法人には、株式会社や合同会社などさまざまな種類があり、納める税金の種類は個人事業主と異なります。これから法人を設立しようと考えている場合は、法人にかかる税金について知っておくことが必要です。
この記事では、法人にかかる税金の種類や、納税遅れ・申告漏れにおけるペナルティを解説します。
法人にかかる税金は個人事業主よりも多く、種類ごとに決められた時期に支払わなくてはいけません。それぞれの税金の内容や納付時期を詳しくご紹介します。
法人税は、法人の課税所得に対して課せられる税金です。課税所得を求めるには、年間売上から経費や控除を差し引いて計算します。法人税の特徴は、税率が2段階に分かれている点です。課税所得と税率の関係は、以下の表のようになっています。
法人区分 | 税率 |
---|---|
法人(資本金が1億円以下)
| 課税所得が ・年800万円以下の部分…15% ・年800万円を超える部分…23.20% |
上記以外の普通法人 | 23.20% |
課税所得が800万円を超えている場合は、税率ごとに計算した2つの税金を足して、最終的な税金を算出します。例えば、資本金が1億円以下の会社で、課税所得が3,000万円の場合の計算式は以下の通りです。
800万円 ✕ 15% = 120万円 2,200万円 ✕ 23.20% =510万4,000円 120万円 + 510万4,000円 = 630万4,000円 |
上記の式から、法人税は630万4,000円と算出できます。
法人に課税所得がない、つまり赤字になってしまった場合、法人税の納税義務は免除されます。納付時期は、事業年度終了日の翌日から2か月以内とされています。
法人住民税は、会社を登記している都道府県・市町村などの自治体に納付する税金であり、地域によって呼び方が違う場合もあります。法人税割と均等割の2つから構成されており、税率や条件は自治体ごとに異なります。
法人税割は、法人税額を基準に計算するため、赤字になった場合は法人税割の部分は免除されます。一方で、均等割は資本金と従業員数で計算するため、赤字となっても支払いは必要です。法人税割の具体的な税率や条件を知りたい場合は、登記している自治体へ直接問い合わせましょう。
法人住民税の納付時期は、法人税と同じく事業年度終了日の翌日から2か月以内です。
法人事業税は、会社を登記している都道府県や市町村において、事業を営むために利用する公共サービスや公共施設の維持費の一部を負担する目的で納付する税金です。以下の計算式で算出します。
法人事業税額 = 所得 ✕ 法人事業税率 |
法人事業税率は、自治体・法人の種類・事業開始年度・課税所得によって変わってくるため、確認が必要です。
法人事業税は、翌年の経費に計上できる点が、他の法人税等と異なります。赤字の場合は法人事業税の納付が免除されますが、会社の資本金が1億円を超えると資本割と付加価値割が課せられるため、免除はありません。納付時期は、前述した法人税・法人住民税と同じく、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。
特別法人事業税は、法人事業税の一部です。地方法人課税における税源の偏りを是正するため、令和元年度の税制改正に伴い、地方法人特別税に代わって創設されました。
この税金の申告納税義務が課せられるのは、法人事業税の申告納付義務がある法人です。非営利法人以外の一般社団法人・一般財団法人は、収益事業がなくとも、全ての所得に対して法人事業税や特別法人事業税が課せられます。
特別法人事業税における課税標準額や税率は、法人の種類によって異なります。申告および納付は、法人事業税と合わせて行います。
消費税は、納税する人と負担する人が異なる間接税です。このため、消費者から預かった消費税を国へ納めるのも、法人の役割です。全ての法人に納税義務があるのではなく、一定要件に該当すると消費税の納税義務が発生します。納税する消費税は、以下の計算式で算出します。
納税する消費税 = 消費者から預かった消費税 - 経費として外部に支払った消費税 |
消費税の計算方法には、実際の税額で計算する原則課税と、みなし仕入率を使って計算する簡易課税の2通りがあり、基本的には原則課税を選択します。ただし、課税売上高が5,000万円以下であれば、いずれかを選択可能です。
法人の消費税は、事業年度を1年として計算するため、消費税の納付時期は法人税と同じです。
従業員が納める所得税を給与や報酬などから天引きして徴収し、従業員の代わりに会社が納付する税金です。源泉所得税の金額は、給与額と扶養親族の人数をもとに算出する方法と、税率で計算して算出する方法があります。
源泉所得税は、徴収した翌月の10日までに納付しますが、給与の支給人員が常時10人未満で特例を受けている会社は年2回の納付となります。毎年12月に年間の収入が確定し、最終的な所得税が分かったら、従業員に対して年末調整を行い、還付もしくは追加徴収をします。
従業員の給与や報酬などから天引きし、従業員が住む市町村へ納付する税金です。従業員の前年度の個人所得に対して市町村が住民税を決定し、毎年5月中旬に市町村から通知を受けた会社が、従業員に対して特別徴収をする旨と徴収税額を通知します。このため、会社側が従業員の住民税を計算する必要はありません。
特別徴収した住民税も、源泉所得税と同じく徴収した翌月の10日までに納付が必要です。
