一定金額以上の領収書を発行するときは、領収書に収入印紙が貼られます。収入印紙を目にしたことがあっても、なぜ貼らなければいけないのか、いくら以上の領収書に収入印紙が必要なのかなど、収入印紙について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回は、収入印紙について、購入方法から貼り方まで詳しく解説します。
最初に、収入印紙とは何なのか、概要を解説します。
収入印紙とは、国へ印紙税や手数料などを納付するのに必要な証票を指します。収入印紙を貼るということは、国に税金を払うことになります。
収入印紙の見た目は、収入証紙や普通切手などと似ています。以下のように、それぞれの目的や納付先が異なりますので、購入時や貼付時には注意が必要です。
収入印紙…国に税金を払う(国税)
収入証紙…地方公共団体(都道府県や市町村など)に税金を払う(地方税)
普通切手…郵便局に郵便料金を払う
印紙税とは、領収書や契約書(受取書)など、金銭が動く取引の際に作成した書類に課せられる国税です。印紙税が必要な文書は、印紙税法別表第1の課税物件表の中で、20種類に定められています。決められた契約書や領収書の作成に対して、印紙税が課税されると認識しておくと良いでしょう。
課税物件表に掲載されていない文章は課税対象外となり、印紙税は不要です。また、非課税文書では、物件表に掲載されていても印紙税は課税されません。
収入印紙を領収書に貼らなければいけないのは、記載金額が5万円以上(消費税込み)の領収書を作成した時です。ただし、消費税が内訳で記入されている領収書は、税込で5万円以上であっても収入印紙は不要です。
平成26年3月31日までに発行された領収書は、記載金額が3万円以上であれば収入印紙が必要とされていました。現在では金額が変わっているため、以前の領収書を確認する機会があれば注意してチェックしましょう。
先ほど、収入印紙は印紙税を払うための証票だと説明しました。印紙税法で定められた課税文書は、以下の20種類が該当します。
文書の種類 | 備考 |
---|---|
不動産・地上権・ 土地の貸借権の設定または譲渡・消費貸借・運送に関する各契約書 | 不動産売買契約書・土地賃貸借契約書・金銭借用証書・運送契約書など |
請負に関する契約書 | 工事請負契約書・広告契約書など |
約束手形・為替手形 | - |
株券・出資証券など | - |
合併契約書・吸収分割契約書など | - |
定款 | - |
継続的取引のための契約書 | 売買取引基本契約書・特約店契約書・代 理店契約書・業務委託契約書など |
預金証書、貯金証書 | - |
倉荷証券、船荷証券、複合運送証券 | - |
保険証券 | - |
信用状 | - |
信託行為に関する契約書 | - |
債務の保証に関する契約書 | - |
金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 | - |
債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 | - |
配当金領収証、配当金振込通知書 | - |
売上代金(または売上代金以外)に係る金銭又は有価証券の受取書 | 商品販売代金・借入金などの受取書 |
預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 | - |
消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳 | - |
判取帳 | - |
領収書は、上記のうち「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」に該当します。
電子取引により発生した電子領収書は、紙で発行されていないため文書とみなされません。このため、5万円以上の領収書であっても、電子領収書では印紙が不要です。電子領収書には、メール・FAX・添付ファイルなどが該当します。
また、金銭の受け取りの事実がない領収書に対しても、収入印紙は貼り付けません。例えば、クレジットカードでの支払いに対する領収書では、カードの決済をしても実際に金銭は受け取っていないため、収入印紙を貼ることができないのです。この場合、領収書にクレジットカードを利用した旨を記載する必要があります。同じように、売掛金と買掛金の相殺を証明する領収書に対しても、収入印紙は不要です。
領収書に貼り付ける収入印紙の印紙税額は、以下の通りです。
記載された受取金額 | 収入印紙の印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2,000円 |
