日本でも急速に進む技術革新や、ビジネスモデル・産業構造などの変化に対応するために、リスキリングを通じて新しい知識やスキルを学ぶ人が増えています。資格の取得は、個人のスキルを高めるとともに、学びに対するモチベーションを保つためのリスキリングの方法です。資格を保有していることで、一定水準のスキルがあることを証明でき、企業に対するアピールポイントにもなります。
今回は、リスキリングにおすすめの資格を分野別にご紹介します。これからリスキリングを始めようと検討している方は、参考にしてみてください。
リスキリングとは、企業が主体となって従業員に新しい知識やスキルの習得を促し、技術革新やビジネスモデルの変化に対応する取り組みを指します。2020年に開かれたダボス会議でリスキリング革命が発表されたことや、岸田総理が所信表明演説でリスキリングに触れたことなどから、注目を集めている取り組みです。
近年では、DX化に向けたスキル習得を目的とするリスキリングが増えています。リスキリングの効果を発揮するためには、従業員本人の学ぶ意識も重要です。経済産業省の定義の中で、「必要なスキルを獲得する/させること」と表記されているのは、企業と従業員の双方の視点から表現されているためです。
リスキリングの先駆者となったのはアメリカの企業であり、日本でも少しずつ浸透しています。スキルを習得するだけでなく、スキルを使えるようにするのが、日本企業にとっての喫緊の課題です。リスキリングの導入により、社員のモチベーション低下や意欲向上につながります。また、離職率が低下することで、人材採用および育成にかかるコストも抑制できます。
次の章から、リスティングにおすすめの資格を分野別に紹介します。
最初に、OA(Office Automation)・プログラミング分野でリスティングに役立つ資格を見てみましょう。
Word、Excel、PowerPointなどのMicrosoftOffice製品をどのぐらい使いこなせるか、スキルを証明する資格です。国際資格のひとつとして、パソコンスキルを客観的に証明でき、試験合格により認定されたスキルは世界共通で通用します。
マクロ・VBAスキルにより、業務を効率的にこなすスキルを客観的に証明できる資格です。作業の自動化や大量データの一括処理などができ、業務効率の向上が目指せます。試験内容は実務で対応される機能やプログラムコードを重視しており、実務力が習得できます。
汎用プログラミング言語「Python」の専門知識を問う試験です。Pythonは、AI分野の開発で必須とされており、多様性を持ちながら初心者でも学びやすい言語です。試験は1年中受験でき、資格区分は「基礎」「データ分析」「実践」の3種類があります。
なお、プログラミングの実務スキルを身につけたい方はプログラミングスクールを探してみるのもおすすめです。
参考:プログラミングスクールおすすめ比較ランキング23選【社会人向け】|サクフリブログ
次に、IT・情報セキュリティ分野でおすすめの資格をご紹介します。
ITに関する基礎的な知識を持っていることが証明できる国家資格です。AIやビッグデータなどの新しい技術や、アジャイルなどの新しい手法に関する知識だけでなく、経営全般・IT・プロジェクトマネジメントなど幅広い知識が求められます。
国家試験のひとつ「情報処理技術者試験」の新しい試験区分として行われています。組織の情報セキュリティを確保し、サイバー攻撃などの脅威から組織を守るための基本的なスキルを認定する試験です。情報漏洩のリスク低減・トラブル発生時の被害を最小限に食い止める・安全で積極的なIT利活用の実現などが目的です。
ITに関する高度な知見を活用し、ITの活用・戦略により企業経営の課題の明確化や業務効率化などを目指す試験です。IT系資格の中でもレベルが高く、高度情報技術者試験に含まれます。ITストラテジストの資格を取得すると、厚生労働省が認める専門職として認定され、これは医師や弁護士・税理士などの士業と同等とされています。
AWSとは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングをさしています。AWSを活用したクラウドの専門知識や技術が問われる資格です。12種類の資格に分類されており、取得するとAWSの知識を持っていることが証明できます。4つのレベルに分かれているため、自分のレベルに合わせて受ける試験を検討しましょう。
続いて、AI・データサイエンス分野でおすすめの資格をご紹介します。
データサイエンスに含まれる、データの加工・分析、機械学習、数理統計学、エンジニアリング、ビジネスなどの幅広い知識を問われる検定です。データサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力の3カテゴリーに分け、データサイエンティストに必要なスキルが問われます。他にも、一般企業の社員が知っておきたいデータリテラシーレベルもあります。
ディープラーニング(深層学習)の基礎知識を事業に活用する知識やスキルを持っているかを問われる検定です。AIを事業に活用するために必要な知識を身につけることができます。受験はオンラインで実施され、自宅での受験が可能です。
Excelを使用したデータ分析が正確に理解できるか・応用できるかといった実践能力を評価する資格です。データ分析スキルはビジネス実務で必須であり、統計知識とデータ分析機能に分類されます。基礎レベルと上級レベルがあり、それぞれ求められるスキルが異なります。
統計に関わる知識や活用力を評価する試験です。全国統一試験であり、統計を元にして科学的に問題を解決する能力は世界的にも広く認められています。データサイエンティストの登竜門として、受験者が増えています。
