これから起業しようと考えている人は、選択肢のひとつとして合同会社を検討しているかも知れません。一方で、合同会社が具体的にどのような形態で運営されているのか、分からない人もいるでしょう。
今回は、2006年に誕生した合同会社について、概要やメリットデメリット、向いている業務などを解説します。起業の参考として、ぜひご一読ください。
合同会社とは、2006年の会社法により、有限会社に代わって始まった新しい会社形態をさします。アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入されており、合同会社とLLCは同じ意味と考えて問題ありません。現在日本では、合同会社に加え、株式会社・合名会社・合資会社の4種類で、会社が設立可能です。
合同会社は、小規模事業者や個人起業家などを中心として増加を続けています。
合同会社と株式会社は、会社の決定権を誰が持っているかという点が大きく異なります。合同会社は、出資者と会社の経営者が同一であり、全ての社員が会社の決定権を持っています。これに対し株式会社では、出資者と会社の経営者が異なるのが一般的です。
また、合同会社は役員が位置づけられていないのに対し、株式会社は役員の任期が最長10年と定められており、登記も必要です。決算公告は、合同会社には求められていませんが、株式会社では毎年決算の終了後に公表する義務があります。
その他にも、合同会社と株式会社は、意思決定の場や利益配分、設立費用なども異なります。
合同会社の社員は、代表社員・業務執行社員・社員の3つに分類されます。各役職が持っている権利などについて、表を使って紹介します。
項目 | 代表社員 | 業務執行社員 | 社員 |
---|---|---|---|
株式会社における地位 | 代表取締役 | 取締役 | 株主 |
代表権 | あり | なし | なし |
業務執行権 | なし | あり | なし |
登記 | 必要 | 必要 | 不要 |
業務遂行状態・財務状況の監視 | 可能 | 可能 | 可能 |
上記の表で示している社員とは、法律上で合同会社に出資している経営者のことを指しています。一般的に社員と言うと、従業員と同じとのイメージがありますが、合同会社では社員と従業員は異なる立場とされています。合同会社における社員とは、出資者と役員の性質を両方持っている存在なのです。
代表社員と業務執行社員について、さらに詳しく解説します。
代表社員とは、代表権を与えられ行使できる特定の社員を指します。合同会社では、出資者にあたる社員全員が代表権と業務執行権を持っていますが、社員がそれぞれ権利を行使してしまうと、トラブルが起きる可能性が高まります。
この事態を避けるため、合同会社では定款によって代表社員を定めることが可能です。代表社員は1名とは限らず、複数名選出しても問題ありません。
代表社員の対外的な呼び方として、CEO・社長・代表社員CEOなどが使われます。
業務執行社員とは、経営に関わる社員を指します。経営に関わらない社員を定める場合は、定款で業務執行社員と社員を区別し、一部社員を業務執行社員に選定できます。
代表社員は、業務執行社員の中から選びます。業務執行社員も、複数人選定可能です。
合同会社の数が増え続けているのは、合同会社設立に大きなメリットがあるためです。どのようなメリットがあるのか、ひとつずつ見ていきましょう。
合同会社の大きなメリットは、設立費用が安い点です。合同会社と株式会社それぞれの手続きに必要な費用の一例を比較してみましょう。
費用 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
定款用収入印紙代 | 4万円(電子定款では0円) | 4万円(電子定款では0円) |
定款の謄本手数料 | 0円 | 約2千円(8ページの場合) |
定款の認証料 | なし | 5万円 |
登録免許税 | 6万円もしくは資本金額×0.7%のうち高い額 | 15万円もしくは資本金額×0.7%のうち高い額 |
合同会社では、公証役場による定款の認証が不要です。また、役員の重任登記にかかる費用も不要であるため、株式会社に比べ費用を大幅に抑えられます。
株式会社では、出資比率に応じた利益配分が必要です。一方合同会社は、出資比率と利益配分が必ずしも比例していなくても問題ありません。そのため、優秀な社員には利益配分比率を高くすることもできます。
経営判断や事業展開などで意思決定が必要な場合にも、働いている社員が意思決定をするためスピーディーな対応ができ、経営の自由度が高いのも合同会社のメリットです。
株式会社は、1年に一度決算書の公表義務がありますが、合同会社には義務がありません。決算書を作成するだけで良く、発表する必要がないため、発表にかかる準備やコストも不要です。
合同会社は、メリットがある反面デメリットも存在します。どのようなデメリットがあるのかを理解しておきましょう。
合同会社の資金調達手段は、融資(借入)もしくは国や自治体から受ける補助金や助成金が中心です。株式会社であれば、株式を増やすことで資金調達ができますが、合同会社ではそれが不可能です。
