2025年度に新設された「中小企業成長加速化補助金」は、売上10~100億円規模の企業が100億円超を目指すための成長投資を後押しする制度です。
第1次公募では採択率16.6%という狭き門となり、大型投資や実現性の高い事業計画が求められる高難度の補助金であることが明らかになりました。
本記事では、各公募回の採択結果や採択率から結果分析まで、最新の公式情報をもとに分かりやすく解説します。
公募次 | 公募要項公開 | 申請受付開始 | 申請締切 | 採択結果 |
|---|---|---|---|---|
第2次公募 | 未定 | 未定 | 未定 | 未定 |
第1次公募 | 2025年3月17日(月) | 2025年5月8日(木) | 2025年6月9日(月) | 2025年9月19日(金) |
第2次のスケジュールに関しては未定ですが、公式より以下の告知が発表されています。

引用:中小企業成長加速化補助金の2次公募に向けた状況について | 100億企業成長ポータル
ここでは中小企業成長加速化補助金の採択結果について紹介します。
応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|
未発表 | 未発表 | 未発表 |
応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|
1,270件 | 211件(追加採択者含む) | 16.6% |
中小企業成長加速化補助金の第1次公募の採択率は16.6%でした。申請総数1,270件のうち、書面審査通過後の追加採択分まで含めた最終的な割合で、かなり狭き門であったことがわかります。
採択企業の特徴を分析すると、投資規模の中央値が全体の申請より明確に高かったことや、金融機関からの確認書の提出率が極めて高かったことが共通点として挙げられます。(参考:中小企業成長加速化補助金 1次公募 採択者一覧)
採択率が低かった背景には、この補助金特有の要件の厳しさが影響しています。売上高10億円〜100億円未満という比較的大きな企業に限定されているうえ、将来100億円規模を目指す成長戦略や課題解決のプロセス、社内体制まで具体的に示す必要があるため、準備のハードルが高くなっています。
また、近年は他の補助金制度の予算縮小も続いており、結果として本補助金の競争性がさらに高まったと考えられます。
他の採択率が高い補助金と比べると、中小企業成長加速化補助金はより選抜色が強い制度と言えるでしょう。地域別の採択状況では、企業数の多い関東圏、とくに東京都と神奈川県で採択企業が目立ちますが、これは応募件数が集中していることを反映した結果とみられます。
一方で、中小企業成長加速化補助金は不採択になった理由が事業者に通知されます。そのため、2次公募に応募する際に役立たせることができるので、採択率は今後高まっていくことが予想されるでしょう。
中小企業成長加速化補助金は、一定の規模を持つ中堅・中小企業が、生産性向上や事業拡大に向けた大規模投資を実施できるよう国が支援する制度です。
ここでは、その目的や申請枠、対象者、補助額・補助率について分かりやすく解説します。
この補助金は、売上高10億円以上100億円未満の企業が「売上100億円規模への成長」を実現するための投資を後押しすることを目的としています。

参照:100億企業成長ポータル 中小企業がデジタル化・生産設備の更新・組織体制の強化など、企業の成長を加速させる取り組みに必要な費用を補助することで、「高付加価値化」「生産性の向上」「新市場・新事業への展開」といった成長戦略の実行を支援する制度です。
当然ながら本補助金では事業計画の実現性や投資の妥当性、組織体制などが厳しく審査されますが、補助上限額も高額なため、大きな支援を受けられる特徴があります。
中小企業成長加速化補助金には、一般的な補助金制度のような複数類型ではなく、「通常枠(単一枠)」で運用されている点が特徴的です。ただし、企業の成長段階や投資内容によって、審査項目や求められる要件が細かく設定されています。
生産設備の大型投資
IT 活用による業務改革
人材育成や組織づくりに関わる投資
成長戦略に基づく新規事業・事業再編 など
中小企業成長加速化補助金の対象となるのは、中小企業基本法上の中小企業であり、かつ売上高10億円以上100億円未満の企業です。
単に規模が条件に当てはまるだけではなく、今後100億円規模の成長を本気で目指す「成長志向型の企業」であることが重要なポイントとなります。対象企業には、次のような具体的な要件が課されています。
「売上100億円を目指す」旨の明確な意思表示(いわゆる「100億宣言」)を行っていること
補助対象経費(外注費・専門家費を除く)が1億円以上の投資であること → 大型投資による成長加速が前提のため、一定規模の設備投資が必須です。
今後5年程度の事業計画を策定し、一定の賃上げ目標を掲げること → 賃上げの実施は補助事業終了後3年間必要となり、未達の場合は返還リスクもあります。
さらに、投資計画には次の内容を含める必要があります。
売上100億円を達成するための具体的なロードマップ
市場環境や成長課題の分析
投資内容の妥当性と期待される効果(生産性向上・事業拡大など)
計画を実行できる組織体制と経営管理体制
これらの要件をすべて満たし、かつ実現可能な成長戦略を示せる企業が、この補助金の対象となります。選抜型の補助金であるため審査は厳しく、計画の完成度や実行力が採択の重要な鍵となります。
中小企業成長加速化補助金では、成長に向けた大型投資を支援するため、高い補助上限額が設定されています。
補助上限額:最大5億円
補助率:1/2以内
投資額が大きいほど補助金額も増加しますが、採択されるためには、投資の妥当性・成長性を示す説明が必須となります。
補助率自体は他の投資系補助金と比べて高くありませんが、上限額が大きいため、成長投資を本格的に実施したい企業にとっては大きな支援になるでしょう。
なお、中小企業成長加速化補助金に関しては、以下の記事で詳しく紹介しております。
中小企業成長加速化補助金では下図の活用方法が挙げられます。

