不動産投資の利回りは、資産形成を目指す中小企業や個人投資家の方にとって最も重要な指標の一つです。
しかし、表面利回りや実質利回り、想定利回りといった複数の用語が存在し、その違いを正確に理解するのは意外と難しいものです。
事実、「物件の広告に書かれている利回りを鵜呑みにして失敗した」「想定よりも実際の収益が低かった」という声も多く聞かれます。
この記事では不動産利回りの基礎から、実際の計算方法、活用事例、そして資金調達や事業成長との関わりまで、日本の最新事例や統計データに基づき、専門的かつ親しみやすく解説します。
不動産投資における「利回り」とは、物件価格に対して1年間でどれだけの収益(リターン)が得られるかを示す指標です。株式や投資信託でいう「年利」に相当し、物件の収益性や投資回収年数を直感的に把握できます。
参考:不動産投資とは?仕組み・メリット・デメリットを初心者にもわかりやすく解説
利回りは次の式で計算されます:
利回り(%)=年間収益 ÷ 投資金額 × 100
たとえば、1,000万円の物件を利回り10%で運用すれば、年間100万円のリターンが得られ、投資回収まで約10年かかる計算です。つまり、利回りは次のような意味を持ち、投資判断の基準になります。
利回りが高い:回収が早く、収益性が高い
利回りが低い:回収が遅く、収益性が低い
不動産の利回りには主に3つの種類があります。それぞれの意味と計算方法を理解しておきましょう。
種類 | 計算式 | 概要 |
|---|---|---|
表面利回り(グロス利回り) | 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 | 広告などで一般的に掲載。経費や空室を考慮しない「理想値」に近い数値。 |
実質利回り(ネット利回り) | (年間家賃収入 − 年間諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100 | 管理費・税金・修繕費などを反映した「実際の手取り」に近い現実的な収益性。 |
想定利回り | 満室時の年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 | 空室がないと仮定した上限シミュレーション。新築や販売初期に多く使われる。 |
特に、表面利回りと実質利回りは混同されやすいため注意しましょう。誤って理解すると、実際に手元に残る現金に大きな違いが出てしまうことがあります。資料等に記載されている利回りが上記のいずれに該当するかはしっかりと確認するようにしましょう。
日本における利回り相場は、エリア・物件種別・築年数などによって大きく異なります。
地域 | 区分マンション | 一棟アパート | 一棟マンション |
|---|---|---|---|
東京23区 | 約3.0% | 約3.0〜8.0% | 約6.8% |
首都圏主要都市 | 約4.5% | 約8.0% | 約7.6% |
地方都市 | 約5.5% | 約9.0〜13% | 約10.0〜15% |
都心部・新築は、利回りは低いですが安定性・資産価値が高いとされます。投資の初心者や多少の経費を払ってでも安定した経営を行いたい方には向いています。資産価値が高いため、融資を受けやすいのもポイントです。
一方で地方・築古物件は高利回りが期待できますが、空室や修繕リスクが高いと言われています。独自のノウハウや信頼できる管理会社、施工会社がいる場合にはチャレンジしてみるのも良いでしょう。
利回りの「最低ライン」は投資目的や物件によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
物件タイプ | 理想利回りの目安 |
|---|---|
区分マンション(新築) | 約4%前後 |
区分マンション(中古) | 5〜8% |
一棟マンション | 6〜10% |
実質利回りで5%以上が一つの目安とされますが、賃貸需要・維持費・修繕・ローン金利・出口価値などを含めた総合シミュレーションが不可欠です。購入を検討する前には不動産会社のシミュレーションを鵜呑みにせず、必ず手元で計算してみるようにしてください。
ここでは、具体的な不動産利回りの計算方法について見ていきましょう。利回り計算において重要なのは、どのような前提を置くか、ということです。例えば各部屋の家賃はいくらが妥当か、空室率はどのくらいか、現状回復に必要な費用はどの程度か、といった前提を固める必要があります。この前提は物件の種類やエリアによっても異なるため、必要な情報は購入前に確認しておきましょう。
ある程度前提が固まったら、以下のステップで利回りを計算します。
物件価格+購入時諸費用を合算(仲介手数料・登記費用・税金など)
年間家賃収入を算出(満室想定 or 現在の入居状況)
年間経費(管理費・税金・保険など)を加味
