コンサルのホームページで、扱っている業務や提供するサービス内容を把握しておくと、契約後のトラブルを防げます。
融資コンサルとの契約では、サポートを受けられる範囲が明示されています。契約外の業務を依頼すると、追加料金が発生する場合があります。
自社の目的を達成するには、どの範囲まで融資コンサルと契約をしたら良いのかを、しっかりと見極めるようにしましょう。
「融資コンサルの種類」で触れたように、融資コンサルは種類ごとで担当する融資制度が異なります。どの種類であっても、融資の基本的なサポートは受けられますが、より専門的なアドバイスを希望するのであれば、専門性や知識が高い融資コンサルを選ぶことが大切です。
融資コンサルに支払う費用は、契約締結時に支払う着手金と、融資に成功した段階で支払う成功報酬の2つであるケースが一般的です。出資法により、成功報酬が5%を超えることは禁じられているため、5%を超える成功報酬を請求する業者は、悪徳業者である可能性があります。
コンサル契約を締結する段階で、必ず手数料についての取り決めも交わしておきましょう。
融資コンサルの実績は、選ぶ際に最も重視すべきポイントです。融資コンサルのホームページには、今までの実績や顧客からのコメントなどが掲載されているケースがあります。検討している融資内容と照らし合わせながら、実績を確認しましょう。
ホームページと併せて、SNSやレビューサイト、融資希望者向けの無料相談などでも融資コンサルの評判が確認できます。複数の方法で入念に調べたうえで選ぶようにしましょう。
実績や評判などで融資コンサルを決定しても、担当者との相性が合わないと、求めるアドバイスが受けられないことが考えられます。どれだけ融資の知識が豊富であっても、担当者の人柄や話し方などに違和感を覚えると、その後のやり取りに支障が出てしまいかねません。
コンサルタントとの相性を確かめるには、実際に担当者と対面で相談し、対応の仕方で見極めることが重要です。
融資コンサルを利用すると、事業者自身で融資の手続きを取るよりも多くのメリットが得られます。具体的にどのようなメリットがあるのかを解説します。
融資コンサルタントは資金調達のプロであり、融資を受けるためのコツやポイントを熟知しています。書類準備や作成方法のノウハウやコツ、金融機関との面談時のポイントなど、申請段階ごとのアドバイスが細かく受けられるほか、企業の財務状況に合った改善方法を指摘してもらうことで、融資の成功率を上げられます。
なお、ご自身で融資に取り組む場合は、以下の記事で融資のポイントや流れについて詳しく解説していますのでご覧ください。
参考:融資とは?融資の種類とメリット・デメリット、受ける際の注意点を解説
融資を受けるまでには、申請書・事業計画書・決算書・商業登記簿謄本など、準備する書類が数多くあります。通常業務と並行してこれらの書類の準備をするのは、大きな負担がかかる作業です。
融資コンサルへの依頼により、書類作成がスムーズに進み、手間が減るだけでなく融資実行までの時間も短縮できます。
融資コンサルは、融資以外の知識も幅広く持っています。税理士の有資格者であれば税についての知識・金融機関の勤務経験者はお金に関するノウハウなど、保有する知識は専門分野によってさまざまです。事業者が抱える経営面や財務面について広くアドバイスをもらえるのも、融資コンサルならではのメリットです。
融資コンサルの利用には、メリットだけでなくデメリットも発生します。双方を踏まえたうえで、利用を検討することが重要です。
融資コンサルはボランティアではなく、報酬を得て行う事業であるため、手数料など一定の費用がかかります。依頼する範囲によっては、手数料が数十万円単位に及ぶ場合も少なくありません。ある程度の費用相場はあるものの、明確な費用のルールがないため、融資コンサルによって費用もさまざまです。
融資コンサルを受けることで、金融機関が事業者に対して良い印象を持たなくなる可能性があります。金融機関における融資の申し込みや交渉の場に、融資コンサルが同席してしまうと、手続きを全てコンサルタントに丸投げする無責任な事業者だという印象を与えてしまいます。
融資コンサルの利用は、申請に必要なアドバイスやサポートなどにとどめ、交渉は必ず事業者の主導で進めることが重要です。
資金調達において、有利な条件で融資を受けるために費やした労力や経験は、ノウハウとして社内に蓄積でき、担当者へ受け継ぐことができます。しかし、融資コンサルに依頼すると、これらのノウハウが企業に残らないのです。資金調達が再び必要になった時に、ノウハウがないと困ってしまうでしょう。
融資コンサルを利用する時には、業務の流れを教えてもらえるよう頼むようにしましょう。