1千万円を超え2千万円以下 | 4,000円 |
2千万円を超え3千万円以下 | 6,000円 |
3千万円を超え5千万円以下 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
収入印紙は、以下の31種類があります。
1円、2円、5円、10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円
100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円
1,000円、2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円
1万円、2万円、3万円、4万円、5万円、6万円、10万円
収入印紙が購入できるのは、郵便局・法務局・役所・コンビニ・タバコ屋・酒屋などの場所です。このうち、一定以上の規模がある郵便局・法務局では、31種類の収入印紙を全て取り扱っています。役所においても、多くの種類の収入印紙が購入可能です。支払いはすべて現金のみとなっています。
コンビニは、店舗数が多く、24時間営業の店がほとんどであり、欲しい時にすぐ収入印紙が購入でき便利です。ただし、取り扱っている収入印紙が、使用頻度の高い200円などの額面に限られる場合もあるため、購入時に確認が必要です。コンビニ・タバコ屋・酒屋などで購入する際は、「郵便切手類販売所」「印紙売りさばき所」などの目印があるかどうかを確認しましょう。
収入印紙の購入にかかった金額は、経費精算が可能です。購入してすぐに文書に貼り付ける場合は、「租税公課」の勘定科目を使用します。まとめ買いをしたのち保管する場合は、「貯蔵品」の勘定科目で管理しましょう。
収入印紙を貼る場所は、領収書にあらかじめ場所が設けられている場合とそうでない場合があります。場所が設けられていない場合、開いているスペースに貼り付けましょう。複数枚の収入印紙を貼る際は、以下の図のとおり横に並べて貼ります。
(引用:https://dstmp.shachihata.co.jp/column/02200903/)
収入印紙を間違えて貼ってしまった場合は、剥がして再利用ができます。ただし、収入印紙が破れてしまうと使用できなくなります。
本来貼り付けが不要な文章に、間違えて収入印紙を貼ってしまった時は、印紙税の還付が受けられることがあります。還付可能かどうか、税務署に問い合わせてみましょう。
収入印紙を扱う時には、いくつか注意点があります。それぞれの注意点について、詳しく見てみましょう。
収入印紙を貼った後は、忘れずに消印をしなくてはなりません。意味は割印と同様ですが、消印は印紙税法の呼び方です。収入印紙が使用済みであることを証明するものであり、収入印紙を領収書に貼り付けただけでは、印紙税法で納税したことにならないため、必ず消印をしましょう。
消印をする際は、収入印紙の彩紋と領収書とに半分程度ずつかかるように押しましょう。印鑑ではなく、署名でも問題ありません。
収入印紙を領収書に貼る行為は、国や地方自治体などに納税することを意味します。印紙を貼るべき時に貼り忘れた場合、印紙税法違反により脱税したと見なされるのです。
貼り忘れてしまうと、過怠税が2倍かかるため、合計で本来貼るべき金額の3倍の印紙税を支払う必要があります。ただし、税務調査が行われる前に、貼り忘れた旨を自主的に申し出ると、過怠税は1.1倍まで軽減されます。万が一、貼り忘れや消印の押し忘れに気付いた場合は、早めに申し出るようにしましょう。
領収書に貼り付ける収入印紙の金額は、領収書の額面金額で変わってきます。この時、消費税についての扱いに迷うこともあるでしょう。
消費税額が明確に分かる場合は、消費税を除いた金額で収入印紙の金額を判断します。例えば、以下の記載方法であれば、消費税額が記載されているため、本体価格に対して収入印紙の額が決まります。
本体価格○○万円 消費税等□□万円 合計△△万円
本体価格○○万円(うち消費税□□万円)
一方で、以下のように消費税額が本体価格に含まれており、消費税額が明確になっていない場合は、合計額で収入印紙の金額を判断します。
本体価格○○万円(消費税等を含む)
このように、消費税の取扱いによって収入印紙の額が変わるため、十分注意しましょう。
収入印紙は、納税方法の一つであるため、領収書の金額や貼り付けの方法、消印などに十分配慮しながら扱うことが重要です。電子取引に関する領収書は、収入印紙が不要である点も覚えておきましょう。
万が一貼り忘れた場合は、できるだけ早く申し出ることが大切です。スムーズな経理処理のためにも、関連する部署において収入印紙に関する知識を共有しておくようにしましょう。