トラック運送業界では、燃料費の高騰、人手不足、ドライバーの高齢化、安全対策の強化、環境対応など、さまざまな経営課題への対応が求められています。
こうした課題に対して、全日本トラック協会および各都道府県トラック協会では、会員事業者向けにさまざまな助成事業を実施しています。
たとえば、バックアイカメラや側方衝突監視警報装置などの安全装置、睡眠時無呼吸症候群(SAS)検査、業務用血圧計、自動点呼機器、アイドリングストップ支援機器、若年ドライバーの免許取得支援、経営診断・運賃交渉支援など、運送事業者の実務に直結する制度が用意されています。
この記事では、トラック運送事業者が活用を検討しやすいトラック協会の助成事業について、対象者・対象経費・上限額・補助率を中心にわかりやすく解説します。
トラック協会の助成事業とは、主に全日本トラック協会や各都道府県トラック協会が、会員事業者を対象に実施している支援制度です。
国の大型支援制度と比べると、1件あたりの助成額は比較的小さい制度もありますが、トラック運送事業者の現場に即した内容が多く、日常業務の改善、安全対策、人材育成、健康管理などに活用しやすい点が特徴です。
特に、車両や設備の導入だけでなく、ドライバーの健康管理、教育訓練、免許取得、経営診断、運賃交渉支援などにも使える制度があるため、会社全体の経営改善にもつなげやすい制度といえます。
多くの制度では、各都道府県トラック協会の会員事業者であることが前提となります。
また、制度によっては中小企業者または中小事業者のみが対象となる場合があります。中小企業者の目安としては、資本金3億円以下、または常時使用する従業員数300人以下とされるケースがあります。
ただし、実際の申請条件、対象機器、助成額、申請期間、必要書類は、所属する都道府県トラック協会によって異なる場合があります。申請を検討する際は、必ず自社が所属するトラック協会の最新情報を確認しましょう。
トラック協会で活用を検討できる主な助成・融資等の支援制度は、以下のとおりです。
安全装置等導入促進助成事業は、事業用トラックの交通事故防止を目的に、安全運行に役立つ装置の導入を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者 |
対象経費 | 後方視野確認支援装置(バックアイカメラ等)側方衝突監視警報装置呼気吹込み式アルコールインターロック遠隔点呼用の携帯型アルコール検知器トルク・レンチ |
上限額 | 後方視野確認支援装置:上限2万円呼気吹込み式アルコールインターロック:上限2万円遠隔点呼用の携帯型アルコール検知器:上限2万円側方衝突監視警報装置:上限10万円トルク・レンチ:上限3万円 |
補助率 | 取得価格の1/2 |
バック事故、左折時の巻き込み事故、飲酒運転、車輪脱落事故などを防ぐための装置が対象となります。特に、Gマーク取得を目指す事業者や、荷主からの安全管理体制への要求が高まっている事業者にとって活用しやすい助成事業です。
ドライバー等安全教育訓練促進助成制度は、トラックドライバーや安全運転管理者などが、指定された安全教育訓練を受講する際に活用できる制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | トラックドライバー、安全運転管理者等が所属する各都道府県トラック協会の会員事業者 |
対象経費 | 全日本トラック協会が指定する安全教育訓練の受講費用 |
上限額 | 一般研修:1万円特別研修:受講料の7割Gマーク認定事業所の特別研修:受講料の全額 |
補助率 | 一般研修:定額特別研修:受講料の7割Gマーク認定事業所:特別研修は全額 |
社内だけで安全教育を完結させるのが難しい場合でも、外部研修を活用することで、事故防止に必要な知識や運転技術を体系的に学ぶことができます。
新人ドライバーの教育、事故発生後の再教育、安全意識の底上げなどに活用しやすい助成事業です。
SASスクリーニング検査助成事業は、トラックドライバーの睡眠の質を確認し、健康起因事故の予防につなげるための検査費用を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者 |
対象経費 | 指定検査・医療機関が実施するSASスクリーニング検査のうち、健康保険適用外の第1次検査および第2次検査 |
上限額 | 第1次検査:上限500円/人第2次検査:上限2,000円/人第1次検査・第2次検査を同時に実施する場合:上限2,500円/人 |
補助率 | 検査費用の1/2 |
睡眠時無呼吸症候群は、眠気や集中力低下につながり、重大事故のリスク要因となる可能性があります。健康起因事故の予防や、ドライバーの健康管理体制を整えたい事業者におすすめです。
公式:トラック運転者の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」スクリーニング検査助成事業
血圧計導入促進助成事業は、乗務前点呼などで活用できる業務用血圧計の導入を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員である中小企業者中小企業者の目安:資本金3億円以下、または従業員300人以下 |
対象経費 | 管理医療機器かつ特定保守管理医療機器である全自動血圧計(業務用)の導入費用 |
上限額 | 上限5万円 |
補助率 | 機器取得費用の1/2 |
