農林水産省の補助金は、農業・林業・水産業の生産者や関連事業者に対し、事業の成長・経営安定・省力化・新技術導入など幅広い目的で資金支援を行う国の公的制度です。「生産・流通のスマート化」「新規就農・担い手育成」「産地・サプライチェーン強化」「研究開発・イノベーション」「所得安定・災害対策」など、政策目標や社会環境の変化に応じて、補助金の重点分野は年々変化しています。

農林水産省補助金の役割

農林水産省の補助金は、以下のように多岐にわたります。

【設備投資】スマート農業技術活用促進総合対策、産地生産基盤パワーアップ事業、みどりの食料システム戦略推進総合対策
【担い手支援】新規就農者向け資金（農業次世代人材投資資金）、女性・若手・外国人など多様な人材の参入支援
【サプライチェーン】産地連携推進緊急対策事業、食品原材料調達リスク軽減対策事業
【研究・開発】現場ニーズ対応型研究、バイオ・みどりの食料システム戦略関連の研究推進、スタートアップ育成
【所得・安定化】経営所得安定対策、農業共済・収入保険など
【災害・環境】鳥獣被害防止総合対策、災害時緊急支援、環境負荷低減のための省エネ・循環型設備導入支援

種目ごとに補助金の交付形態、対象要件、採択基準、補助率・補助上限額等の詳細が異なります。事業の規模や目的、現状の経営課題に合わせて、数ある補助金から最適なものを選択することが重要です。

令和7年度の重点分野

令和7年度（2025年）は、下記のような分野に重点支援が置かれています。

「スマート農業」への投資（AI・IoT化、省力化・自動化技術導入等）
食品原材料のサプライチェーン強化・産地連携（原材料高騰や輸入リスク対応）
食品・農産物の輸出拡大支援（HACCP等の規格取得、施設整備ほか）
環境・脱炭素対応（持続可能な生産・循環型資材利用、省エネ機材導入）
担い手・人材の確保（新規就農者・若手・女性活躍推進等）
研究・イノベーション分野への集中投資

出典：農林水産省補助事業一覧

農林水産省の主な補助金

農林水産省では多様な補助金制度が用意されていますが、ここでは事業者が特に活用しやすい制度とそのポイントを解説します。

スマート農業技術活用促進総合対策

「スマート農業技術活用促進総合対策」は、AIやICT（情報通信技術）、自動化ロボット機器など最先端技術を活用し、作業負担・コストの削減、生産性の向上、労働力不足の解消などを一体的に進める最新支援策です。対象事業にはスマート農業技術の「開発・実証」（たとえばAI制御の農機導入やデータ連携クラウド構築）、「普及啓発・教育」（講習やマニュアル作成等）が含まれます。原則として中小企業・農業法人・自治体・研究機関など幅広い事業体が対象となり、補助率や上限額は事業内容ごとに変動します。

参考：農林水産省

産地連携推進緊急対策事業

「産地連携推進緊急対策事業」は、原材料高騰や地政学的リスクが高まる中、食品関連事業者と産地をつなぎ、「国産原材料の調達量増加」「安定供給体制の強化」を目的とした補助金です。主に食品製造・加工事業者や団体が産地と密接に連携し、原材料の安定調達や共同設備投資、新商品の開発・PR、機械の購入や種苗提供等に取り組む場合に活用されます。

補助率は最大1/2（中小企業などは1/2以内）、1件あたり2億～3億円の大型補助も可能です（3億円は産地支援取組を含む場合）。申請の際は「連携計画」や「価格要件」（例：申請前3ヶ月で輸入原材料の平均価格が過去3年の平均の120％を超える等）を満たす必要があります。

参考：産地連携推進緊急対策事業

新規就農・人材育成支援

新規就農者・49歳以下の若手を対象に、「就農準備資金」「経営開始資金」を支給する独自制度「農業次世代人材投資資金」も人気です。

就農準備資金…農業大学校等で研修を受ける間、月12.5万円×最長2年（合計最大300万円）
経営開始資金…経営開始後3年間、月12.5万円（同上最大450万円)

交付には自治体・農業委員会等との協議を要し、申請時に「研修計画書」「経営計画書」等の書類提出が必要です。

参考：農林水産省就農準備資金・経営開始資金

研究開発・スタートアップ支援

農林水産研究に関して、現場ニーズ対応型研究・ゲノム編集やバイオ等のイノベーション研究・スタートアップ育成など、専門機関や大学・民間企業・ベンチャーまで幅広く補助しています。新技術による生産コスト削減、新品種・新加工食品の開発などが主な対象です。

スタートアップ支援では「段階的支援制度」やVCと連携した伴走型メンタリング、シード段階の研究費補助（最大1,000万円/件）もあります。

参考：e-Gov 農林水産省補助金、給付金、融資、税制等

その他の注目制度

上記で紹介したほか、所得安定や設備投資等を支援する以下の補助金も提供されています。詳細は各リンク先公式ページをご覧ください。

経営所得安定対策（首都圏産米や麦・大豆等の価格変動リスク補填給付）
加工施設再編等緊急対策事業
輸出促進施設整備事業（HACCP対応工場化・加工ライン新設）
環境負荷低減型設備補助（有機・脱炭素推進関連等）
鳥獣被害・災害総合対策補助

補助金活用のメリットと活用事例

農林水産省補助金の活用は、「コスト削減による経営改善」だけでなく、「新事業・新商品へのチャレンジ」や「地域資源を生かしたブランド強化」にも大きな効果があります。

コスト削減・資金調達メリット

補助金の一番のメリットはコスト削減になる点です。補助金が支給されることにより、事業者の実質的な負担額が大幅に軽減できます。また、補助金を受給することにより金融機関評価が上がり、融資やその他の支援も受けやすくなるというメリットもあります。

新設備・システムの導入を自己資金の半額で実現（補助率1/2の場合）
コロナ禍・価格高騰での資金繰り安定化
設備投資や新商品の開発リスク低減
金融機関や自治体も補助金活用を加点評価
制度によっては「補助金＋融資」の組み合わせも可

事業成長・イノベーション事例

農林水産省の補助金の実際の活用事例としては以下のようなものがあります。

「地元産米粉の6次産業化商品開発」（産地連携事業＋新商品開発）
「AIクラウド農業管理システムの導入」（スマート農業技術活用促進総合対策）
「新規就農者が経営安定まで資金サポートを受けつつ地域おこし参画」（人材投資資金）

その他、業種・地域・規模問わず多数の成功例が報告されています。

補助金活用のよくある課題

初めて補助金申請を行う場合、その独自ルールに戸惑う方も多くいらっしゃいます。以下によくある課題とその対策の概要を記載します。

どの補助金が使えるのか分からない ⇒ 検索サービスで調査したり、行政相談サポートや専門家への事前相談がおすすめです。補助金コネクトでは、3分で使える補助金を診断する「AI補助金診断」をご提供しています。無料ですので、よろしければご利用ください。
申請書の作成が難しい ⇒自治体・農業士・商工会での無料セミナーや申請サポート事業があります。補助金コネクトでもご支援していますので、お気軽にご相談ください。無料相談も行っています。
採択されるか不安 ⇒事業計画において「費用根拠の納得性」・「事業の社会的意義」・「財務基盤の安定」の三点が審査で重視されます。具体的な記載方法もアドバイス可能です。

使える補助金を無料で診断する