この記事をご覧になっている方は事業承継について検討していたり、興味を持っていたりする方も多いのではないでしょうか?
事業承継は現経営者から後継者へ事業を引き渡すもので、特に中小企業の経営者が直面しやすい壁として挙げられます。
「いずれは後継者を探さなければならない」とわかっていても、そもそも事業承継をすべきなのかわからないと迷ってしまう方も少なくありません。
そこで本記事では事業承継についてわかりやすく解説していきます。
支援制度やマッチングサービスなども紹介していますので、後継者がいないという方もぜひ最後までご覧ください。
そもそも事業承継とは、現経営者から後継者へ事業を引き継ぐことを指しています。
引き継ぎ資産には様々なものが存在しており、大きく以下の3つに分類できます。
経営権:経営する権利
有形資産:自社株、事務所や工場設備などの不動産、借入金など
無形資産:顧客情報、取引先、ノウハウ、ブランド、人脈、信頼など
事業承継には、以下のようなメリットがあります。
事業を残せる継続性がある
従業員の雇用を確保できる
事業や自社株を譲渡することで利益を得られる
近年は団塊世代の退職や相続が発生し、新型コロナウイルス感染症を始めとする経済の先行き不透明を感じ、事業を売却して利益を確保する事業者が増加しています。
さらに事業や非上場株式を換金できるため、プライベート面を充実させたい経営者の老後資金の準備に充てられていることも少なくありません。
実際、中小企業庁が発表した「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書」では、年々増加していた後継者不在率が66.5%(2017年)から61.5%(2021年)まで低下するなど、事業承継に取り組む経営者も増えているようです。
中小企業庁:2022年版「小規模企業白書」全文 (meti.go.jp)
事業の引き継ぎには主に3種類の方法があり、それぞれの特徴は以下の表にまとめた通りです。
親族内での事業承継以外に、合併(Merger)と買収(Acquisition)を指すM&Aなどの第三者への事業承継があります。
それぞれ一長一短で、事業者に応じて適切な方法を選択していくことが大切です。
事業承継と似た言葉で事業譲渡というものが使用されますが、これらの違いは以下のように譲り先と範囲が異なります。
事業承継:現経営者が後継者を選び、企業自体(全事業)を引き継がせること
事業譲渡:全事業、もしくは一部事業を他社へ売却すること
事業を売却することは同じであっても、事業承継は企業の継続、事業譲渡は企業や事業の撤退につながることが多いという点が異なります。
事業承継は事業の継続性や雇用の確保ができ、売却益を得られるメリットがありますが、当然いくつかのリスクも存在しています。
メリットとリスク(デメリット)を比較し、事業承継をすべきか否かを判断するようにしましょう。
事業承継のリスクとしてまず挙げられるのが、後継者の発見と育成でしょう。
事業承継は企業全体を引き継ぐことですので、当然後継者の手腕が問われます。
さらに現経営者の経営方針を理解している経営者として相応しい人物、社内外から受け入れられる人物であることなども求められます。
そのため後継者を見つけ出すのが難しく、引き継がせるまでに十分な育成を行わなければなりません。
事業承継は経営者の亡くなったタイミングで、親族などの他相続人との金銭トラブルの原因にもなりかねません。
例えば、父親が自社株を後継者である長男のみへ贈与した場合、父親が亡くなった時に次男や三男から「遺留分」を請求されるケースもあります。
この遺留分とは相続人全員が最低限受け取れる遺産の割合のことを指します。
遺留分を渡すのを拒否してしまうと家庭裁判所の介入なども発生し、家族関係にヒビが入ってしまう危険性もあるので注意しておきましょう。
このように後継者に選ばれなかった他の相続人との関係が悪化するリスクにも十分配慮していなければなりません。
事業承継時に株式を取得する時には、後継者の資金力が重要になることも注意しておかなければなりません。
中小企業の株式でも総額が数千万円から数億円が必要になる場合も多くあります。
前述したように、遺留分(最低限の遺産がもらえる権利を行使時にもらえる金額)は株式を譲渡したケースで発生しますので、通常の売買のように有償で譲渡すれば遺留分は発生しないことになります。
そのため遺留分の発生を防ぐためには資金力が必要になる上に、譲渡した現経営者は所得税が課されることは念頭に置いておきましょう。
社内カルチャーやシステムの統合などで、変化が生じてしまい顧客や取引先が離れてしまうリスクもあります。
後継者の経営方針の理解度などに左右されやすい、第三者へ売却するM&Aなどで起こりがちといえます。
