企業を運営して行くにあたり様々なメリットが得られる「ユースエール認定制度」をご存知でしょうか?
人材採用に有利になるだけでなく、日本政策金融公庫の金利が低くなったり、公共入札でも有利に働くといったメリットがあります。
一方、ユースエール認定を受けるためには基準要件を満たし、さまざまな書類を準備しなければいけません。
この記事では、ユースエール認定制度の概要とメリット、認定基準や取得方法を紹介します。
ユースエール認定制度とは、若者の雇用促進とスキル向上を行う事業者に対して、厚生労働大臣が認定する制度です。
若者雇用推進法が元となった制度で、名前のとおり、ユース(Youth=若者)とエール(Yell=応援)というふたつの言葉が由来です。
2024年3月末現在、さまざまな業種から1,235社がユースエール認定企業として認められています。
そもそもユースエール認定制度ができたのは、日本企業の離職率の高さが要因です。
特に新卒入社後3年以内の離職率が高いと指摘されており、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、大卒で31.2%にもなることがわかります。
離職する要因はさまざまですが、企業としては社員が離職してしまった後の人材確保が難しい状況です。少子化により若い世代が減少し、正規社員として働けない若者も多く、企業と若い働き手でミスマッチが発生しているのも事実です。
これらを解消するために、若者雇用推進法が導入され、求職者に対して幅広い情報提供が行われるようになりました。
その中でも、雇用管理において優良な企業に対して、厚生労働省が認定するというユースエール認定制度が設けられました。
ユースエール認定を受けるメリットは以下の3点です。
ユースエール認定を受けた企業は、求職者から働きやすい職場という認識が得られるため、新入社員や中途採用などの人材採用において有利になります。
昨今では、求職者が働く企業を選ぶ時代とも言われています。
多くの企業で人材確保の競争が始まっており、その中でもユースエール認定を受けていると、求職者に対して以下のようなアピールが可能となります。
若者の採用に積極的
若者の育成に熱心
離職率が低い
残業時間が少ない
休暇を取りやすい
子育てがしやすい
若い世代は、過酷な労働環境を避け、給与などより自分の時間を優先し、安定を重視する傾向にあると言われています。
さらに、ハローワークなどでユースエール認定企業であることをPRすることができるため、多くの求職者に認知されます。
ユースエール認定企業限定の就職面接会にも参加でき、求職者と接する機会も増えます。その場で「働きやすい」「従業員を大切にする」「若手育成にも積極的」といったアピールを行えば、求職者に安心感を与えることができるでしょう。
ユースエール認定を受けている企業は、日本政策金融公庫の「地域活性化・雇用促進資金」の利用時に、基準利率から0.65%低い利率で融資が受けられるメリットがあります。
地域活性化・雇用促進資金は設備資金や運転資金としても利用できるため、地域の活性化や雇用促進を行う企業にとっては大きな資金確保につながります。
参考:厚生労働省
ユースエール認定企業となると、国や公共機関が発注する公共調達で入札する際、加点評価が得られる場合があります。
国が定める「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」(平成28年3月22日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)において示されています。
また、地方公共団体も国に準じた取組を実施するよう努めることとされているため、入札が有利に働くメリットがあります。
参考:内閣府 男女共同参画局
ユースエール認定を受けるには、以下の要件を満たしている必要があります。
①卒業後3年以内の学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること |
②若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること |
③以下の要件をすべて満たしていること ・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること ・直近3業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下 ・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと ・前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上 ・直近3事業年度で男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の育児休業等取得率が75%以上 |
④以下の青少年雇用情報について公表していること ・直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数 ・研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定等の制度の有無とその内容 ・前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合 |
⑤過去3年間に認定企業の取消を受けていないこと |
⑥過去3年間に認定基準を満たさなくなったことによって認定を辞退していないこと |
⑦過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと |
⑧過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと |
⑨暴力団関係事業主でないこと |
⑩風俗営業等関係事業主でないこと |
⑪各種助成金の不支給措置を受けていないこと |
⑫重大な労働関係等法令違反を行っていないこと |
ユースエールの認定基準を満たしているかは、「ユースエール認定到達度診断」で診断できるため、活用してみましょう。
ユースエール認定の取得は、以下の手順で進めます。
認定基準を満たしているかの確認
申請書類と添付書類の準備
各都道府県労働局へ申請
各都道府県労働局から認定通知書の交付
申請書類と添付書類は以下の通りです。
申請書類 | 新規申請 | 基準適合確認 |
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〇 | ||
| 〇 | |
〇 | 〇 | |
〇 | 〇 | |
〇 | 〇 | |
〇 | 〇 | |
〇 | 〇 | |
〇 | ||
〇 | ||
| 〇 | |
疎明書(新型コロナ関係)※該当する場合 |
| 〇 |
〇 | 〇 |
添付書類 | 新規申請 | 基準適合確認 |
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若者を対象とした正社員求人又は募集が確認できる書面の写し | 〇 | |
週労働時間が確認できる書面の写し(賃金台帳又はタイムカード等) | 〇 | |
有給休暇と育児休業等の取得実績が確認できる書面の写し (賃金台帳、出勤簿等の写し) | 〇 | |
就業規則又は労働協約の写し | 〇 | 〇 |
くるみん認定等の写し | 〇 | 〇 |
青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則第7条第4号に記載の項目が掲載されたホームページ等の 写し | 〇 | 〇 |
上記のとおり、申請するために用意する書類は数多くあり、準備に時間がかかります。
確認すべきことも多く手続きが煩雑のため、前向きに検討したい企業は非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構などの専門機関にコンサルティングを依頼してみましょう。
ユースエール認定制度とは、厚生労働大臣が若者の雇用促進とスキル向上を行う事業者に対して認定する制度です。
認定を受けることで、採用力の向上や低金利融資、公共調達における加点評価などにつながります。
ただし、ユースエール認定を受けるためには、基準を満たすことはもちろん、数多くの申請書類を準備する必要がありますので、専門事業者に相談してみることをおすすめします。
ユースエール認定を受けると補助金申請など資金調達にも有利に働きます。興味のある方はぜひチェックしてみてください。