もはやインターネット業界では知らない人がいない「メタバース」。日本のみならず、世界規模で注目を浴びており、今後のビジネス面においても様々な展開が想定されます。
この記事ではメタバースの概要と活用事例、メリットと具体的なサービスを紹介します。
メタバースとは、文脈により定義は様々ですが、一般にはインターネット上につくられた仮想空間のことを指します。メタバースの語源は「meta(超える・高次の)」+「universe(世界、領域)」から生み出された言葉と言われています。
メタバースでは、現実とは異なるもう一つの世界で、利用者は自分の代わりにアバターを作成し、他人と交流したり、買い物や仕事などを行うことができます。
つまり、現実世界とは異なる仮想空間上で、人々がコミュニケーションを取ることができる世界のことです。
XRとは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といったリアルとバーチャルを融合した空間を創り出す先端技術を総称する言葉のことです。
一方メタバースは、XR空間上でアバターがコミュニケーションや交流を行うことに進化した空間やサービス全体のことです。
上記の画像のように、複数の仮想技術を組み合わせた場合、それらをまとめてXRと呼ばれています。「XRは技術」、「メタバースはサービスの総称」という違いがあると認識しておきましょう。
メタバースは世界的に多くの注目を浴びています。その背景には主に以下の3つの理由があると考えられます。
テクノロジーの進歩
NFT市場の活発化
新型コロナウイルスの影響
これほどまでに注目され始めた理由を一つずつ紹介します。
メタバースが広がった理由としては、テクノロジーの進歩が大きいと考えられます。3DG(3次元空間でのコンピュータグラフィックス)やVR技術の発達・普及したことにより、よりリアルな仮想空間を表現できるようになった背景があります。
その結果、メタバース空間で他のユーザーとコミュニケーションを取る人が増えました。
さらに医療や学術研究など、様々な活用領域で用いられるようになっています。具体的な活用事例は後ほど紹介しますが、多くの業種で取り入れ始めている理由は、メタバースのテクノロジーが大きく進捗し、現実世界と変わらないくらいの表現や処理が行えるようになったことがあげられます。
NFT市場が世界的に活性化してきたのも、メタバースが注目される理由の一つです。
NFTとは「Non-Fungible Token」の略で、「非代替性トークン」とも訳される用語です。わかりやすく表現すると「偽造や複製などができないデジタルデータ」のことを指し、デジタルアートやビットコインなどの仮想通貨に用いられています。
NFTは実際に手に取ることができないものですが、メタバースとの相性が良く、近年市場が急速に伸びてきたことから、メタバース上での価値交換の手段としての注目が集まっています。日本でも大手の企業がNFT市場に参入し始めています。
新型コロナウイルスにより在宅勤務を行ったり、自宅で過ごす時間が増えたこともメタバースが注目され始めた理由の一つです。
リモートワークやオンラインで交流するのが一般的となり、仮想空間でコミュニケーションを取ることに対する抵抗が無くなって来ています。また、Vtuberと呼ばれるアバターを作成して情報配信する人も増え、若者を中心に人気が上昇しています。
上記のように、新型コロナウイルス以降、人とのコミュニケーション方法が変わりつつあることから、今後成長が大いに期待できるジャンルとして、メタバース関連銘柄に多くの投資家が注目しています。
メタバースはビジネス面においても大きなメリットがあります。例として挙げると、以下の4点です。
メタバースオフィスで作業の可視化ができる
経営コストの削減になる
情報をスピーディーに共有できる
ビジネスチャンスの創出につながる
導入を検討している企業は、一つずつ確認しておきましょう。
メタバース上に存在するメタバースオフィスを利用すれば、作業が可視化され、効率よく業務を進めることができます。
メタバースオフィスとは、仮想空間に作られた疑似的なオフィスのことで、アバターを通じて気軽にコミュニケーションが取れたり、オフィスのレイアウトを再現したりすることで、誰がどこで何をしているのかを可視化できたりします。
