会社を経営する上で欠かせないのが繰延資産です。繰延資産は一時的な支出であるものの、長期間に渡って費用計上できます。しかし費用なのに資産と聞くと混乱する方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では繰延資産の概要と活用方法、仕訳方法などを紹介します。法人だけでなく、個人事業主の方にも該当する内容ですので、経営者やフリーランス、これから起業を検討している方はぜひ参考にしてください。
繰延資産とは、法人・個人の支出する費用の中で、1年以上に効果が及ぶ、固定資産にも流動資産にも該当しない資産のことを指します。
例えば起業する際にかかった費用(開業費)のうち、パソコンやプリンターなどは翌年でも使用する資産です。開業年の翌年に開業費を一括計上すると、初年度が大きく赤字なる可能性があり、会計上適切な期間損益を表しているとはいえなくなります。
ただし、繰延資産は種類ごとに償却できる期間が定められているため注意が必要です。
繰延資産の活用方法を個人の所得税を例に挙げて紹介します。
(以下、繰延資産が200万円と仮定)
科目 | 初年度 | 2年目 |
|---|---|---|
所得 | △100万円 | 300万円 |
所得税 | 0円 | 20万2,500円 |
繰延資産を計上した後の所得 | △300万円 | 100万円 |
繰延資産を計上した後の所得 | 0円 | 5万円 |
開業した年が赤字だった場合、所得税は0円になります。そのため繰延資産を計上しても節税効果がありません。
一方2年目に300万円の黒字になった場合は、所得税が課税されます。上記の例のように200万円の繰延資産を計上すれば、100万円の所得に対して所得税が課せられるため、課税対象額を低くすることができ節税することが可能となります。
繰延資産額が大きい方は、黒字となった所得額に応じた額を計上すれば、納税額を0円にすることも可能です。
繰延資産には種類があり、償却期間が定められています。期間が切れたものは計上できません。以下の表で償却期間を理解しておきましょう。
以下の表は会計上の繰延資産の種類と内容、償却期間をまとめたものです。
繰延資産の種類 | 法人/個人 | 内容 | 償却期間 |
|---|---|---|---|
創立費 | 法人のみ | 発起人に支払う報酬 法人登記の登録免許税 定款及び諸規則作成のための費用 その他法人設立にかかわる費用など | 設立してから5年以内 |
開業費 | 両方対象 | 法人設立から開業までにかかわった費用 (事務用消耗品費やライフライン代金、社員への給与など) | 開業してから5年以内 |
開発費 | 両方対象 | 新技術や新部署、市場開拓などに関わった費用 | 支出のときから5年以内 |
株式交付費 | 法人のみ | 株式募集の宣伝広告費 株式募集時のための金融機関・証券会社への手数料 その他株式交付に係る費用 | 株式交付のときから3年以内 |
社債発行費 | 法人のみ | 社債募集のための広告費 社債募集の金融機関・証券会社への手数料 その他社債発行に係る費用 | 社債の償還までの期間にわたり利息法により償却 |
繰延資産は大きく5種類に分けることができます。個人の場合、繰延資産は開業費や開発費のみとなりますが、法人の場合は創設費や株式交付費、社債発行費も含まれます。それぞれ償却できる期間が異なるため、帳簿作成時は期限を確認しておきましょう。
会計上の繰延資産は、好きな時に好きな金額分を計上することができる償却も特徴の一つです。
繰延資産には会計上の資産の他に、「法人税法上固有の繰延資産」もあります。
先ほど紹介した会計上の繰延資産は「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」及び「中小企業の会計に関する指針」で定められています。一方税法上の繰延資産は以下の表に該当するものです。
資産の種類 | 詳細 | 償却期間 |
|---|---|---|
公共施設の設置・改良に係る費用 | 施設又は工作物が負担した者に専ら使用されるものである場合 | 施設の耐用年数の7/10に相当する年数 |
上記以外の場合 | 施設の耐用年数の4/10に相当する年数 | |
共同施設の設置・改良に係る費用 | 共同施設が負担者または関係者、協会などに使用される場合 | 施設の耐用年数の7/10に相当する年数(ただし土地の取得に係る費用は45年) |
上記以外の一般公衆にも使用される場合 | 5年 | |
建物を賃借するための権利金や立ち退き費用、その他など | 新築の建物の所有者に対して権利金を支払った場合(礼金・更新料など) | 建物の耐用年数の7/10に相当する年数 |
借家権を得るために支払った立ち退き費用など | 建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数 | |
上記の2つ以外の費用 | 5年 | |
役務の提供を受けるための権利金やその他費用 | ノウハウ(専門知識・情報など)に対して支払った頭金など | 5年 |
広告宣伝用資産を贈与した費用 | 社名や商品名などが入った自動車など | その資産の耐用年数の7/10に相当する年数または5年の短い方 |
上記以外の繰延資産のうち、支出効果が1年以上に及ぶもの | スキー場のゲレンデ整備費用 | 12年 |
出版権の設定の対価 | 設定契約に定める存続期間または3年 | |
同業者団体等の加入金 | 5年 | |
職業運動選手等の契約金等 | 設定契約に定める存続期間または3年 |
税法上の繰延資産は定額法で計算されます。会計上の任意償却とは異なり、好きな金額分を好きなタイミングでというわけにはいかないため注意してください。
繰延資産の償却方法は「均等償却」と「一時償却」の2つに分かれます。均等償却は、期間内で均等の額を償却する方法です。一時償却は、即時全額償却する方法です。
次の項では創立費と開業費の仕訳例を紹介します。
創設費を繰延資産で均等償却する場合は定額法で仕訳します。創設費を100万円と仮定し、償却期間5年で具体的な計算をしてみましょう。
償却費=100万円÷5年=20万円
帳簿には以下の通り記載します。
借方 | 貸方 |
|---|---|
創立費償却 20万円 | 創立費 20万円 |
開業費は支出が発生してから5年以内まで償却することができますが、例えば、開業費が200万円の場合で一時償却する場合、以下の通りに帳簿へ記載します。
借方 | 貸方 |
|---|---|
開業費 100万円 | 現金 100万円 |
※実務では支出時に開業費を資産計上し、償却時に開業費償却などで費用化することが多いです
今回は繰延資産の概要と活用方法、仕訳方法について解説しました。所得が黒字となった際、会計上で費用として計上することで、納税額を抑えることができる費用です。
繰延資産は主に5つに分かれますが、それぞれ償却期間が異なるため、期限が切れて計上できないことにならないように注意が必要です。仕訳方法も均等償却と一時償却に分かれます。一時償却すると、翌年計上できなくなりますが、大きな節税につながります。均等償却は一定額を計上できるため、黒字額に応じた費用を計上をすることで、最大限の節税効果が見込めるでしょう。
是非自社の繰延資産を整理し、経営にお役立てください。補助金申請においても財務計画が重要となります。この機会に覚えておきましょう。