日常的に血圧を測定し、異常値を早期に把握することは、ドライバー本人の健康管理だけでなく、会社全体の安全管理にもつながります。健康起因事故の防止に取り組みたい運送会社にとって、活用しやすい助成事業です。
公式:血圧計導入促進助成事業
環境対応車導入促進助成事業は、温室効果ガスの排出削減や環境負荷の低減を目的として、環境対応車の導入を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者電気自動車・燃料電池車は中小企業者のみ申請可能 |
対象経費 | 車両総重量2.5トン超の環境対応車の導入費用 |
上限額 | 車種・所属する都道府県トラック協会により異なる |
補助率 | 車種・所属する都道府県トラック協会により異なる |
環境対応車は車両価格が高くなりやすいため、トラック協会の助成事業だけでなく、国や自治体の車両導入支援制度もあわせて確認することが重要です。
アイドリングストップ支援機器導入促進助成事業は、休憩中や荷待ち中のエンジン停止を促進するため、車載用の冷暖房機器導入を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者 |
対象経費 | エアヒータ車載バッテリー式冷房装置 |
上限額 | 上限6万円 |
補助率 | 機器取得価格の1/2以内 |
燃料費削減、CO2排出削減、ドライバーの休憩環境改善を同時に進めたい事業者におすすめです。夏場や冬場の待機時間が長い運送会社では、ドライバーの負担軽減にもつながります。
若年ドライバー等確保のための運転免許取得支援助成事業は、若年ドライバーなどの人材確保を目的に、運転免許取得や特例教習の受講を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者 |
対象経費 | 特例教習の受講費用準中型免許の新規取得費用5トン限定準中型免許の限定解除費用外国免許切替講習の受講費用 |
上限額 | 所属する都道府県トラック協会により異なる |
補助率 | 所属する都道府県トラック協会により異なる |
助成対象となるのは、事業者が費用を負担した場合に限られます。従業員本人が負担した費用を後から助成対象にできるとは限らないため、事前に制度要件を確認しておくことが重要です。
若年層の採用を進めたい事業者や、既存社員の免許取得を支援して乗務可能な車両を広げたい事業者に向いています。
中小企業大学校講座受講促進助成制度は、トラック運送事業者の経営者、後継者、管理者などが、中小企業大学校の対象講座を受講する際に活用できる制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員である中小企業者経営者、後継者、管理者等 |
対象経費 | 中小企業大学校各校で実施される対象講座の受講料経営戦略・経営計画に関する講座財務管理・利益計画に関する講座人材育成・労務管理に関する講座女性リーダー育成に関する講座情報化・システム構築に関する講座物流事業に関する講座 |
上限額 | 受講料の1/3相当額 |
補助率 | 受講料の1/3 |
運送会社では、ドライバー不足だけでなく、管理者や後継者の育成も重要な課題です。経営幹部の育成、後継者育成、管理者教育を進めたい運送会社におすすめです。
インターンシップ導入促進支援事業は、学生にトラック運送事業への理解を深めてもらい、将来的な人材確保につなげるための制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員である中小事業者中小事業者の目安:資本金3億円以下、または従業員300人以下 |
対象経費 | 高等学校以上の教育機関からの依頼により実施するインターンシップ受入れ |
上限額 | 3日間:9万円4日間:11万円5日間以上:13万円 |
補助率 | 定額 |
採用活動の一環として学生との接点を増やしたい事業者や、地域の学校と連携して若年層への認知を高めたい運送会社に向いています。
ドライバー職の魅力や物流業界の役割を直接伝えられるため、将来的な採用母集団の形成にもつながります。
自動点呼機器導入促進助成事業は、中小トラック運送事業者における安全性向上、労働環境改善、人手不足対策を目的に、自動点呼機器の導入を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員である中小事業者中小事業者の目安:資本金3億円以下、または従業員300人以下 |
対象経費 | 国土交通省の認定を受けた自動点呼機器導入費用周辺機器セットアップ費用契約期間中のサービス利用料 |
上限額 | 通常:1台分、上限10万円Gマーク事業所を有する事業者:2台分、上限20万円 |
補助率 | 対象経費の範囲内で、1台あたり上限10万円 |
点呼業務の省力化、運行管理者の負担軽減、深夜・早朝の点呼体制の見直しを進めたい事業者におすすめです。
人手不足が続く中で、運行管理業務の効率化を進めたい運送会社にとって、検討しやすい助成事業です。
自家用燃料供給施設整備支援助成事業は、燃料費対策の一環として、軽油専用タンクの設置を伴う自家用燃料供給施設の整備を支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 会員事業者、協同組合、連合会 |
対象経費 | 指定数量1,000リットル以上の軽油専用タンクの設置を伴う自家用燃料供給施設新設増設増設を伴う代替 |