表面利回り=家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
実質利回り=(家賃収入 − 経費)÷(物件価格 + 諸費用)× 100
新築区分マンション
物件価格:5,000万円
年間家賃収入:240万円
購入時諸費用:500万円
管理費:24万円
↓↓↓
表面利回り:240万円 ÷ 5,000万円 × 100 = 4.8% 実質利回り:(240万円 − 24万円)÷(5,000万円 + 500万円)× 100 = 3.9% |
中古区分マンション
物件価格:3,500万円
年間家賃収入:204万円
諸費用:270万円
管理費:24万円
↓↓↓
表面利回り:204万円 ÷ 3,500万円 × 100 = 5.8% 実質利回り:(204万円 − 24万円)÷(3,500万円 + 270万円)× 100 = 4.7% |
高利回りにはリスクも伴います。以下を確認しておきましょう。
築年数が古く修繕費が高額
立地・管理状況が悪く空室リスクが高い
家賃設定が不自然(短期的なサクラ入居など)
再建築不可・違法建築・瑕疵あり物件
チェックポイント:
メンテナンス履歴
空室期間・入居率
法的リスク(用途地域・再建築可否)
利回り算出根拠(表面/実質)
低利回りでも、以下に当てはまる場合は長期安定型投資として有力です。
人気エリア・資産価値が高く下落しにくい
低金利ローンが利用できる
メンテナンスが行き届いている
出口戦略(売却・転用)が描ける
特に、事業承継や資産形成を重視する経営者には、利回りよりも安定性・資産保全性の高さが重要となります。
近年、中小企業や個人が少額から利回り投資を行えるクラウドファンディング型の不動産投資やソーシャルレンディングが新たな潮流として広がっています。これにより、資金調達の手段が多様化するだけでなく、余剰資金の運用先としても注目され、事業者・投資家双方にとって選択肢が拡大しています。
例えば以下のような案件が出ています。
渋谷一棟ビル案件:10.5%
南青山区分店舗案件:8.9%
特に、中小企業が決算期に一時的に生じる現預金を短期の利回り商品に充てることで、資産効率を高めるとともに、節税対策と組み合わせた活用事例も見られます。運用期間が数ヶ月から1年程度と短期で設定されることが多いため、流動性や柔軟性が高く、機動的な資金運用が可能です。
さらに、オンライン上での詳細な情報開示や収益シミュレーション機能が整備されており、投資家がリスクやリターンを事前に把握しやすい仕組みが提供されています。案件によっては優先劣後方式や損失補填スキームなど、リスクを軽減する仕組みも導入されており、安心感を持って投資に参加できる環境が整いつつあります。
参考:不動産クラウドファンディングとは?仕組みとメリット、リスク、おすすめ活用術を解説
不動産投資の利回りは、事業資金・補助金活用・承継戦略とも深く関係します。
不動産投資の分野でも、近年は各種補助金を活用した新しい取り組みが広がっています。特に事業用建物のリノベーションでは、や省エネ補助金を組み合わせることで改装費用を抑えつつ、物件価値や家賃収入の増加を実現するケースが増えています。これにより、投資回収期間を短縮し、利回り向上につなげることが可能です。
また、デジタル化や新サービス導入に関する補助金を活用すれば、テナントの集客力・利便性が向上し、稼働率の改善を通じて実質利回りを押し上げる効果も期待できます。
例えば、キャッシュレス決済やスマートロック導入などは補助対象となることが多く、オーナー・入居者双方にメリットがあります。
さらに、補助金を活用した不動産投資は、他事業との分散運用の観点でも有効です。自社の事業拡張資金と不動産収益を組み合わせて運用することで、収益の安定性が増すとともに、金融機関やベンチャーキャピタルへのアピール度も高まります。結果として、資金調達や事業提携の可能性を広げる効果が期待できるのです。
中小企業が事業承継や多角化を検討する際、不動産を活用した資金計画と利回り戦略が効果的です。所有する物件からの家賃収入を次世代経営者への承継資金や福利厚生原資に充てることができ、さらに建物の稼働率向上や一時的な売却益を「成長投資や人材開発」に活用することで、事業の持続的成長に寄与します。
加えて、経営刷新後には社有物件の一部をクラウドファンディングで資金化することで、自己投資比率を高め、実質利回りを4.5%から8.3%へと改善する戦略も可能です。
不動産の利回りは、資産価値・収益性・回収期間を直感的に把握できる強力な指標です。「表面」「実質」「想定」の違いを理解し、数字の裏にあるリスクと前提条件を見抜くことが大切です。さらに、補助金・事業承継・資金調達戦略と組み合わせることで、単なる投資を超えた経営資源としての不動産活用が可能になります。
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