近年、オンライン販売は企業にとって不可欠なチャネルとなり、ECサイトの構築がビジネス成長を大きく左右しています。その一方で、ECサイトを自社で一から構築しようとすると専門知識やコスト・運用リソースの面で壁にぶつかることもしばしば。そこで注目されるのが、必要な機能を備えたECサイト構築サービスです。
本記事では、ECサイト構築サービスの主要なタイプや、メリット・選び方、おすすめの17製品・会社を詳しく解説します。自社のEC事業を効率良く成功に導くためのヒントにお役立てください。
ECサイト構築サービスとは、オンラインショップを効率良く立ち上げるためのソフトウェアやクラウドサービスの総称です。自社で一からECサイトを開発・運営するのは大きな労力とコストを伴いますが、ECサイト構築サービスを活用すれば、短期間かつ比較的低コストでの実装が可能になります。ネットショップで必須となるカート機能や在庫管理、決済システム、デザインテンプレートなどがあらかじめ用意されているため、初心者や専門知識のない担当者でもスムーズにサイトを公開できる点が大きな魅力です。
また、EC市場の拡大に伴い、ECサイト構築サービス・ツールには多様なプランや機能が用意されるようになりました。たとえば、個人向けの低価格プランや小規模事業者に特化したASP型サービス、独自のブランディングが必要な中規模企業向けのパッケージ型ツール、大規模サイトやカスタマイズ性を求める企業向けのフルスクラッチ型など、選択肢は実に豊富です。ここでは、そうしたさまざまなECサイト構築サービスを活用するうえでの利点やポイントを詳しく見ていきましょう。
ECサイト構築サービスの選び方は、以下の5つのタイプに大きく分かれます。以下ではタイプごとの特徴を表にまとめています。
<ECサイト構築サービスの主な種類>
タイプ | 代表例 | コスト感 | カスタマイズ性 | 開発期間 |
|---|---|---|---|---|
フルスクラッチ | 大手企業の独自開発 | 数千万円~ | 非常に高い | 長期(半年~数年) |
パッケージ | ecbeing、W2 Unified 他 | 数百万~数千万円 | 高い(追加開発で拡張可能) | 中期(3~6ヶ月) |
ASP | BASE、カラーミー | 月額数千円~ 売上手数料 | 低~中(サービス依存) | 短期(1~2ヶ月) |
クラウドサービス(SaaS) | Shopify、futureshop | 月額+オプション費用 | 中~高(アプリ活用や追加開発で自由度) | 短~中期(1~3ヶ月) |
ECサイト構築代行 | 各社が個別に提供 | 依頼内容に応じ変動 | 依頼先の会社による | 要件次第 |
上表のように、ECサイト構築の形態は多岐にわたり、企業の予算や市場規模、運営体制によってどのタイプが最適かは変わります。小規模でまずはスモールスタートしたい場合はASPやクラウド型が良いでしょう。一方で、年商が大きくなるほど相応の拡張性やカスタマイズが必要になるため、パッケージ型やフルスクラッチによる独自開発を視野に入れる必要があります。社内に技術リソースがない場合はECサイト構築代行サービスを利用するのも一つの手です。
EC構築ツールには、以下の機能が標準搭載されているケースがほとんどです。
機能名 | 機能概要(主なポイント) |
|---|---|
カートシステム | ユーザーが商品を選んでチェックアウトまで行うための fundamentalな機能 |
決済方法 | クレジットカード・コンビニ・銀行振込・電子マネー・後払いなどに対応 |
商品・在庫管理 | 商品登録・在庫数のリアルタイム表示・SKU管理などが可能 |
顧客管理 | 購買履歴・個人情報を紐づけて分析し、顧客ロイヤルティ施策に活用 |
デザイン編集 | テンプレートやHTML/CSS編集などによるサイトの外観カスタマイズ |
集客機能 | クーポン発行、ポイント、SNS連携、メルマガ配信、SEO最適化など |
アクセス分析 | PV、CVR、離脱率や売上解析などのダッシュボードまたは外部連携 |
ECサイト構築ツールは、上記機能を包含しながらも、サービスによって使い勝手や追加機能が大きく異なります。したがって、自社のビジネス規模や必要機能に応じて選ぶことが必要になります。
参考:ECサイトの構築方法とは?手順や費用、乗り換え時の注意点を解説
ECサイトを立ち上げるうえで重要なのが「どの構築サービスを使うか」です。サービスにはさまざまな種類があり、目的や規模によって最適な選択が異なります。以下では、選定時のポイントを大きく2つに分けて解説します。
ECサイト構築サービスは導入形態によって費用構造が大きく異なります。サービス形態ごとの導入コストと運用コストの比較は以下の表をご覧ください。