本来、誰がどの仕事を進めているのかは、電話や直接話をして確認します。しかしリモートワークが主流となっている現在では、直接話をする機会も少なくなり、わざわざ電話で確認するのにも手間がかかります。
そのためメタバースオフィスを利用すれば、上記のような手間を減らすことができ、コミュニケーションを取りながら各人の作業状況を確認することが可能となります。
メタバースオフィスを利用することで、オフィスが不要となり、経営コストの削減につながります。通常、オフィスを設ける場合、賃料や光熱費、社員の交通費などのランニングコストがかかります。
しかしメタバースオフィスであれば、オフィスを設けずに従業員と連絡を取ることが可能となり、相対的にコストダウンにつながります。
メタバース内では、通話やチャットだけでなく、仮想空間内のツールを用いて情報を共有することができるため、より多くの方へ早く伝えることができます。
社内や社外の人たちとのコミュニケーションは、メールや電話、チャットアプリなどを使用されていると思います。メタバースではそれらの機能に加えて、仮想空間で誰でも見る機会が多い、掲示板や画面共有ツールなどさまざまな共有機能を持ち合わせています。
これまでとは全く異なった情報のやり取りがスピーディに行えることになるため、社内のやり取りやクライアントへの営業や商談まで、様々な活用が期待できます。
メタバースが注目され始めたのは2000年代中盤頃ですが、ビジネス活用はまだ始まったばかりです。
そのため、参入し始める企業も多く、販路拡大につながったり、メタバース上での新規サービスを提供するなど、さまざまなビジネスチャンスに期待できます。今後ますますテクノロジーが進化すれば、メタバースが利用できる範囲も広がって行くでしょう。
では、実際にメタバースはどのように活用できるのでしょうか。ここではメタバースの活用事例を7つ紹介します。
バーチャルショップ
オンラインイベント
メタバース観光
バーチャルオフィス
メタバース広告
オンライン研修
遠隔医療
一つずつ確認し、自社にも使えるアイデアはあるのか検討してみましょう。
バーチャルショップとは、VRや最新3D技術を使ってオンライン上に仮想店舗を出現させ、そこでショッピング体験を届けるコンテンツのことです。
例えば、店舗に行かなくても、VRで実際の洋服を見てファッションを楽しんだりして、利用者の購買意欲を高め、そのままECでの購入へと繋げることなどが可能となります。
実際にお店を構える必要がないため、低コストで店舗を構築でき、なおかつほぼ無限大の売り場空間を作ることもできます。
渋谷区が公認している配信プラットフォーム「バーチャル渋谷 」では、リアルの渋谷で開催されたライブやイベント、展示会などを楽しむことができます。
仮想空間では、オンラインイベントも開催することが可能です。ゲーム大会やライブ、アートなどさまざまなエンターテインメントを行うことができます。会場を借りる費用も掛からなければ、現場のスタッフなどの人件費も不要となるメリットもあります。
「VARP(ヴァーチャル・パーク・システム)」では、仮想空間上で様々なイベントを開催しているプラットホームです。後ほど具体例でも紹介します。
メタバース観光は、仮想空間でアバターが観光する方法です。実際に存在する場所だけでなく、歴史上の偉人が生きていた時代などを旅先として指定することもできる会社もあります。
ANA NEO株式会社では、「SKY WHALE」を開発し、バーチャル空間での旅行やショッピングを楽しむことができます。
バーチャルオフィスとは、先程紹介したメタバースオフィスのことです。アバター同士で会議やミーティングなどを行うことができ、なおかつタスク管理や情報共有なども可能となります。
マイクロソフト社が提供している「Microsoft Mesh」では、自分が作成したアバターでビデオ会議に参加でき、静止画やアイコンでビデオ会議に参加する人を減らすなどの活用もされています。
メタバース広告とは、仮想空間やデジタル空間内で商品やサービスを宣伝・広告する手法のことです。
NTTと電通は、東京ゲームショウ VR 2021において、VR(仮想現実)空間での体験と、広告モデルの新たな展開方法を模索していました。
メタバースに参加している人は、外出する機会も少ないため、導入している企業は仮想現実で広告した方が効果的と考えている背景がくみ取れます。
