食の安全・安心と事業の持続成長のためには、安定した原材料調達体制が不可欠です。しかし近年、地政学リスクや異常気象、為替変動などによる食品原材料の輸入リスクが高まり、日本の中小企業の多くが苦慮しています。こうした時代背景を受け、「産地連携推進緊急対策事業」という国の補助金制度が創設され、国産原材料の調達・利用拡大や産地支援に積極的な事業者が力強く支援されています。
本記事では、産地連携推進緊急対策事業の概要からメリット、申請条件、採択のポイント、実際の活用事例まで、現場目線でわかりやすく解説します。特に中小企業の調達担当、事業企画の方にとって、資金調達や販路開拓のヒントになれば幸いです。
激しさを増す原材料調達リスクに対応し、食品製造事業者等のサプライチェーン強化を目指して誕生したのが「産地連携推進緊急対策事業」です。
ここ数年、ウクライナ情勢や為替変動、物流網混乱など国際情勢の不安定化により、食品原材料の価格高騰・調達難が顕在化しています。特に日本の食品産業は原材料の多くを輸入に依存し、中小企業の現場では以下のような課題が深刻化しています。
調達価格の不安定化による利益圧迫
物流遅延・納期遅れ
取引先からの安定供給要求
国産原材料へのシフト要請
そこで農林水産省は、産地連携を軸とし、「国産原材料の調達量増加・安定化」や「産地の生産力強化・支援」に取り組む事業者への補助金制度を設置しました。国産利用拡大を通じて、食料安全保障と事業継続力の向上を両立させるのが目的です。
「産地連携推進緊急対策事業」は、国産原材料の調達を安定化させるための2大取り組みを軸としています。
A. 産地を支援する取組 食品製造事業者等が自社の調達ニーズに基づき、産地(生産者)と密接に連携しながら、生産体制の構築・強化を具体的に支援する活動。
B. 国産原材料の取扱量増加を目指す取組 国産原材料の使用量増加を目指し、調達多角化や新商品開発、製造ライン改善などを推進する事業。
支援対象は、「食品の加工・製造事業者等」および「該当事業者と連携して事業を実施する者(外食・流通業者等)」が主です。また、申請には「産地と連携した国産原材料調達計画」の策定が必須となります。
事業の特徴は現場に寄り添った支援の柔軟性にあります。A・Bそれぞれの主な活動類型を解説します。
「産地支援」は、単に商品仕入れ先を増やすのではなく、産地の生産性・供給力を高めるための直接支援まで含みます。
代表的な活動例:
品種指定による種苗(種や苗)の生産委託・提供
生産拡大に不可欠な収穫機械や選別機などの機器貸与・導入
加工用途に合った生産指導・人材派遣(自社社員や専門家を産地へ派遣し、栽培技術指導・共同作業)
このような双方向の連携で、産地と食品製造事業者が「共に利益を得る」サイクルを創出します。
国産化の転換は小規模事業者には大きな負担です。そこで新たな商品開発や製造ラインの見直し、PR活動等、幅広い工程で活用できるのも本事業の特長です。
具体例:
国産原材料を使った新商品の開発・試作費用(試作原材料、PR情報発信費など)
製造ラインの機器新設・変更・増設費用
食品表示の変更による包装資材の見直しに伴う費用
国産食品原材料の取扱量増加を目的とした機械設備等の導入、PR等の取り組み等が支援されます。
申請者は「自社が現に輸入原材料の高騰などの影響を受けた」「過去1年以上輸入原材料の使用実績がある」等、客観的に確認できる条件が求められます。
食品製造事業者(またはこれらと連携し取り組む者)
産地との国産原材料調達計画を策定していること
具体的には、パン・菓子・麺類などの製造業者、飲食店(バックヤード製造あり)やそうざい業者、食品卸など幅広い分野が対象です。さらに、民間企業だけでなく各種団体(商工組合・協同組合・NPO等)や認定された特認団体も含まれます。
主要な輸入食品原材料(例:小麦、大豆、油脂、牛豚鶏肉等)が直近の指定期間に価格高騰(平均調達価格が過去比120%以上)している
輸入食品原材料に1年以上の使用実績がある
参考:公募要領
補助率:1/2以内
補助上限:1事業者あたり2億円(産地支援型は3億円)(下限100万円)
補助対象経費(主なもの)
機械設備、開発機器、包装資材、外注費、専門家経費、原材料(試作/PR用)
産地支援の場合は種苗費、派遣旅費なども可能