自社と相性が良く、希望する分野のサポートを受けられる融資コンサルを探すには、時間だけでなく手間もかかります。「融資コンサルの選び方」で触れたように、数多く存在する融資コンサルから適切な人材を探すには、同業の経営者や顧問税理士などに相談すると、手間を軽減できます。
融資コンサルが受け取る報酬の相場は、どの程度で推移しているのでしょうか。適切な報酬相場を知り、コンサルタントに依頼を検討する際の参考にしてください。
融資コンサルの報酬は業務ごとに設定されており、各業務における報酬相場は以下の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
着手金 | 1万円から10万円程度 |
書類作成料 | 5万円から10万円程度 |
融資についての相談料 | 1時間あたり1万円から5万円程度 |
成功報酬 | 融資金額の1%から5% |
融資コンサルが行う業務の中で、「融資斡旋」に該当する業務は、出資法第4条において報酬が融資実行額の5%までと定められています。ここで言う融資斡旋とは、金融機関と事業者を仲介して斡旋を行う行為です。業務としてこの行為を行う場合、貸金業登録が必要となりますが、融資コンサルのほとんどは登録をしていません。
斡旋業務に該当する場合、成功報酬を5%受け取ると、着手金の分が報酬上限額を超えてしまいます。融資コンサルの業務は、融資の相談やサポートにとどまるため、報酬が規定を超えていないかをチェックすることが必要です。
融資コンサルは、独自の資格や届出は特に必要ありません。健全に運営しているかどうかを見極めるには、以下の3つのポイントをチェックしましょう。
「融資コンサルの報酬相場」で解説した融資斡旋は、貸金業法において「金銭の貸借の媒介」に該当します。このため、貸金業登録が必要となっているのです。
貸金業登録をしていないにもかかわらず、融資斡旋の業務をしている融資コンサルは、違法業務を行っているため、決して利用してはいけません。
こちらも「融資コンサルの報酬相場」で解説したように、成功報酬の割合は5%を超えてはいけません。着手金や相談料なども、相場を大幅に超えないよう設定する必要があります。
ただ、融資コンサルの中には、5%を超える成功報酬を設定している会社も存在します。コンサル契約を結ぶ前に、報酬や手数料の額が法外となっていないか、必ず確認しましょう。
信じがたいことですが、融資コンサルの中には、提出書類を偽造し融資を通過させる悪質な会社もあります。当然のことながら、書類の偽造は違法です。融資コンサル側で書類を偽造しても、金融機関側から見ると申請者が偽造したと捉えられてしまいます。
信頼できるコンサルタントかを見極めるためには、利用経験者の感想や口コミの情報をしっかりと調べることが重要です。
以下の2つに該当する事業者は、業務効率化や費用対効果の面から、融資コンサルの利用をおすすめします。
融資の申込期限が迫っている中で、自社だけで資料を準備したり金融機関と交渉したりしようとしても、しっかりとした準備はできないでしょう。融資コンサルは資金調達のプロであり、必要な手続きを短時間で依頼できます。
過去に融資を断られた経験がある事業者は、断られた理由に対する改善策を講じなくてはなりません。その他にも、申請書類の見直しや金融機関との交渉を通じて、金融機関からの信頼を取り戻すことが、融資を受けるためのポイントです。
融資コンサルに相談すると、融資を断られた理由や交渉のコツなどについて、アドバイスが受けられます。
融資を受けたい時に、融資コンサルは強力なパートナーとして大きな力を発揮してくれますが、必ずしも融資コンサルに依頼しなくてはならないわけではありません。融資コンサル以外にも、融資における相談先は複数あるため、自社にとって最適な相談先を探すようにしましょう。
融資コンサル以外に融資に関する相談ができる機関の一例として、以下の機関が挙げられます。
税理士・司法書士・行政書士などの法人(業務の一部としてコンサルティング業務を行っている場合があります)
経営コンサルタントをメインとし、資金調達の相談業務も担っている企業
日本政策金融公庫
商工会・商工会議所
また、中小企業庁の委託により運営されているインターネットサービス「ミラサポ」では、無料の会員登録をすると専門家によるコンサルティングが受けられます。
融資コンサルへの依頼によって、融資までの手続きがスムーズに進み、融資を受けられる可能性が高まります。一方で、費用がかかったり、融資に関するノウハウが社内に残りにくいなどのデメリットも見逃せません。
気になる融資コンサルがあれば、自社の方向性と照らし合わせたうえで、利用を検討するようにしましょう。