メタバースを用いた仮想空間でのオンライン研修は、3Dコンテンツによる学習効率の向上や、多人数での参加が可能です。
通常のオンライン研修などは、どこか退屈さを感じてしまいがちですが、仮想空間であれば、アバターで楽しみながら研修することができます。
さらに仮想空間であれば、研修人数が多くなってもネット環境次第ではありますが、スムーズに研修することも可能です。
JR東日本では、整備作業中の事故をVRで疑似体験として活用しています。
メタバースは医療業界にも用いられています。アステラス製薬ではバーチャルMRを活用した医療従事者への講演会を行ったり、メディカロイドではMRを活用した手術支援ロボの操作などへ活用しています。
ここではメタバースを活用したサービスの具体例を7つ紹介します。
Minecraft
Fortnite
The Sandbox
VARP
NIKE LAND
VRChat
αU
どのように活用されているのかを一つずつ確認しておきましょう。
マインクラフトとは、仮想空間で、アバター同士が交流するゲームです。マインクラフトは草原や山岳、海底などさまざまな地形から、恐竜や牛、ドラゴンなどさまざまなキャラクターが存在し、全てブロックで作られています。
さらに街をつくったり、敵を倒したりなど、さまざまなエンターテインメントがあり、世界的にも人気が高いです。
参考:Minecraft
FORTNITE(フォートナイト)とは、アメリカに拠点を置くゲーム開発会社Epic Games(エピック・ゲームズ)が提供するゲーミングプラットフォームです。無料でプレイできることもあり、全世界で4億人を超えるユーザーが利用しています。
フォートナイトは、銃と建築で敵を倒すバトルロワイアルゲームです。最大100人のユーザーの中で最後の1人になるまで戦い、世界大会なども開催されています。
また、過去にはFORTNITE(フォートナイト)で多数のアーティストがライブを実施し、日本円で21億円もの売上高を記録したこともある大人気ゲームの一つです。
参考:フォートナイト
The Sandbox(ザ・サンドボックス)とは、ボクセル(3次元のピクセル)によって構成されるNFTゲームプラットフォームです。
アバター同士でコミュニケーションを取ったり、メタバース上で利用できるアイテムを「ETH」や「SAND」というトークンを用いてNFTマーケットプレイス上で売買することが可能です。
さらに、3Dオブジェクトやアニメーションの作成や3Dゲームの作成など、幅広いコミュニティができ、他のアバターにも楽しんでもらうことができる魅力があります。
参考:The Sandbox
VARPとは、仮想空間上でイベント体験ができるプラットホームです。コロナ渦によって人々が集まれない状況でも、仮想空間であればアーティストがライブ活動を行ったり、イベントを行うことができます、
実際に、人気アーティストである「RADWINPS」が2021年7月16日から2日にかけて行ったバーチャルライブ「SHIN SEKAI nowhere」が話題になりました。
参考:VARP
NIKELANDとは、スポーツ用品メーカーのNIKEが運用するメタバースプラットホームです。
ユーザーはアバターを操作して他のユーザーと共に鬼ごっこやドッジボールなどのゲームを楽しむことができます。
また、NIKELAND内にあるデジタルショールームでは、NIKEのスポーツ用品を購入することができ、アバターに着せ替えすることが可能です。
さらに着せ替えることで身体能力がUPするなど、さまざまな楽しみ方があるプラットフォームです。
VRChatとは、VR空間でアバターを作成し、多人数でコミュニケーションを取ることができるゲームです。
2017年にリリースされて以降、全世界で43万人のユーザーがプレイしており、VR上で友人たちと交流したり、イベント会場として利用されています。
VRChatでは無数のワールド(バーチャル空間)が用意されており、好きな場所で世界中の人とボイスチャットなどでコミュニケーションを取ることができるため、実際に会っている感覚が強いのが特徴です。
参考:VRChat
携帯キャリア会社のKDDIが提供する「αU(アルファユー)」は、大阪や渋谷を舞台にユーザー同士でアバターを操作してコミュニケーションを取るゲームです。αUでは、仮想空間で以下のエンターテインメントを楽しむことができます。
