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休業手当とは?休業補償との違いや支給額の計算方法を解説

休業手当は、企業側の都合によって労働者を休業させたときに、労働基準法に基づいて支給する手当です。本来、企業は労働の対価として賃金を支払っていますが、このようなケースにおいては、労務の提供が行われていなくても手当として支払う必要が生じます。

本記事では、休業手当の概要や休業補償との違いなどについて解説します。休業手当を支払う必要があるケースなどについてしっかりと理解を深めていきましょう。

休業手当とは

休業手当とは、企業側の都合で労働者を休業させた場合に、労働基準法に基づいて、企業が労働者に対して支給する手当です。休業手当の目的や対象者について説明しながら、休業手当の概要を紹介します。

休業手当の目的

労働基準法で休業手当が定められている目的は、労働者の最低限の生活の保障を図ることです。

本来、企業である使用者側は労働の対価として賃金を支払うため、急病による欠勤など労働者都合で休業する場合は基本的に賃金を支払う必要はありません。しかし、使用者都合で一方的に休業させられ労働者の収入が減少してしまうと、労働者やその家族の生活が困窮するおそれがあります。こういった事態を防ぎ、労働者に一定の収入を保障するために定められたのが休業手当制度です。

なお、労働基準法第26条で定められている「使用者の責に帰すべき事由」、つまり企業側の都合として認められるものには、具体的に次のような事由が挙げられます。

  • 経営不振による休業

  • 設備や機械の不備による休業

  • 資材不足による休業

  • 作業に必要な労働者不足による休業

  • 電気や燃料の供給不足による休業

  • 監督官庁の要請による休業

これに対して、例えば健康診断の結果に基づき労働者に休業指示した場合などは、「使用者の責に帰すべき事由」には該当せず、休業手当の支給対象とはなりません。

休業手当の対象者

休業手当の支給対象者は雇用形態によって制限されず、すべての従業員が対象となります。つまり、正社員だけでなく、次のような雇用形態の方も休業手当の支給対象です。

  • 時短勤務

  • アルバイト・パート

  • 契約社員

  • 派遣社員

派遣社員の場合、派遣先ではなく派遣元との雇用契約であるため、雇用関係のある派遣元企業に休業手当の支払義務があります。仮に派遣先の都合で休業を命じられたとしても、派遣先に休業手当の支払い義務は原則としてありません。

休業手当の計算方法

休業手当の支給額について、労働基準法では「平均賃金の60%以上」と定めています。平均賃金とは基本給のことではなく、次の計算式で求めます。

平均賃金 = 事由の発生した日以前の3ヵ月間の賃金総額(総支給額) / 同3ヵ月間の総日数(暦日数)

計算のベースとなる3ヵ月間は、事由が発生した日の前日から遡って3ヵ月間です。ただし、賃金締切日がある場合には直前の賃金締切日から遡って3ヵ月となります。なお、該当の3ヵ月間に次の期間が含まれる場合、その賃金額と日数は控除して計算します。

  • 業務上の負傷または疾病での療養休業期間

  • 産前産後休業期間

  • 使用者の責任による休業期間

  • 育児・介護休業期間

  • 試用期間

また、事由発生日以前の勤務期間が3ヵ月に満たなかった場合、入社から直近の賃金締切日までの賃金総額で計算します。

賃金総額に関しては、通勤手当や時間外手当、年次有給休暇取得分、皆勤手当なども含まれます。ただし、傷病手当や見舞金、結婚手当、退職金などは含まれません。

休業手当と休業補償の違い

休業手当と混同されやすいものとして、「休業補償」があります。休業手当が企業側の都合により休業させる場合の給与補填であるのに対し、休業補償は業務中に生じた病気や怪我の療養を理由に労働者が休業する場合の補償です。

休業補償は、休業開始4日目から「平均賃金の80%」が労災保険より支給されます。なお、休業開始から3日間を待期期間といい、この期間は休業補償の支給対象外となります。待期期間中は、企業が平均賃金×60%を休業補償として支払う必要があります。

また、所得税の扱いにおいても違いがあります。休業手当はあくまでも賃金であるため、給与所得として所得税の課税対象となります。一方、休業補償は賃金ではなく補償にあたるため、課税の対象とはなりません。

法律で定められている休業の種類

ここまで、「使用者の責に帰すべき事由」による休業時に支給する「休業手当」について主に説明してきました。一方、労働者が自身の都合で休業せざるを得ない場合もあります。ここでは、法律で定められている休業制度のうち、主な4つの制度について紹介していきます。

業務上の負傷・疾病の療養のための休業

労働者が業務中または通勤中の負傷や疾病により労働できず療養が必要となった場合、労働基準法に基づいて休業できます。この休業期間中に会社から賃金の支払いがなければ、労災保険から休業補償(業務災害の場合)、または休業給付(通勤災害の場合)を受け取れます。

「3.休業手当と休業補償の違い」で説明したとおり、支給対象となるのは休業4日目以降です。休業初日から3日目までの待期期間は労災保険からの支給はないため、企業側が休業補償を支払う必要があります。なお、通勤災害などの場合には、待期期間中の補償責任は法令上ありません。

産前・産後休業

女性労働者は、産前と産後に休業することが労働基準法65条で認められており、この休業を、それぞれ産前休業・産後休業といいます。原則として、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)前から産後8週間まで休業が可能です。

労働基準法では、産前産後休業期間における賃金の支払いに関する規定はないため、基本的に給料は支払われません。ただし、労働者本人が健康保険の被保険者で、一定条件を満たしていれば、加入している健康保険組合等から「出産手当金」や「出産育児一時金」を受け取れます。

また、産前産後休業期間中は、社会保険料の支払いが免除されます。社員だけではなく、会社側も免除される仕組みとなっています。

育児休業

育児休業は、原則として1歳に満たない子どもを養育する労働者が、養育に専念するために育児・介護休業法に基づいて休業できる制度です。一定の条件を満たした場合は、最長2歳まで延長でき、1人の子どもにつき父・母それぞれ2回に分けて取得することが可能です。

労働者本人が雇用保険に加入しており、一定の要件を満たせば、育児休業中は育児休業給付金が支給されます。また、社会保険料の支払いも、産前産後休業期間中と同様に免除されます。

介護休業

介護休業は、育児休業と同じく育児・介護休業法で定められており、要介護状態にある家族の介護のために休業できる制度です。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

労働者本人が雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす場合は、介護休業期間中に介護休業給付金を受け取れます。ただし、社会保険料が免除される育児休業と違って、介護休業の場合は、社会保険料免除の仕組みがありません。そのため、介護休業期間中も保険料の納付が必要となります。

まとめ

休業手当は労働者の最低限の生活保障を目的に、労働基準法で定められている制度です。経営不振や設備・機械の不備など企業側の都合で労働者を休業させる場合には、雇用形態に関わらず労働者に対して企業が休業手当を給与として支給しなければなりません。

対して、休業補償は主に業務上に生じた病気・怪我を理由に労働者がやむを得ず休業する場合に労災保険から支給される補償です。「給与」と「補償」という性質の違いから、課税の取り扱いも両者では異なります。

スムーズな事業継続のためには、労働者との良好な関係を維持することも重要なポイントです。そのためにも休業手当の支給事由が発生した際に備えて予め理解を深め、必要になったときにしっかりと対応できるようにしましょう。

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