参照:中小企業成長加速化補助金のご案内 | 補助金活用ナビ(中小機構)
実際にどのような活用につながるのかをイメージするために、ここでは活用例を紹介します。
中小企業成長加速化補助金の特徴のひとつが、企業規模を一段押し上げるための大規模投資を後押しできる点です。特に、売上高100億円クラスを目指す企業では、生産・物流のキャパシティが成長のボトルネックになりやすく、既存設備だけでは限界が生まれます。
こうした背景から、補助金を使って新拠点を整備する企業が多く、工場の増強、物流センターの構築、営業拠点の展開など、事業基盤そのものを拡大させる投資に活用できます。
一般的な設備更新とは異なり、「企業規模を引き上げるために必要な拠点整備」が対象となる点がポイントです。
▼想定される活用イメージ
新たな生産ラインを丸ごと収容する新工場の建設
地域戦略に合わせた物流拠点の追加整備
新規市場に参入するための営業拠点・ショールームの開設
研究開発部門の拡張による技術力の底上げ
これらの投資は、単なる容量増ではなく、新市場の開拓・顧客接点の拡大・事業継続性の向上といった多面的な成長効果をもたらします。
売上高を大きく伸ばすには、既存製品の延長ではなく、新しい価値を生み出す取り組みが欠かせません。補助金を活用すれば、開発設備や高度計測機器、シミュレーションソフトなど、今まで導入が難しかった最新設備に手が届きます。
特に、技術的な優位性を築きたい企業にとって、先端設備の導入は投資対効果が高く、新たな収益源の確立にもつながります。
▼想定される活用イメージ
高機能加工設備による高付加価値製品の量産体制構築
精密検査機器の導入による品質基準のアップデート
開発スピードを加速する専用プロトタイピング設備
設計・解析ソフトによる高度な研究開発環境の整備
これらの取り組みにより、製品の競争力向上・開発期間の短縮・知財創出の加速といった成果が期待できます。
人手不足が深刻化する中、中堅企業が売上100億円規模を達成するには、労働依存の体質から脱却し、技術を活用したスケールしやすい体制を整えることが重要です。そこで有効なのが、自動化やデジタル化への投資です。
補助金を使うことで、現場の省人化だけでなく、24時間稼働や工程の最適化といった、根本的な生産性革新を実現できます。
▼想定される活用イメージ
ロボット導入による組立・搬送・検査工程の自動化
AGV/AMR を活用した庫内物流の効率化
AI 画像検査による品質の安定化
MES や IoT を使った工場全体の稼働データ可視化
予知保全システムによる停止ロスの削減
これらの取り組みは、生産性向上・品質安定・コスト最適化・競争力強化といった複合的な成果をもたらし、企業の成長速度を大きく高めます。
中小企業成長加速化補助金は、売上100億円規模への成長を目指す中小企業の投資を大規模に支援する制度です。
第1回公募では採択率16.6%と比較的低い水準となっておりましたが、2025年度に新設されたこともあり、今後の動向に注目です。申請においては、不採択理由が通知されるため第2回公募以降に向けての対策にも役立てることができます。
いずれにせよ、中小企業成長加速化補助金は最大難易度の補助金となりますので、専門家の協力は必要となるでしょう。
採択率を高めたい方、申請準備の支援が必要な方は、ぜひ下記よりご相談くださいませ。