ここまで紹介した税金以外にも、法人が保有する資産に課せられる税金や、取引時に発生する税金などがあります。以下の4つの税金は、法人として必ず理解しておきましょう。
印紙税法で定められている、課税対象の文書作成者に対して課せられる税金です。課税対象の文書には20種類あり、主に以下の文章が該当します。
不動産売買契約書
土地賃貸借契約書
工事請負契約書
約束手形・為替手形
定款
業務委託契約書
預金証書・金証書
保険証券
信用状
領収書
預金通帳
印紙税は、収入印紙を購入し文書に貼り付け、消印をした時点で納税したとみなされます。作成する文書や取引金額によって印紙税が決まるため、節税対策の方法はありません。
課税対象の文書の中でも、文書の種類ごとに定められた記載契約金額が一定額以下であれば、非課税扱いとなる場合があります。
会社の登記申請(商業登記)を行う際に必要となる税金です。会社名義で不動産を購入した場合は、不動産登記のための登録免許税が必要です。会社経営に関係する主な登録免許税は、以下の内容が該当します。
内容 | 税率または費用 |
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土地の売買 | 不動産価額の2% |
建物の所有権の保存 | 不動産価額の0.4% |
株式会社の設立 | 最低15万円 |
合同会社の設立 | 最低6万円 |
代表者の変更 | 最低3万円 |
支店の設置 | 1か所につき6万円 |
上記のほかに、登記事項の変更・廃止を行う場合は、1件につき3万円かかります。登記申請のタイミングで、現金での納付が原則です。
固定資産税は、会社が保有する土地・建物・償却資産などの固定資産に課せられる税金です。総務省のホームページでは、固定資産の例として以下の資産を挙げています。
種類 | 例 |
---|---|
土地 | 田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地 |
家屋 | 住宅、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物 |
償却資産 | 会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など |
固定資産税は、毎年1月1日に決められる資産価値に対して評価額が決まり、評価額に対する税率によって税額が決まります。機械などの償却資産は、毎年1月末までに所有状況の申告が必要です。各自治体から納税通知が届いたら、納付書を使って納付します。
自動車税は、自動車の所有者に対して課せられる税金です。毎年4月1日時点における普通自動車の所有者は、自動車税を都道府県へ納付し、軽自動車の所有者は軽自動車税を市区町村に納付します。
自動車税は、排気量・新車登録年数・新車登録後の経過期間だけでなく、乗用車・トラック・バスなどの分類や、営業用・自家用などによって税額が変わってきます。納付期限である5月末までに納付が必要です。
法人に課せられる税金は複雑な仕組みであり、税金ごとで納付期日も変わってきますが、納税が遅れたり申告を忘れたりするとペナルティが課せられます。決められた税額以上の税金を支払う必要性が生じないよう、ペナルティについてきちんと理解しておくことが重要です。
延滞税は利息と同じ意味を持っており、納付期日を1日でも過ぎてしまうと、納税日までに応じた延滞税が発生します。延滞税の税率は、納付期日を過ぎてから2か月以内での納付と、2か月以上過ぎた段階での納付で、以下のように変わってきます。
納税が遅れた期間 | 適用税率 |
---|---|
納付期日を過ぎてから2か月以内 | 年7.3%(または延滞税特例基準割合)+1% |
納付期日を過ぎてから2か月以上 | 年14.6%(または延滞税特例基準割合)+7.3% |
(延滞税特例基準割合は毎年変わります)
法人の税金は高額になりやすく、納付が数か月延滞してしまうと、延滞税だけで数十万円プラスして納付しなければいけない場合もあります。
確定申告や決算報告において、法人税の申告を適切に行っていない場合は、ペナルティとして加算税が追加されます。加算税には、主に以下の4種類があります。
過少申告加算税(期限までに提出した申告書の記載税額が過少であった場合)
無申告加算税(期限までに申請書を提出できなかった場合)
不納付加算税(期限までに源泉所得税を納付しなかった場合)
重加算税(仮装隠蔽など脱税があった場合)
課税割合は、加算税の種類によって異なります。延滞税と加算税どちらも課されると、納付する税額が大幅に増えますので、十分注意しましょう。
法人が2期連続して申告期限を過ぎると、青色申告が取り消されます。取り消し後1年間は再申請ができず、欠損金繰越控除や特別償却など節税できる各種制度を利用できなくなるのです。結果として節税もできなくなり、支払う税金が多くなってしまいます。
さらに、青色申告が取り消されると、法人としての信用面にも影響を及ぼす恐れがあり、融資が必要になった場合にマイナスとなる可能性もあります。これらの状況を避けるため、申告は必ず期限内に行いましょう。
会社経営を円滑に行うには、法人に課せられる税金についてしっかりと理解し、税金ごとの納付期日をきちんと守ることが重要です。税金の中には、事業年度終了日の翌日から2か月以内の支払いが必要なものも多いため、早めに手続きや準備をしておきましょう。