企業が運営資金を調達したいときには、さまざまな方法から選択できます。その中で、融資と投資のどちらを選んだら良いのか、悩んだ経験を持つ事業家の方もいるのではないでしょうか。
融資と投資は、言葉は似ているものの、資金の調達方法や調達元が異なります。企業にとって適切な調達手段を選び、経営に活かしていくことが大切です。
この記事では、融資と投資の違いについて、双方のメリット・デメリットや受けるポイントなどもふまえながら、徹底解説します。資金調達方法に迷っている事業家の方は、ぜひ参考にしてください。
最初に、融資と投資の違いについて、概要を見ていきましょう。
資金の提供者は、融資の場合は銀行・信用金庫などの金融機関か、もしくは自治体や商工会議所などの公的機関などが該当します。一方、投資における資金提供者は、ベンチャーキャピタルや個人投資家などの投資家となります。
資金提供者が資金を提供する目的にも、双方で大きな違いがあります。融資では、元金の返済時に併せて支払われる利息を、利益として受け取ることが目的です。投資では、資金提供の際に得た株式の売却利益を得ることが目的となっています。
融資と投資は、どちらも利益を受け取る目的であるものの、利益の獲得方法が異なります。
融資はお金を借りる行為であるため、毎月決められた返済日に元本と利息を合わせて返済しなくてはなりません。一方で、出資は受け取った資金を自己資本にできるため、返済義務はありません。
融資を受けると、借りたお金・すなわち負債が増加し、財務諸表のうち貸借対照表に記載されます。負債が増加すると負債比率も、財務指標が悪化するため、財務状況のチェックが厳しくなる恐れがあります。
投資は、貸借対照表上では純資産の増加として計上され、財務指標には影響がありません。
融資と投資の違いについて触れてきましたが、どちらの資金調達方法にもメリットとデメリットが存在します。適切に資金繰りを行うには、双方の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。
最初に融資のメリットから見ていきましょう。
融資は、金融機関などから直接お金を借り入れる行為です。返済の滞りなどがない限り、株式を渡すことはありません。経営方針について第三者から介入されないため、自分たちが目指す方向性に向けた事業の展開が可能です。
介入を受けると、たとえ資金の提供を受けられたとしても、事業がスムーズに進められなくなるケースも考えられます。経営の自由度を高くしたいのであれば、融資の利用が適しています。
金融機関の審査条件や自社の信用状況にもよりますが、融資を受けることで一度にまとまった資金が手に入れられます。消費者金融などの借金に比べると金利も非常に低く、返済をしっかり行えば資金の調達が可能です。
融資を受ける恩恵がある一方で、デメリットも存在します。続いては、融資のデメリットも見ていきましょう。
融資は、借りたお金を返済する義務があり、決められた期間内で元本と利息を合わせて支払う必要があります。このため、返済額は融資を受けた金額よりも高くなります。
毎月きちんと返済できるよう、融資を受ける前に返済計画を立て、返済が滞るリスクがないかを考慮することが必要です。
融資を受けるには審査が必須です。審査には書類が必要となるほか、金融機関によっては保証人や担保を求められると、提出書類が増える場合もあります。
審査はとても厳しく、必ず通るとは限りません。万が一融資を受けられなかった場合に、他の資金調達手段も考えておくと安心です。
続いて、投資を受けるメリットとデメリットについて、融資と異なる点に注目しながら見ていきましょう。
投資を受けるメリットは、主に以下の2つが挙げられます。
投資は資金援助を受ける行為であるため、融資とは異なり返済義務がありません。返済による資金繰りの悪化リスクもなく、返済がない分事業の成長に向けた多額の資金を充てることが可能です。
投資家は、投資した企業が成長したことで得られる株式の売却益や配当を伸ばすために、投資先に対して事業成長に向けた情報提供やアドバイスを与えてくれることがあります。投資家は、自らの事業を成功させている人も多く、経験を元にしたアドバイスを直接受けられるのは大きなメリットです。