導入形態 | 初期費用 | 月額費用 | 販売手数料 |
|---|---|---|---|
ASP/クラウド型 | 0円~10万円 | 0円~数万円 | 売上に対して数% |
パッケージ型 | 数百万円~ | 保守費やサーバー費用 | 基本的になし |
オープンソース型 | 0円~要見積 | サーバー費や保守費 | 基本的になし |
フルスクラッチ型 | 数千万円~ | 開発体制に応じ変動 | 基本的になし |
上表を見ると、ASP/クラウド型は初期費用を抑えやすく、月額や販売手数料を支払う構造になっています。対してパッケージ型やオープンソース型、フルスクラッチ型は初期費用が高いもののランニングコストを低く抑えられる傾向にあります。
また、サービスによって機能やサポート内容が異なるため、単純な費用比較だけではなく「サイト構築後の運営負担」「売上規模が拡大したときの課金形態」も含めて総合的に検討しましょう。例えば、売り上げに応じて手数料がかかるASPでは、売上が増えるほど手数料負担も比例して大きくなり、月額定額制のサービスに比べて割高になる場合があります。
ECサイト構築サービスそれぞれのカスタマイズ性によって、将来の運用や拡張の容易さも変わります。以下に、カスタマイズ性に影響する要素を整理しました。
カスタマイズ対象 | 具体例 |
|---|---|
デザイン・UI | テンプレート編集、HTML/CSS編集、レイアウト変更など |
決済・物流連携 | クレジットカード以外に後払い・代引き・海外決済などへの対応 |
マーケティング機能 | メルマガ連携、クーポン機能、レビュー管理、ポイント機能など |
外部サービスとの連携 | MAツール、在庫管理システム、会計システムとの連携など |
独自アプリの追加 | アプリ市場やプラグインを利用して機能を拡張できるか |
大まかに言えば、パッケージ型やフルスクラッチ型は自由度が高いものの費用がかさむ一方、ASP型やクラウド型は思い通りのアプリを追加しづらい・既定の範囲内に留まる傾向にあります。ただし近年はShopifyのように、多種多様なアプリで柔軟に機能拡張が可能なサービスも増えています。
将来的に売上増が見込まれたり、顧客に合わせたきめ細かな機能を求めているなら、ある程度のカスタマイズが効くサービスを選んだほうが安全です。逆に、まずは最小構成で始めたいなら、シンプルで運用負担の少ないASPでも十分でしょう。
次の章から、おすすめのECサイト構築サービスをタイプ別にご紹介します。
まず最初は、パッケージ型EC構築サービスです。
パッケージ型は比較的料金が高いものの、自由にカスタマイズしながら使えるため大規模サイト向けの製品が多いです。また、保守やサポート体制が充実している場合が多く、安心感があります。ここでは特に人気のパッケージサービス4製品を紹介します。
1,000以上のEC機能を標準搭載し、様々な販売戦略やBtoB・BtoC形態に対応できるオールインワンな大規模ソリューションです。OMO機能やモール連携にも対応できるため、実店舗とオンラインを統合した販売展開が可能。導入企業数も多く安定した実績を誇ります。ECサイト構築後のサポート体制が手厚いのも安心できる点です。
実店舗との在庫・顧客管理を一元化したい
BtoB取引にも対応したい
より大きな売上目標や将来的な拡張を見据えている
企業間取引(BtoB)向けに特化したパッケージで、基幹システムとの連携や大量商品登録にも適した設計になっています。マスター管理や受注管理がしやすくフロントUIも整っており、大規模卸売りや問屋業態のEC化に役立ちます。
BtoB取引のEC化をスムーズに行いたい
既存の会計/在庫システムと連携したい
見積機能や企業別価格を運用したい
企業向け受発注システムの「アラジンオフィス(Aladdin Office)」を開発するアイル社によるBtoB特化型パッケージです。取引先ごとに違う価格設定やダッシュボード管理などが可能。6000社超の基幹システム導入に基づくノウハウがあります。
既存の基幹システムがアラジンオフィス
BtoBに必要な機能(掛け払い、見積など)を重視
業務を効率化しつつ取引先の満足度を高めたい
国内トップシェアを誇るECパッケージで、大手~中堅企業含め1600社超の導入実績があります。カスタマイズ性が非常に高く、24時間365日サポートやマーケティング支援体制が整っています。BtoC、BtoB、越境ECなどあらゆる形態に対応可能です。
すでに数十億以上の売上規模がある
大規模サイトで高度な個別カスタマイズが必要
保守サポート含めて一括で任せたい
クラウド型はサーバー構築が不要で、システムメンテナンスもベンダー側が行うため、運用の手間が軽減されます。デザインの自由度や機能性に優れた製品が多いため、中規模以上のEC運営に向いています。