上限額 | 軽油タンクの新設:100万円軽油タンクの増設:30万円増設を伴う代替:30万円 |
補助率 | 定額 |
燃料調達コストの安定化、災害時の燃料確保、複数車両を保有する事業者の燃料管理体制強化に活用しやすい制度です。
燃料費の変動リスクに備えたい事業者や、自社内での給油体制を整備したい運送会社は、検討候補に入れておきたい助成事業です。
経営診断・経営改善支援・運賃交渉支援事業は、中小規模の会員事業者が、自社の経営状況を把握し、改善に取り組み、取引先との運賃交渉を進めることを支援する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 中小規模の会員事業者 |
対象経費 | 経営診断経営改善支援運賃交渉支援診断士の交通費等 |
上限額 | 所属する都道府県トラック協会により異なる |
補助率 | 所属する都道府県トラック協会により異なる |
燃料費、人件費、車両維持費などの上昇により、運送原価が高騰している中、適正な運賃交渉は運送会社の経営維持において重要なテーマです。
「自社の原価を整理したい」「荷主に運賃改定を相談したいが、根拠資料を整えたい」「経営改善の方向性を専門家に見てもらいたい」といった事業者にとって、活用しやすい制度です。
中央近代化基金「補完融資」は、物流施設の整備などに活用できる利子補給型の支援制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者等 |
対象経費 | 物流施設の整備等事業規模1億円以上の大規模プロジェクト |
上限額 | 融資条件・推薦内容により異なる |
補助率 | 利子補給型のため、通常の助成事業とは異なる |
経費の一部が直接交付される助成事業ではなく、長期低金利の融資を推進するための制度です。
物流倉庫の整備、拠点の新設・増設、事業の近代化・合理化につながる大規模投資を予定している事業者は、選択肢の一つとして確認しておきたい制度です。
中央近代化基金「燃料費対策特別融資」は、燃料費対策や環境・省エネ対応を目的とした設備資金に対して、利子補給を行う制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象者 | 各都道府県トラック協会の会員事業者等 |
対象経費 | 燃料費対策に必要な設備資金環境・省エネ対応に必要な設備資金一定の排出ガス規制・燃費基準を満たす車両の導入自家用燃料供給施設の整備 |
上限額 | 融資条件・推薦内容により異なる |
補助率 | 利子補給型のため、通常の助成事業とは異なる |
一定の排出ガス規制・燃費基準を満たす車両の導入や、自家用燃料供給施設の整備などを検討している事業者は、活用を検討できます。
通常の設備導入型の助成事業とは異なり、融資とあわせて検討する制度である点に注意が必要です。
全日本トラック協会のページに掲載されている制度であっても、実際の申請窓口は各都道府県トラック協会となるケースが多くあります。
また、助成対象機器、助成額、申請期間、必要書類などが、所属する協会によって異なる場合があります。
申請前には、必ず自社が所属する都道府県トラック協会の公式情報を確認しましょう。
助成事業では、購入、契約、受講、検査などの前に申請や事前確認が必要となる場合があります。
すでに購入済み、契約済み、支払い済みの場合、対象外となる可能性があります。
特に、機器導入や車両導入、研修受講、検査実施などは、制度ごとに対象となるタイミングが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
助成事業は、年度ごとに予算が設定されています。
申請期間内であっても、予算額に達した場合は受付が終了することがあります。導入を検討している機器や研修がある場合は、早めに制度を確認し、見積書や必要書類の準備を進めておくことが大切です。
車両導入や設備投資では、国の支援制度、自治体の支援制度、トラック協会の助成事業をあわせて検討できる場合があります。
ただし、同じ経費に対して複数の制度を重複して受け取ることができない場合や、併用に制限がある場合もあります。
複数制度の活用を検討する際は、必ず各制度の要綱を確認し、必要に応じて事務局や所属協会へ確認しましょう。
トラック協会の助成事業は、運送事業者の安全対策、環境対策、人材確保、健康管理、業務効率化、経営改善などに幅広く活用できる制度です。
特に、バックアイカメラ、側方衝突監視警報装置、アルコール検知器、血圧計、SAS検査、自動点呼機器、アイドリングストップ支援機器、免許取得、インターンシップ、経営診断など、運送事業の現場に直結する支援が多い点が特徴です。
一方で、制度によって対象者、対象経費、助成額、申請期間、事前申請の有無が異なります。また、各都道府県トラック協会によって運用が異なる場合もあります。
そのため、活用を検討する際は、まず自社が所属するトラック協会の最新情報を確認し、購入・契約・受講・検査の前に申請条件を整理しておくことが重要です。
燃料費や人件費の上昇、安全対策の強化、人手不足への対応など、トラック運送業を取り巻く経営課題は今後も続くと考えられます。助成事業をうまく活用することで、コスト負担を抑えながら、より安全で持続可能な事業運営につなげることができます。
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