事業再構築補助金では、交付申請から補助金が実際に支払われるまで1年半から2年程度かかることもあります。この期間内にまとまったお金が必要になるケースが多く、金融機関からの資金調達が見込めるかというポイントも審査項目に含まれています。
自社で準備できる手元資金が十分でない場合は、資金調達のためにつなぎ融資の活用がおすすめです。本記事では、つなぎ融資とはどのような制度なのか、つなぎ融資を受けるためのポイントや必要書類とは何なのかなど、事業再構築補助金に役立つつなぎ融資について解説します。
事業再構築補助金におけるつなぎ融資とは、採択を受けてから補助金の支払いに当てたり、補助金では賄いきれない経費をカバーしたりするための資金調達の手段です。
補助金は、補助事業を実施し結果を報告した後で支払われる後払い制度であるため、事業者が保有する資金が足りない場合は、何らかの形で事前に一時的な調達が必要です。補助金の採択を受けたにもかかわらず、必要な資金繰りができないと補助事業を辞退することになってしまいます。例えば、補助金額が4,000万円(補助率3分の2)の補助金を受け取るには、先に6,000万円を払わなければなりません。
採択から補助金を受け取るまでの期間で、一時的に融資が受けられれば、事業者にとって金銭面の心配を少しでも低減できるメリットがあります。つなぎ融資は、事業再構築補助金の申請を積極的に検討できる安心材料にもなるでしょう。
つなぎ融資を検討する際に、選択肢となる主な金融機関は、以下の5つです。各金融機関の特徴やつなぎ融資の難度などについて、順に解説します。
事業者が普段取引先としているメインバンクは、事業者の財務状況を把握しているため、事業再構築補助金についても相談がしやすい金融機関です。事業再構築補助金の必須申請要件として、事業計画について認定経営革新等支援機関(以下:認定支援機関)の確認を受けることが定められていますが、メインバンクが認定支援機関を兼ねていれば、さらにスムーズにつなぎ融資の相談が可能です。
メインバンクから融資を受けられるのは、資金繰りの面で心強い味方となります。つなぎ融資の相談をメインバンクに持ちかけるタイミングは、必ず補助金の申請前とするようにしましょう。
メインバンクからつなぎ融資を受けるのが難しい場合は、日本政策金融公庫の国民生活事業に相談してみましょう。日本政策金融公庫は、小規模事業者や個人企業などを主な顧客としており、融資に対して柔軟な対応が見込めます。
調達を希望する資金が1,000万円以下であれば、融資を受けられる可能性が高い金融機関と言えます。
信用金庫は、地域密着型で事業展開している金融機関です。事業再構築補助金をはじめとする各種公的補助金のつなぎ融資に対して、積極的に取り組むところも増えています。
取り扱っている融資制度の内容や条件は信用金庫ごとで異なるため、融資を希望する信用金庫へ問い合わせてみましょう。
POファイナンスとは、補助金の交付決定情報を担保とする資金調達方法です。事業再構築補助金の申請や各種手続きは、jGrantsを通じて行っており、事業者の情報を電子記録債権化できます。実質無担保で融資が受けられるため、地方銀行を中心として導入する金融機関が徐々に増えています。
POファイナンスの利用は、スタートアップやベンチャー企業でも可能であり、より多くの事業者が申請できるきっかけとなっています。
中小企業技術革新制度とは、日本政策金融公庫が取り扱っている融資方法のひとつです。民間の金融機関に比べ低金利で利用でき、融資を受けやすいのも大きな魅力です。
中小企業や小規模事業者など、資金調達が困難となるケースが多い事業者が広く利用しています。メインバンクでつなぎ融資が受けられない場合は、選択肢のひとつとして検討してみましょう。
つなぎ融資を希望する全ての事業者が、融資を受けられるとは限りません。融資を受けるためには、事業者の金銭面における信頼性の高さが重要なポイントとなります。ここでは、具体的なポイントを5つ紹介します。
自己資本比率や流動比率などが高い事業者は、財務状況が健全であると認められます。自己資本比率が高いと、本来つなぎ融資を受けなくとも投資できる経済能力はありますが、敢えて金融機関から融資を受けることで、ゆとりを持った補助事業実施が見込めます。返済能力の懸念もなく、金融機関側も積極的につなぎ融資を検討してくれるでしょう。
財務状況の判断は、損益計算書の売上総利益や貸借対照表の純資産・負債状況などから判断するのが一般的です。
事業再構築補助金を活用する新規事業以外に、既存事業の収益性が高いことも、つなぎ融資を受ける重要なポイントです。万が一新規事業の収益が見込みより減少しても、既存事業の収益があれば返済の見込みが立つためです。
新規事業はリスクが高く、融資の申し込み時点で確実に返済が見込めるかは不透明な部分もあります。金融機関によっては、確実な返済が見込めない事業者に融資する可能性が低いところもあるのが実情です。既存事業の収益性は、新規事業の収益の懸念をカバーするための重要な要素です。
新規事業で高い収益が見込めるビジネスモデルであれば、事業再構築補助金の審査だけでなくつなぎ融資の審査にも大きく影響します。金融機関は、新規事業に対して厳しい目線で審査をしますが、成功確率が高いと判断されると融資を受けられる可能性が高まります。
金融機関に対して、新規事業の方向性やビジョンなどを積極的に伝え、ビジネスモデルの有益性をアピールポイントにすると良いでしょう。
事業再構築補助金では、設備投資に対する経営者の姿勢も重要です。経営者は、新規事業にかかる設備資金は見通しているものの、月々の必要資金を把握していないケースも散見されます。
経営者が、事業再構築補助金の採択や事業実施に向けて積極的に取り組んでいることは、重要な条件と言えます。これに加えて、金融機関との関係性は、経営者の人間性が影響しているケースもあり、経営者の姿勢次第で融資が前向きに動く場合もあります。
事業再構築補助金を活用して事業を推進するためには、企業側でしっかりと体制を構築することが必要です。つなぎ融資を希望する際には、金融機関に必要書類を提出しますが、ほとんどの金融機関で事業計画書の提出が求められます。計画書の中で、事業再構築の必要性や内容などを具体的に記述し、記載する売上計画を見通しの良い内容にするには、体制の構築やリソースの確保に対する取り組みが重要です。
金融機関に提出する事業計画書は、補助金申請時に作成した計画書とは内容が異なります。事業者側の体制が整っている旨を証明するには、経営者が内容を把握しておくことが融資のカギを握ります。
つなぎ融資を受けるには、主に以下の書類が必要です。
本人確認書
借入申込書
事業計画書
資金使途証明書類
登記簿謄本
確定申告書
企業概要書
決算書
納税証明書
資金繰り表
印鑑証明
一部の書類は、事業再構築補助金の申請書類と重複しています。このため、申請書類と融資の必要書類を一緒に準備するとスムーズです。
具体的に必要な書類は、法人・個人事業主でそれぞれ異なるほか、金融機関によっても異なります。つなぎ融資を希望する金融機関に、必ず事前に問い合わせるようにしましょう。
事業再構築補助金のつなぎ融資は、まとまった資金を準備するのが難しい事業者にとって、資金調達先として活用したい手段のひとつです。現在の財務状況とも照らし合わせながら、事業計画の実現に向けて融資の利用を検討してみましょう。