世界175か国以上で導入されている大手クラウドECサービスで、日本でも急速に普及中です。大量のアプリやテンプレートがあり、自由度が高い一方、ノーコードで構築可能です。越境ECやSNS連携にも強く、海外販売を視野に入れる事業者に選ばれやすいです。
海外展開や多言語対応を考慮したい
デザインや機能のカスタマイズを自分で柔軟に行いたい
独自アプリなど拡張性が豊富なサービスを探している
アパレル/美容/食品などで豊富な実績があり、SNS連携やレコメンドなど販促機能が充実。運営者向けのセミナーやサポートが手厚く、柔軟なデザインカスタマイズを可能にします。大規模EC向けの「futureshop omni-channel」もあります。
独自のデザインや多彩なキャンペーン機能を要望
サポートを受けながら成長したいEC担当者
他のネットショップから移行して売上UPを目指したい
D2C・ブランドEC向けに特化した国産クラウドECプラットフォームです。CRM、定期購入、LTV分析、広告連携などマーケティング・販売強化機能が標準で充実しており、「作る」よりも「売る」「伸ばす」に強いのが特徴です。データ活用・グロース支援まで含めた支援体制が整っています。
D2Cブランド・自社ブランドECを本格的に育てたい
定期購入・サブスクモデルを重視している
マーケティング施策とECを一体で運用したい
ASP型は低コスト・短期間で立ち上げられる点が魅力で、小規模ビジネスや個人事業主にも人気が高いです。拡張性は限定的ですが、テンプレートが豊富で誰でも使いやすいものが多いのがメリットです。
初期費用や月額費用が無料で、商品が売れたときだけ決済手数料やサービス利用料がかかるシンプルな料金体系です。テンプレートが豊富かつ直感的に操作できるため初心者でも安心です。累計開設ショップ数が国内最大級のサービスです。
まずはリスクを抑えてネット販売を始めたい
副業や小規模店舗がプチEC対応したい
デザインや機能はシンプルでOK
低価格かつデザイナブルなテンプレートで有名です。操作画面もわかりやすく、豊富な機能を自由に組み合わせやすい特徴があります。国内最大規模のネットショップ作成実績を誇り、WordPress連携など拡張性も高いです。月額数千円でコストパフォーマンスが高いとの評判です。
テンプレートでお洒落なページを手早く作りたい
費用をおさえてそこそこ機能を使いたい
中規模情報サイトと連動させSCMなど拡張したい
流通総額No.1といわれるASPサービスです。販売手数料はゼロでありながら機能数600以上、豊富なデザインテンプレートを完備しています。独自アプリや決済連携も充実し、カスタマイズしやすく安定感があります。
手数料ゼロと決済手数料の安さを重視
将来はBtoBや海外向けも検討している
長期的に本格運用していくASPが良い
オープンソース型は、ソースコードが公開されているECシステムをベースに、自社サーバーまたはクラウド上に構築して利用する形態です。初期費用を抑えつつ、高い自由度でカスタマイズできる点が特徴ですが、サーバー管理やセキュリティ対応など一定の技術リソースが求められます。エンジニア体制がある企業や、独自要件が多いECサイトに向いています。
国産の代表的なオープンソースECで、日本の商習慣・決済・配送事情に最適化されています。豊富なプラグインにより機能拡張が容易で、BtoCからBtoBまで幅広く対応可能。国内パートナー企業も多く、開発・保守を外注しやすい点も安心材料です。
日本向け商習慣(代引き、請求書払いなど)を重視したい
独自要件が多く、細かな業務フローに合わせたい
パッケージよりコストを抑えつつ柔軟性を確保したい
世界的に利用されている高機能なオープンソースECです。多言語・多通貨・複数店舗管理などグローバルECに必要な機能が標準で揃っており、大規模サイトや越境ECとの相性が良いのが特徴です。拡張モジュールも豊富で、スケーラビリティの高さに定評があります。
海外販売・多言語ECを本格展開したい
大量の商品点数・アクセスを想定している
海外ベンダーやグローバル基幹システムと連携したい
欧州を中心に高いシェアを持つオープンソースECです。UIが比較的シンプルで、中規模サイト向けに適しています。多言語・多通貨対応やモジュール拡張も可能で、Magentoほど重くなく、Shopifyより自由度が高い中間的なポジションです。
中規模ECでカスタマイズとコストのバランスを取りたい
ヨーロッパ向け販売を視野に入れている
フルスクラッチほどの予算はないが自由度は欲しい
WordPressのプラグインとして利用できるEC機能で、コンテンツマーケティングやブログとの連携に強みがあります。低コストで導入でき、小規模〜中規模ECに適しています。SEOやコンテンツ発信とECを一体化したい場合に有効です。