マーケティング分野では、どのような資格を取っておくとリスキリングに役立つのでしょうか。
内閣府が認定する試験であり、マーケティング能力を測定できます。国家資格ではなく民間資格となっていますが、マーケティング業界において高い知名度を誇る試験です。1級から3級に分かれ、3級は初心者・2級は中級者・1級は上級者としての実力が問われます。
アクセス解析を始めとするウェブ解析データの活用によりデジタルマーケティングを実施し、事業の成果を上げる人材を認定する試験です。データを元にした正しい判断ができるウェブ解析ツールの習得を目的としています。
Googleアナリティクスを体系的に学び、分析ツールを使ったアクセス解析やマーケティング情報の分析方法などを学ぶ検定です。マーケティング戦略に欠かせない検定であり、運営や活用のアドバイスができるようになります。
続いて、マネジメント分野においてリスキリングに役立つ資格をご紹介します。
管理職(マネージャー)を目指す人にとって必須の資格であり、管理職となる土台作りのサポートをするための検定です。あらゆるマネージャーが身につけるべき基礎知識を効率的に習得し、業務改善やキャリア開拓に役立ちます。
社員のメンタルヘルスケアに必要な知識や対処方法を習得する試験です。仕事に関するストレスを抱えることで、心の不調を訴える人が急増しています。この状況から、職場において、心の健康管理(メンタルヘルス・マネジメント)への取り組みが重視されています。
プロジェクトの進行を管理する「プロジェクトマネジメント能力」を持っていると証明できる国際資格です。マネジメントに関する知識に加え、実務的な内容も問われます。習得した後は、3年ごとの更新が必要です。
企業の運営に欠かせないWeb制作に関する資格には、どのようなものがあるのでしょうか。
ウェブサイトの制作に必要不可欠となる、Webデザインの知識・実務能力が問われる試験です。Webデザイナー唯一の国家資格であり、試験は1級から3級でそれぞれ学科試験と実技試験が実施されます。
HTMLやCSSなどの、プログラミングやデザインに関する知識が問われ、Webクリエイターとしての能力を測るための試験です。スタンダードとエキスパートの2種類があり、しっかり勉強すれば合格できる確率は高いでしょう。
Adobe製品の利用スキルを証明する資格です。Photoshop、illustrator、PremiereProのアプリケーションごとに試験科目が分かれており、試験終了直後に合否結果がコンピューター画面に表示されます。
リスキリングの中でも比較的取り組みやすい語学の資格には、どのようなものがあるのでしょうか。
日本でおなじみの実用英語技能検定であり、5級から1級まで7つの級に分かれています。従来型の英検に加え、コンピューターで受験するS-CBTも実施されています。ビジネスにおいてグローバル化が進んでいる日本では、英語が話せることが必須条件である仕事も増えています。リスキリングを目的とした資格取得であれば、1級合格を目指していきましょう。
英語を使ったビジネスコミュニケーション能力を幅広く測定する試験であり、合格・不合格を判定するのではなく、結果がスコアで表示されるのが特徴です。5種類ある試験の中で最も受験者数が多いのが、「TOEIC(R) Listening&ReadingTest」です。高スコアを取得するとキャリアアップが見込めます。
海外での仕事や移住・留学を目指す人であれば、TOEICよりもTOEFLの方が英語力の証明に活用できます。実践的な英語が身につき、世界へ羽ばたくステップアップに役立ちます。コンピューター受験が可能であり、読む・聞く・話す・書くの4技能がバランスよく測定可能です。
ここまで紹介した資格以外にも、リスキリングに役立つ資格は数多く存在します。その中から、人気の高い資格をご紹介します。
「家計のホームドクター®」として、家計に関わるお金(金融・保険・不動産・税制・年金など)についての幅広い知識を持ち、将来の夢が叶うようサポートするお金の専門家です。FP3級はFPの入門試験であり、初めて学ぶ人でも取り組みやすい内容になっています。
日本で実施される簿記検定の中で、最も知名度が高い検定です。簿記検定は、日商・全商・全経の3つがありますが、一般的に簿記検定といえば、この日商簿記検定をさしています。実用性に優れていることから、就職や転職に有利とされています。
宅建士とは、不動産取引の専門家を証明する国家資格です。不動産取引における重要事項の説明や重要事項説明書面(35条書面)への記名は、宅建士のみに認められている独占業務となっています。宅建士として仕事をするには、試験の合格に加え、2年以上の実務経験もしくは実務講習の修了が必要です。
国民の生活に最も身近な法律家と言われます。書類作成(官公署への提出書類や、事実証明・権利義務に関するもの)、許認可申請の代理、相談業務の3つが大きな仕事です。合格率は例年10%と難度が高い資格試験ですが、正しい対策により誰でも合格を狙えます。
企業において、労働・社会保険・年金などの相談に寄り添い、企業の成長に必要不可欠な人材に関する専門家として業務を行います。社労士試験の合格率は平均で6%から7%ととても低く、合格を目指すにはスキマ時間を有効活用して全科目をまんべんなく勉強することが必要です。
経営課題を抱える中小企業に対して、診断や助言をする専門家です。適切な活用支援のための専門的知識が求められます。中小企業診断士試験は、1次試験、2次試験(筆記・口述)、実務補習・実務従事の3段階があります。
今回は、リスキリングを目指す人におすすめしたい資格を紹介してきました。資格の取得を目的にするのではなく、取得した資格を活かして自らのスキルを高め、幅広い仕事に役立てていきましょう。