商品の売買やサービスの提供時には、相手からお金を受け取った証明として領収書を発行します。経理財務や補助金関係の仕事を担当し、自分が領収書を発行する立場になると、どのような書き方が正しいのか、不安になることも多いでしょう。領収書の発行は、金銭のやり取りに関わるため、正しい書き方を覚えておかなくてはいけません。
今回は、領収書の概要や正しい書き方・注意点など、領収書の基本知識を解説します。業務で教わる機会が少ない領収書について、役割やポイントをしっかりと理解できるよう、最後まで本記事をご一読ください。
領収書とは、商品やサービスに対するお金のやり取りを公的に証明する書類をさします。印紙税法上では、金銭もしくは有価証券の受取書にあたります。
商品やサービスを提供した立場から見ると、確実に対価を受け取った証明ができます。一方、提供を受けた立場では、対価を支払った証明として領収書を受け取るのです。
領収書が発行されることで、支払いが済んでいると客観的に示せるため、二重請求や過払いが防げるようになります。
企業会計の中で、領収書は証憑書類のひとつであり、経理上の手続きに欠かせないのです。経費への計上だけでなく、確定申告、税務調査などにも必要不可欠な書類でもあります。
領収書と似た言葉に「領収証」があります。どちらも、民法上では「受取証書」とされており、金銭のやり取りを示す証拠書類として規定されています。国税庁では、印紙税を納税する書類として、領収証・レシート・預かり証の総称を領収書と定義しています。
つまり、領収証は領収書のひとつであり、どちらも証憑書類としての効力を持っているのです。実務においても、ほとんど同じ意味で使われることが多く、明確な違いはありません。
領収書とレシートの違いは、宛名の有無が挙げられます。ただ、レシートでも宛名の記載場所が設けられているものがあるほか、レシートの中に、発行日・発行店名・商品内容・金額といった必要事項が全て記載されていれば、領収書として扱われるのです。
レシート以外にも、請求書や納品書などに「相済」「代済」「了」など、金銭を支払ったことが証明できるのであれば、有価証券の受取書に該当するため、受取書のひとつである領収書として認められることになっています。つまり、領収書と同じく、金銭を支払った事が確実に証明できる書類として効力を持っているため、大切に保管しておきましょう。
消費税法の中で、消費税の仕入税額控除を受ける条件として、帳簿及び請求書の保存が要件となっています。そのためには、領収書を7年間保存することが必要です。領収書に記載が必要とされる項目は、以下の通りです。
領収書に記載する日付は、必ずお金の受け渡しが実行された日付でなくてはいけません。売掛金を回収し、後日領収書を発行する場合であっても、日付は領収書の発行日ではなく、実際にお金をやりとりした年月日を書く必要があります。
日付を書くスペースは、領収書右上であるケースがほとんどであり、西暦と和暦のどちらで記入しても問題ありません。ただし、数字の桁を省略することはできません。
法人宛に発行する領収書において、支払者の企業名や氏名は省略せず、正式名称で記載しましょう。株式会社宛の領収書では、「(株)」も略称にあたるため、注意が必要です。併せて、宛先を前株か後株どちらで記載したら良いのかも、必ず確認しましょう。
但し書きは、金銭の受け渡しが行われたサービスや商品の内容を、明確に示す目的があります。「お品代として」という但し書きでは、広い意味で捉えることができるため、使途不明で処理される恐れがあります。「事務用品代として」「交通費として」など、できるだけ詳しく書くようにしましょう。
領収書には税込金額を記載し、領収書の「内訳」欄に税抜きの金額と消費税額を記入します。
領収書の金額が5万円以上であれば、収入印紙の貼付による印紙税の納税が必要です。領収書に収入印紙を貼る場合には、領収書と印紙に割印を押します。万が一収入印紙を貼り忘れると、印紙額面の2倍の過怠税が加算されるため、十分注意しましょう。
取引関係を明確にするため、領収書に発行者の住所と名前を記載することも義務となっています。手書きもしくは社判のどちらでも問題ありません。
2023年10月から始まるインボイス制度では、領収書の書き方にも注意が必要です。以下の項目の記載を忘れないように行いましょう。
交付を受ける者の氏名または名称
取引年月日および内容
取引金額(税込)
発行者の氏名または名称
