近年では各金融機関が利上げを発表しております。そのため各種ローンの金利が上昇し、毎月の返済額が増えることで、毎月のキャッシュフローの悪化が懸念されます。
返済額を抑えるためには繰り上げ返済をするか、金利の安い金融機関へ借り換えを行うしかありません。しかし借り換えする際は、借り換えの特徴を理解し、トータルの費用を考慮して判断する必要があります。
ここでは借り換えの概要と種類、メリット・デメリットを紹介します。最後には借り換え先の選び方も解説するため、借り換えを検討している方や借り換えについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
借り換えとは既存の借り入れを他の金融機関から融資を受けて返済する方法です。
一般的には毎月の返済額を安くするために行います。例えば借入していたA銀行の残債が5,000万円とし、B銀行から5,000万円を借入して残債を完済します。A銀行よりB銀行の方が金利が低ければ、毎月の返済額を安くすることが可能です。
借り換えは住宅ローンやアパートローンなどの借入額が大きい場合に用いられることが多く、金融機関によっては借り換えに特化した金融商品を扱っていることもあります。
借り換えに似た言葉として一本化(おまとめローン)があります。
一本化とは複数の銀行から借入している場合、1行に融資をまとめることを意味します。例えばA銀行とB銀行から2,000万円ずつ借入していた場合、C銀行から4,000万円を借入して完済する方法です。
一本化のメリットは、複数の銀行に返済する手間がなくなることです。毎月返済額分を各口座に移す必要がなくなります。また不動産投資などの高額な融資の審査をクリアするうえで、銀行から一本化を条件とされることもあります。一本化することで金融機関は多額の融資ができ、利息を多く回収できるためです。
とはいえ借り換えと一本化は厳密には分類されておらず、金融機関によっては一本化を借り換えと呼ぶケースもあります。どちらも「融資をまとめることで条件をよくする」ことを目的としています。
ここでは金融機関や融資ごとの借り換えができる金融商品の種類について紹介します。
銀行や信用金庫、信用組合の場合、以下のローンが借り換え可能です。
プロパー融資(事業融資)
信用保証付き融資
住宅ローン
個人向けローンなど
銀行などの金融機関はさまざまな融資を行っており、ほとんど借り換えが可能です。ただし融資額が低い場合は借り換えしても大きなメリットが生まれないため、事前に返済差額を計算しておく必要があります。
信用保証協会が保証した信用保証付き融資は借り換えが可能です。ただし、信用保証協会の絡まないプロパー融資を保証付き融資には借り換えできません
東日本大震災や熊本地震、新型コロナウイルス感染症の影響など、災害や社会的環境の変化によって資金繰りが困難となっている事業者は借り換えができます。(公庫融資借換特例制度)ただし、民間の金融機関の借入を借り換えることはできません。
消費者金融や信販会社などのノンバンクは借り換えすることが可能です。ただしノンバンク自体の金利が高いため、借り換えする際は金利差などに注意が必要です。近年では「借換ローン」や「おまとめローン」など、借り換えや一本化に特化した金融商品がある企業も増えています。
ここでは借り換えを行うメリットを3つ紹介します。
借り換えを行うことで毎月の返済額を安くすることができます。今の借入先の銀行より、借り換え先の銀行の金利の方が低ければ月返済額を抑えることができます。一例として3,000万円の35年住宅ローンで比較してみます。
| A銀行(金利1.2%) | 借り換え先:B銀行(金利1.0%) |
---|---|---|
月返済額 | 87,510円 | 84,685円 |
A銀行からB銀行に借り換えを行った場合、一月あたり2,825円の支払額を抑えることができます。一月あたりの金額差は大きくないものの、10年になると約34万円もの差額が生じます。長期的に見ると大きな返済額を安くすることが可能なメリットがあります。
毎月の返済額が安くなるということは総返済額も安くなることを意味します。残債3,000万円で残返済期間30年と仮定すると、30年間で支払う総返済額は以下の通りです。
| A銀行(金利1.2%) | 借り換え先:B銀行(金利1.0%) |
---|---|---|
総返済額 | 35,738,138円 | 34,737,068円 |
比較してわかる通り約100万円もの差額が生じました。もちろん金利差や借入額によっては総返済額が変わるため、誰しもが借り換えれば大きな返済額の圧縮につながるというわけではありません。とはいえ毎月返済額や年間返済額も減ることになり、返済負担が軽減されるメリットがあります。
金利は経済状況や金融市場によって大きく左右されますが、借り換え時に変動金利から固定金利にして変えておくと、金利上昇時であっても返済額に影響されません。
住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用者調査(2022年10月調査)】を確認すると、住宅ローンでは変動金利を選ぶ人が約70%、固定金利を選ぶ人が約30%であることがわかります。
変動金利は固定金利より金利が低い傾向にあります。しかし急な金利上昇があった際は、変動金利も高くなるデメリットがあります。
一方固定金利は3年・5年・10年・全期間と一定期間金利が固定です。金利上昇の影響を受けないため、借り換え時に固定金利へ変えておくことで返済額の上昇対策が可能となります。
借り換えは返済額を抑えるというメリットがある一方でデメリットもあります。ここでは2つ紹介します。
借り換えを行う際は手数料や登記費用などが必要となります。
既存の金融機関への手数料 | 借り換えの金融機関への手数料 |
---|---|
全額繰上返済手数料 保証会社事務手数料 抵当権抹消登記費用 など | 保証料 事務手数料 金銭消費貸借契約印紙代 抵当権設定登記費用 など |
借入金額や金融機関によって必要な手数料などは異なりますが、数十万円〜数百万円にもなることが多いです。そのため金利が安くなるからという理由だけで判断すると、「手数料を考慮していなかったため支払額が増えた」というケースも少なくありません。
トータルの費用を踏まえて借り換えすべきか判断しましょう。手数料の計算は金融機関や司法書士などと連携を取りながら見積もることができます。
借り換えをするということは、借入している銀行との関係が悪化することが懸念されます。
いわば取引を中止するということであるため、銀行の立場としては「次の融資も中止されるかもしれない」と考えるのが普通です。もちろんどの金融機関でも同じ考えではありませんが、借入していた金融機関に住宅ローンやマイカーローンを申し込む際、審査に影響がでる場合もあります。
借り換え先を選ぶ際はトータルの返済額を安くなる金融機関を選ぶようにしましょう。手数料などを踏まえず金利差だけ選んでしまうと、総返済額が高くなる可能性もあります。先ほど紹介した3,000万円の借り換えを行う際の手数料を150万円と仮定すると、トータルの費用が50万円高くなり、借り換えが失敗したことがわかります。
借り換えする前に手数料などを考慮し、適切な金融機関を選ぶようにしましょう。
借り換えは毎月の返済額を抑えることができるメリットがありますが、手数料などを考慮しなければいけません。
場合によっては借り換えする前の方が安く抑えられたということもあるでしょう。事前に金融機関や専門家に相談し、トータルの費用を算出してから借り換えを検討することをおすすめします。
事業を拡大するために、融資戦略は非常に重要です。補助金申請と組み合わせて行うことで資金繰りを改善することもできるため、あらゆるオプションを検討してみましょう。