また、合同会社が社債を発行すると、負債の扱いになるため、弁済する必要があります。資金面に関しては、株式会社よりも合同会社の方が、調達手段が限られています。
最初に紹介した通り、合同会社は2006年から始まった制度であり、導入している会社は小規模な会社が中心です。株式会社よりも信頼性や認知度が劣っているのが現状です。
ただし近年では、Amazon・Google・Apple社などの大手企業の日本法人も、合同会社として設立されています。このため、制度開始当初よりも少しずつ認知度が上がっていると言えます。
合同会社では、出資比率に関わらず、社員への利益配分が自由に設定できるため、社員同士の対立が発生する恐れもあります。また、一人一票の議決権により、社員同士の意見の対立が業務や経営に影響を与えることも考えられます。
定款に、利益配分について記載することで、少しでも対立を回避できる可能性があります。
合同会社は、どのような業種の会社を設立するのに向いているのでしょうか。代表的な業種を3つ紹介します。
合同会社は、社会的な信頼度は株式会社よりも低いのが現状です。しかし、一般消費者は、サービスを提供する会社がどのような形態で運営しているのか、気にすることは少ないものです。
このため、BtoC事業として一般消費者向けのサービスを提供する会社であれば、合同会社としての設立で問題ありません。例として、カフェ・サロン・日用品メーカー、学習塾などのサービス業が該当します。
合同会社の仕組みは、小規模の企業向けに設定されています。このため、個人事業主が法人化する時に合同会社を選択するケースが多いのです。
個人事業主は、所得税と住民税を納める必要がありますが、合同会社などにより法人化すると、個人としての納税に比べ税率が大幅に低くなるのです。先述したように、株式会社に比べ設立コストも大きく抑えられます。
不動産投資やFXは、利益が変動する可能性が高いため、法人化する際は税率が低い合同会社にすることをお勧めします。
なお、FXで稼ぐには勉強が不可欠です。FXについてはこちらのメディアを参考にしてみてください。
WikiFX Japan | FX(外国為替証拠金取引)の総合情報サイト
合同会社は、素早い意思決定が可能であり、利益分配も自由です。少人数で事業を展開するのであれば、合同会社を選択すると恩恵が大きくなります。
合同会社の設立には、どのような流れで進めていけば良いのか、前もって知っておくとスムーズに手続きできます。設立までの流れを紹介しますので、順を追って見ていきましょう。
最初に、合同会社の設立により展開する事業内容や商号(社名)などを決めていきます。商号には、星印やハートマークなどの記号は使えませんので注意しましょう。コンマやハイフンなどの符号を入れる場合は、字句を区切る目的で入れるようにしましょう。
合同会社の資本金は、1円であっても設立は可能です。しかし、資本金が少ないと信用度が下がってしまい、金融機関の口座開設などもハードルが高くなります。資本金は、可能な限り多く用意しておきましょう。
合同会社の設立に必要な印鑑は、実印としての1本のみです。設立手続きの際に、法務局で印鑑登録をすると、実印として使用できます。実際には、実印に加え、角印と銀行印の三本を作る会社がほとんどです。
定款は、会社を運営するための基本的なルールを指します。定款に以下の6つの事項が含まれないと、定款が無効になってしまうため、注意して作成しましょう。
商号
事業の目的
本店所在地
社員の氏名・住所
社員の出資目的と価額
社員全員が有限責任社員である
合同会社の出資金の払い込みは、振込先に代表社員名義の個人口座を指定します。この時の銀行口座には指定がなく、ネット銀行でも問題ありません。振込は、必ず定款が作成されてから行うようにしましょう。全員分の振り込みが完了したら、振込証明書と通帳コピーをまとめ、割印をしましょう。
出資金の振込証明書と定款が準備できたら、設立登記申請書の作成に入ります。必要書類と収入印紙6万円分を用意し、必ず管轄している法務局に提出しましょう。法務局へ書類などを提出した日が会社設立日と規定されています。
登記が完了したら、2か月以内に法人設立届を提出します。提出先は、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場などです。そのほか、社会保険や労働保険関係の手続き、青色申告承認申請、登記簿謄の請求なども必要です。
合同会社として設立した会社は、設立後に株式会社へ組織変更する場合もあります。資金調達が可能となったり、組織を拡大したりと、理由はさまざまです。
組織変更をするには、計画書を作成し社員全員の同意を得る必要があります。その後、組織変更までには以下の手続きが必要です。
組織変更の公告
合同会社の解散登記および株式会社の設立登記
組織変更の登記申請
税務署などへの変更届出提出
合同会社は、意思疎通がスムーズに進められる点や、設立費用を抑えられる点などから、初めて会社を設立する人におすすめです。事業内容や資本金、人員の確保など、あらゆる観点から判断し、合同会社と株式会社のどちらを選択した方が良いのか、十分検討してみてください。