既にWordPressサイトを運営している
オウンドメディアとECを連携させたい
小〜中規模で段階的にECを育てたい
最後に、ECサイトの構築やデザイン、コンテンツを一括して外注したい企業向けの代行サービスを紹介します。専門家に任せられるので社内リソースが少ない企業におすすめです。
デザインからコーディング、商品ページ作成に至るまでワンストップで代行しています。複数プランが用意されており、予算や要望に合わせて選択可能です。詳しい打ち合わせでイメージを形にしてくれるため、ECサイト構築の経験が浅くても安心です。
インハウスで制作する時間と人材がいない
自社独自のデザインを作り込みたい
将来的に運営も一定範囲で任せたい
ECサイトのコンセプト設計・SEO戦略・UI/UX最適化・構築〜公開作業まで一括で対応する制作代行会社です。単なる構築ではなく、集客・ブランディング・導線設計を含めた実践的な支援が可能です。
立ち上げから戦略設計まで伴走してほしい
デザイン性の高いサイト構築を希望
SEO/コンテンツ制作などマーケティングも外注したい
Shopify公式の制作・構築パートナー企業は、日本国内でも多数存在し、ECサイトの企画設計〜デザイン制作〜構築〜運用支援まで一貫した代行支援が可能です。Shopify Plus パートナーなど、上位認定を持つ会社を選べば、多言語対応/海外販売/カスタム機能実装まで幅広くカバーできます。
Shopifyを利用した本格的なECサイトを代行構築したい
越境EC・SNS連携・多言語対応を含めた運用体制が必要
自社での開発リソースがなく、設計から運用まで任せたい
ここまで紹介してきたECサイト構築サービスですが、導入前後で気を付けるべきポイントを以下にまとめます。
ECサイト構築を成功させるには、まず自社のビジネスモデルや売上目標、在庫管理体制などを整理し、必要な機能を洗い出しておくことが重要です。導入するツールやサービスを選ぶ際にも要件書を作成して開発ベンダーへ提示し、実現可能性をすり合わせましょう。自社にエンジニアがいない場合は、どこまで外部に委託するのかも明確にし、費用面・運用面のリソースを確保しておくのがおすすめです。
ECサイトは顧客の個人情報やクレジットカード情報を扱うため、セキュリティ対策が欠かせません。ASPやクラウド型を利用する場合でも、ログインパスワードの管理やアクセス権限、プラグインのアップデートを定期的に行いましょう。パッケージ型・オープンソース型では特にこまめなパッチ適用やセキュリティ診断を実施することが安全運用のカギとなります。
ECサイト構築にかかる初期費用や開発費は、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの制度を活用することで、実質的な負担を大きく軽減できる場合があります。特にクラウド型やパッケージ型ECの導入やフルスクラッチの開発は補助対象になりやすく、要件に合致すれば開発費の1/2〜2/3程度が補助されるケースもあります。発注する前に申請し受理される必要がありますので、早いタイミングでの補助金検討への着手と、スケジュール管理が重要になります。
使える補助金は「作るもの」「作る人」「作り方」によっても変わってきます。以下の記事も合わせてご覧ください。
参考:Webサイトやホームページ制作に使える補助金・助成金とは?申請時の注意点も解説
ECサイト構築サービスやツールは、企業が短期間かつ低負担でネット販売を開始するための強力な支援ツールです。ASPやクラウド型はコストを抑えたい企業、パッケージ型は大規模で独自性を重視する企業に向いています。フルスクラッチ開発は自由度が高いですが、予算と人材が必要です。また、操作や運用体制が整わない場合には、代行サービスを利用する選択肢もあります。
いずれの方式でも、自社の規模や目的に応じて、カスタマイズ性・料金体系・機能などを見極めることが重要です。今回紹介した17製品・会社の特徴を参考に、自社に最適なECサイト構築サービスを見つけてください。補助金のご相談は以下のフォームよりお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
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補助金について詳しい人が周りにいない
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しかし、自社に合った補助金を見つけるためには、相当の時間と手間が必要になります。
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