メタバースでエンタメ体験や友人との会話を楽しめる「αU metaverse」
360度自由視点の高精細な音楽ライブを楽しめる「αU live」
デジタルアート作品などの購入ができる「αU market」
暗号資産を管理できる「αU wallet」
実店舗と連動したバーチャル店舗でショッピングができる「αU place」
さらに株式会社スターダストプロモーションと連携して、次世代タレントを一般公募したバーチャルスターオーディションなども開催しており、バーチャルタレントとして活動できるチャンスもあります。
参考:αU (アルファユー) メタバース・Web3サービスプラットフォーム
メタバースの具体例やメリットなどを紹介しましたが、一方で、メタバースにも課題があります。
法整備がされていない
メタバース構築に時間やコストがかかる
高度なセキュリティ対策が必須
一つずつ確認しておきましょう。
日本では、Web3/メタバースを日本の成長産業の1つとして掲げており、推進員会等の設置など、前向きに産業発展に注力しています。
しかしメタバースに対しての法整備がしっかりされておらず、著作権法や特定商取引法など、さまざまな法律に注意して運用しなければいけません。
近年ではSNSなどで誹謗中傷する方も増えています。メタバースでも同じ事象が発生していますが、法整備が進んでいないことから確実な対処ができていない状況です。
メタバースの構築には、多額のコストと時間がかかります。構築するメタバースによって異なるものの、1,000万円近くかかるサービスも多いです。
例えばオンラインショップとイベントの開催ができるメタバースを構築するとなると、2,000万円ほどの費用がかかる場合もあります。
もちろんサービスの内容や解像度など、さまざまな要素によってコストと時間は変わります。またメタバースを構築してくれる企業に委託すると、運用費用として月額料金などがかかるケースもあります。
メタバース構築には多額のお金が必要となるため、あらかじめまとまった資金が必要です。
メタバースでは個人情報や企業の機密情報の流出、デジタルアセットの盗難やウォレットのハッキングなど、さまざまなセキュリティ対策を十分にしなければいけません。
悪意のあるハッカーがメタバース空間のセキュリティを狙い、ハッキングするリスクが考えられます。一度ハッキングされてしまうと、メタバースの信頼度が大きく低下してしまい、利用者が少なくなってしまう危険性もあるため事前に対策が必要です。
メタバースを始める際は、以下の手順で進めます。
暗号資産取引所に口座を開設
暗号資産を保管するためのウォレットを準備
メタバースサービスへの登録
一つずつ確認しておきましょう。
メタバースを始める際は、事前に暗号資産取引所の口座を開設しておきましょう。メタバースのプラットホーム内での取引は、それぞれ使用されている暗号通貨が必要です。
アイテムを購入するという際など、スムーズに手続きできるように口座開設は行い、日本円で入金して暗号通貨を購入するようにしましょう。
次に暗号通貨を保管するウォレットを用意します。ウォレットとは暗号通貨のお財布というイメージで、インターネット上で管理するものです。
ウォレットがなければ、暗号通貨で売買することができないため、暗号資産取引所の開設と一緒に準備しておきましょう。
最後に利用したいメタバースへ登録し、仮想空間を楽しみましょう。またメタバースによっては「VRゴーグル」や「VR対応パソコン」が必要となります。事前に利用するメタバースでの必要機器を確認しておきましょう。
メタバースとは、インターネット上につくられた仮想空間のことで、人々がコミュニケーションを取る場所だけでなく、情報共有したり、仕事のタスク管理など、ビジネス面でも多くの企業が導入し始めています。
さらにオフィスの賃料や従業員の通勤費削減など、経営コストも抑えられる特徴があるため、今後テクノロジーの進化とともに、メタバースの導入率は高まることが想定できるでしょう。
メタバースのような最新テクノロジーは補助金とも相性が良いです。よくわからないから、と見て見ぬふりをするのではなく、新しいトレンドとして前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。