投資を受ける時には、メリットと合わせてデメリットもチェックしておかなくてはいけません。投資を受ける主なデメリットは、以下の2つです。
投資では、投資家に対して、資金と引き換えに株式を交付するケースが一般的です。投資を受けるには、事業に成長性や採算性が必要とされ、株価が下がると資金調達が難しくなる場合もあります。
会社の業績が上がっても、利益がそのまま増えるわけではなく、株主優待や配当金の支払いなどが必要となるため、コストも上がってしまいます。投資を受けて資金を得られても、想定していた結果が得られなくなる可能性もあるのです。
株式を取得した投資家は議決権を取得します。これにより、投資家が経営に関与するようになると、投資家の意向を経営に反映させなくてはならず、代表の意向を全て会社経営に反映させることは難しくなります。
投資家が、議決権株式の過半数を持つと、経営権が投資家に移ってしまいます。代表の理想を会社経営で実現するには、投資家との関係性も考えておくことが必要です。
融資を希望する際には、融資を受ける方法も決める必要があります。銀行以外にも、以下の3つから選んで審査に通ると融資を受けられます。それぞれの特徴を理解したうえで、融資希望先を決めるようにしましょう。
公的融資とは、日本政策金融公庫や信用保証協会から融資を受ける手段です。
日本政策金融公庫は、100%国が出資した金融機関であり、主に事業者への貸付を扱っている金融機関です。銀行などから融資を受けられなかった中小企業・小規模事業者などに対して、資金調達をサポートしています。
信用保証協会とは、中小企業および小規模事業者が資金調達を希望する際、金融機関に対する保証人となることで融資を受けやすくする公的機関です。創業直後の事業者でも融資が受けやすくなり、返済できなくなった場合は信用保証協会が保証人として代わりに返済をしてくれます。ただし、信用保証料の支払いが必要です。
民間融資とは、事業を営む法人経営者もしくは個人事業主を対象としたローン商品であり、ビジネスローンも含まれます。事業資金の借り入れを目的としており、原則として保証人や担保は不要です。
公的融資や銀行からの借り入れよりも、融資を受けるまでのスピードは早いですが、その分金利は高くなります。
融資型クラウドファンディングとは、複数の支援者から資金を募り、まとまった資金として借り手企業に融資するものです。ソーシャルレンディングとも呼ばれる手法であり、支援者は金利を受け取ることで収益につなげられます。
投資を受けることで資金調達を検討している場合は、以下の2つの方法から選択するのが一般的です。
ベンチャーキャピタルとは、投資専門の会社であり、高い成長が見込まれる未上場企業に対して資金を提供しています。ベンチャー企業やスタートアップ企業などが利用するケースが多く、ベンチャーキャピタルの運営主体によって独立系・金融系・政府系などがあります。企業が上場したタイミングで株式を売却し、利益を得る手法です。
ベンチャーキャピタル同様、株式の売却益を得ることが目的ですが、法人ではなく個人の投資家である点が特徴です。エンジェルとは、ベンチャー企業をメインに出資している投資家をさします。
融資や投資をスムーズに受けるには、ポイントを知っておくことが重要です。それぞれのポイントについて理解を深めましょう。
融資を受ける際には、返済能力が最も重視されます。返済能力をアピールするために、自社の経営の安定性や売上目標・信頼性が高い取引先のアピールなどを行なうと効果的です。
確実に返済するための売上高や収益性に少しでも不安があれば、融資の相談や申し込みをする前に経営改革が必要です。経費の削減や業務改善など、できることを全て実施し、その後融資の相談に臨む姿勢が求められます。
投資家は、投資を行う企業に対して、事業の成長性に着目しています。事業を始めたばかりでこれから成長を目指す企業が、競合とどのように差別化を図り、独自性を見出していくかが注目されます。根拠を示したうえで、目標を掲げるようにしましょう。
融資と投資は、どちらも資金調達の方法であるものの、お金の出資元や返済の有無などが大きく異なります。まずは自社の現状を把握し、融資と投資どちらが適しているかをしっかりと把握しましょう。