事業承継を成功させるポイントをいくつか紹介していきます。リスクを回避するためにも、ぜひ事業承継前には抑えておきましょう。
まずは専門家のサポートを受けることが大切です。
事業承継を任せられる人はなかなかいないのが現実で、経営者が自ら動き出す必要があります。
ただ一人で進めてしまうと、前述したようなリスクの払拭などができないケースも考えられるでしょう。
特にM&Aなどは専門的な知識が必要ですので、プロのサポートを受けながら事業承継を進めていきましょう。
株式譲渡などを行う際、後継者の資金力が追いつかずに譲渡できないというケースは、融資を受けるという選択肢もあります。
会社や、後継者である個人事業主や代表者個人が資金を必要とする場合に、日本政策 金融公庫や沖縄振興開発金融公庫が低利融資制度により支援しています。
具体的には、経営承継円滑化法という法律で、後継者に対して最大7億2,000万円の低利融資が用意されています。また通常1.21%の利率が適用されるところ、条件次第では0.81%や0.56%まで下げることも可能ですので、覚えておきましょう。
事業承継は実行まで10年かかるとも言われています。そのため、早めに着手するように心がけておきましょう。
親族内や社内から後継者を決定・育成する期間、M&Aなどを行う場合は買い手を見つける期間がそれぞれ必要です。
タイミングが重要になるので、なるべく早めに着手していつでも売れる状態にしておくことをおすすめします。
事業承継の支援制度を紹介していきます。様々な制度がありますので、ぜひ積極的に利用してみてください。
事業承継・引継ぎ支援センターは独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営する事業承継の支援機関です。
令和4年度の補正予算案でも中小企業基盤整備機構には181.5億円が割り振られており、全国で事業承継に関する幅広い相談が可能です。
親族・社内・第三者(M&A)などの事業承継にも対応していますので「後継者が決まっていないが相談しておきたい」という方にはおすすめの相談先といえるでしょう。
自社株の取得時に発生する贈与税や相続税の納税を猶予させられる「事業承継税制」の活用も視野に入れておきましょう。
株式譲渡時に後継者が納税に追われて、資金繰りが厳しくならないようにという目的で設定されている税制です。
通常は贈与税もしくは相続税の納付猶予ですが、後継者の死亡時にはそれらが納付免除となります。
2020年に制定された「事業承継引継ぎ補助金」も存在しています。
事業承継やM&Aにかかる経費を最大500万円まで負担してくれる補助金で、人件費以外にも外注費や広告費、廃業費など幅広く対象となっています。
執筆時点では募集終了していますが、5次公募の開始が2023年3月以降で順次予定されているので、事業承継をお考えの方は公式サイトを小まめにチェックしておきましょう。
補助金について詳しくは、こちらの記事で紹介しています。
事業承継・M&A補助金とは?制度概要や対象者、補助額、申請方法などを解説
自治体でも事業承継の支援制度が整備されているので、一度地域の支援制度を確認しておくことも忘れないようにしましょう。
例えば、東京都中小企業振興公社では個別相談やセミナー、後継者交流会を開催して包括的にサポートしています。
さらに最大200万円まで、事業承継や経営改善時の経費を助成する「事業承継支援助成金」なども用意されています。
事業承継でネックになるのが、後継者が見つからないという問題ではないでしょうか。
そんな事業承継を行いたい経営者と事業を譲り受けて発生させていきたい後継者を結ぶマッチングサービスをいくつか紹介していきます。
日本政策金融公庫が運営する事業承継マッチング支援では、 小規模事業者の利用が多いマッチングサイトです。
無料で利用でき、事業承継のヒアリング・マッチング・マッチング後のサポートまで一貫してサービスを受けることが可能です。
実名掲載の譲渡案件が多数紹介されていますので、他社の希望相場なども確認しながら事業承継準備を進めてみてはいかがでしょうか。
リレイは「事業承継をオープンに。」を掲げる事業承継のマッチングサービスです。
事業承継を行いたい経営者へ取材を行い、事業承継への想いをサイトへ掲載し、それを見た後継者候補が応募するという仕組みになっています。
事業承継を行う側の手数料は0円で、ビジネスの規模ではなく事業にかける想いを重視した後継者探しをしたい方にぴったりといえるでしょう。
事業承継は、事業を継続させて、従業員の雇用を守りつつ事業を売却して利益を得られる手段です。
実行までに10年かかることも多いので、事業承継をお考えの方は早めに準備しておきましょう。
後継者がいない場合はマッチングサービスを活用しながら進めてみるのも一つの方法です。
その際には、支援制度や補助金の活用も検討してみると良いでしょう。