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新規事業などでまとまった経費を予定されている方は、補助金申請でコスト負担を軽減することができます。
しかし、自社に合った補助金を見つけるためには、相当の時間と手間が必要になります。
もし事業投資をお考えの方は、補助金の診断から申請サポートまでをワンストップで対応している補助金コネクトにお問い合わせください。
「産地連携推進緊急対策事業」の申請手続きは完全オンライン化されました。基本フローは次の通りです。
応募事業者登録(公式サイトより事前登録・ログイン)
申請書類作成・提出(様式:事業計画書/経費内訳/価格・使用要件証明などを添付)
審査・ヒアリング等(事務局)
交付決定通知 → 補助事業実施開始
各公募回ごとに募集期間・様式が異なるため、必ず最新版の様式をダウンロード・確認することをおすすめします。また「同一内容の二重払い」や「交付決定前の契約」は対象外となりますので注意してください。
本事業の目的に照らし、国産原材料の利用効果や地域との連携について、定性・定量の両面からの説得力をアピールすることが重要です。たとえば、以下のような点に注意して計画書を作成してみてください。
原材料の切替・国産化規模が明確である(数値見込み、工程計画を明記)
新商品や国産原材料の利用効果を【市場・消費者へのアピール】と連携(PR方法も記載)
サプライチェーン全体の持続性向上(安定供給モデル、地域の産地発展策等)
効果測定の指標・将来的な安定調達体制を示す
補助対象事業の選定は書面審査と必要に応じたヒアリングにより行われます。事前に専門家からアドバイスを受けることで、書類の不備・失点リスクを大幅に低減できるでしょう。
「国産小麦粉への切替」「地元産原料を使った新商品ブランド化」など、さまざまな現場で採択事例が出ています。
パン製造業者A社:輸入小麦高騰の影響を受け、地元産小麦に切替。産地には専用種苗を持ち込み、収穫機を貸与。開発した新商品を地元スーパーで販売、ブランド価値向上・地域経済循環も達成。
菓子メーカーB社:輸入大豆から国産大豆(地場前処理)へ切替。ライン増設時の設備費・包装資材変更費に補助金活用。
共通点は「産地との密なコミュニケーション(契約栽培や協働生産)」と「消費者への国産アピール」も重視したこと。今後も輸入依存を背景に、こうした地域循環型モデルが拡大する見込みです。
本事業の基本ルールや運用上の注意点を事前に理解しておくことが、補助金活用の成否を大きく左右します。
以下の重要な点を満たしているかチェックしてみましょう。
補助対象経費は必ず「交付決定後の契約・発注以降」の支出のみです
リース・レンタル、建物・車両など転用性の高い設備は対象外となります
グループ企業同士や重複事業申請は不可となります(事業内容の重複にも注意してください)
「国産原材料の取扱量の増加分」のみが補助対象となります(追加・新規分に注意)
Q. 国産原材料ミックス品を使用している場合、切替分の算定方法は? A. 原則、切替差分の定量的把握が必須です。不明な場合は指定率(例:強力系小麦粉→30%)を用いるケースもあります。
Q. 採択後の事業計画内容変更、追加は可能? A. 交付決定後の大幅変更は基本NGです。止むを得ず計画変更が必要な場合は、事務局へ早めに相談するようにしてください。
Q. 共同申請の際の経費区分や責任体制は? A. 連携体ごとに経費内訳を分けて申請します。運用ルールの詳細は最新公募要領を参照してください。
「産地連携推進緊急対策事業」は、食品産業のみならず幅広い関連事業者にとって強力な資金サポートとなる国の補助金制度です。調達リスクをチャンスに変えたい、そんな中小企業のチャレンジを後押しします。
申請準備では「事業計画のブラッシュアップ」と「産地との信頼関係強化」が重要です。公募回によって要件やスケジュールも変動するため、必ず最新情報を確認してください。記事内容や補助金活用に関するご質問など、まずはお気軽にご連絡ください。
補助金コネクトでは中小企業の皆様の補助金申請、資金調達を強力にバックアップしています。機械の購入やシステム構築など、まとまった投資をご検討中の方は使える補助金がないかお調べいたしますので、以下のフォームより是非ご相談ください。