軽減税率の対象品目である旨(軽減税率だと分かる記載が必要)
税率ごとに合計した対価の額(税込・税別どちらも可)
税率ごとの消費税額
領収書発行事業者の名称および登録番号(税務署への登録が必要)
領収書を発行する時には、以下の点に注意しましょう。
領収書の記載項目でも少し触れたように、領収書の金額が5万円以上であれば、収入印紙が必要です。5万円の領収書を、2万円と3万円の2枚で発行すると、収入印紙の貼り付けは不要となります。この方法は、税法上でも特に問題はありません。
領収書の宛先を「上様」で依頼されることもあるかと思いますが、税務調査などの関係でできるだけ避けた方が良いでしょう。第三者が領収書を見た時に、金銭のやり取りに関する事実関係が確認できないためです。
領収書の発行時に、押印をすることがほとんどかと思います。押印は、法律で義務とされていないため、領収書に押印がなくとも税務上では問題ありません。
ただし、企業が発行した領収書には、偽造防止を目的として企業の確認を使用するケースが一般的です。領収書の信頼度を高めるためにも、押印をしておいた方が安心です。
代金の一部となる手付金を支払った・もしくは受け取った時は、預り証の受け取りもしくは発行が必要です。預り証は、代金の全額を支払った際に、領収書と交換します。
預り証が発行された段階では、物の所有権が支払者へまだ移転していないことを覚えておきましょう。5万円以上の預り証には、領収書と同様収入印紙の貼り付けが必要です。
領収書に記載された金額は、法的に修正が認められていません。金額以外の記載箇所は修正が可能ですが、相手に対して失礼にあたるので、領収書を再発行しましょう。新しい領収書は、古い領収書と引き換えで回収が必要です。
どうしても修正が必要な場合は、間違えた箇所を二重線で消した上で、訂正印を押しましょう。修正テープや修正液を使った訂正や、消せるボールペンの使用は厳禁です。
領収書に記載された金額の改ざんを防止するために、次の3つを守る必要があります。
金額の先頭に「¥」をつける
金額の末尾には「-」または「※」をつける
金額の数字の3桁ごとに「,」を打つ
「¥」の代わりに「金」と記載した場合は、末尾には「也」とつけましょう。
領収書は、発行するときだけでなく受領するときにも注意が必要です。受領するときの注意点も見ていきましょう。
銀行や郵便局などの窓口で振り込みをすると、受領書が渡されます。この場合の受領書は、領収書の代わりとなるため、必ず保管しておきましょう。
ただし、商品の納品時に、物品を受け取った証明として発行する受領書は、領収書とはなりません。受け取る対象により、領収書となるかどうかが変わって来るため、注意が必要です。
バス代や電車代などをICカードで支払った際の領収書は、ICカードにチャージした段階で券売機から領収書を発行します。さらに、券売機から利用履歴を発行し、交通費の名目で出金伝票を作成しましょう。利用履歴は直近50件しか印字できないため、こまめに履歴を発行しておくと安心です。
クレジットカードの利用時には、お客様控えとして売上票が発行されます。これは、領収書という名目ではありませんが、領収書として使用可能です。
後日クレジットカード会社から郵送される利用明細書を、売上表と一緒に保管しておくと、経理処理上で領収書の代わりとなります。
領収書を紛失もしくは破損した場合、基本的に領収書の再発行はできません。破損により再発行を希望する場合、元の領収書と引き換えに再発行できる可能性がありますが、発行側の判断に委ねられます。
この場合は、領収書の代わりとして、購入証明書や支払証明書の発行、銀行口座やクレジットカードでの支払い情報などが有効となる場合があります。
法人および個人事業主は、税申告後も以下の保存期間中は領収書を保管しておかなくてはいけません。
法人…7年間(赤字であれば10年間)
個人事業主(白色申告)…5年間
同上 (青色申告)…7年間
(前々年度の所得が300万円以下の青色申告者は5年間)
領収書を保存しておくときは、日付順に並べて紙に貼り、ファイリングするのがおすすめです。
毎日の業務の中で、何気なく領収書を発行したり渡したりしている人も多いでしょう。しかし、領収書は正しい知識を持って取り扱うことが重要です。
ビジネスにおいて重要な役割を持つ領収書が、取引先とのトラブルの原因にならないよう、今回紹介した知識をしっかり熟知しておきましょう。