開業届とは、個人事業主として事業を開始したときにその事実を税務署に届け出る書類のことです。
初めて自分で事業を行う方の中には、
開業届を出すことでどのようなメリットやデメリットがあるのか?
開業届の出し方は?
そもそも開業届を出す必要はあるのか?
といった疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
そこで本記事では、開業届について、税務署に提出する際の必要書類や書き方、メリット・デメリット、注意点など、詳しく解説します。
開業届とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
開業届は、事業所得、あるいは不動産所得・山林所得が発生するような事業を始めた人が、税務署に対して提出が必要な書類です。
以下に税務署の所管官庁である国税庁から入手した開業届「個人事業の開業・廃業等届出書」のひな形を貼付したので、まずは現物をご確認下さい。(書き方のポイントについては、後の章で触れます)

本章では、開業届の手続き(必要書類、届の書き方、提出方法)について解説します。
開業届の提出に必要なものは、基本的に「開業届」「マイナンバーカード」の2つだけです。
この2つの書類を税務署に提出すればそれで手続きは完了します。
ただし税務署に提出時、マイナンバーカードがない場合、他の本人確認書類(運転免許証等)とマイナンバーがわかるもの(数字を控えたメモ等)を準備する必要があります。
また開業届の提出とあわせて青色申告を行う場合には、「青色申告承認申請書」も用意しておきましょう。
さらに開業する業種によっては、開業届とともに「飲食店営業許可」「宅地建物取引業」等の届出や免許が必要なケースがあります。
なお、開業届の提出には通常印鑑の押印が必要と思われますが、現在は不要の取扱いとなっており、開業届に押印する必要もなく、直接税務署に提出する場合にも印鑑を持参する必要もありません。
その他、開業届にあわせて提出が必要な書類として、「個人事業開始申告書」があります。
この書類は、提出先が都道府県となっており、地方公共団体は地方税である個人事業税を取り扱っていることから、開業したことを知らせるため提出が必要になっています。
開業届の書き方について解説します。
なお、この書き方については以下の公式サイトを参照しています。
参照先: 書き方|国税庁
開業届の提出先は納税地を主管している税務署になります。
この欄には、開業者本人の氏名・生年月日を記載するとともに、12桁の個人番号欄にはマイナンバーカードに載っているマイナンバーを記入します。
また職業・屋号欄には具体的な職業名を記入するとともに、屋号があれば記載し、ない場合は空欄のまま提出します。
届出区分欄は開業を選択するとともに、所得種類欄では事業所得を選びます。
ただし他の所得がメインの場合、それぞれ該当する項目を選択します。
具体的に開業した日を記入します。
ただし開業日は確定日だけでなく、実際に開業した日の前後の日を自由に設定できますのでご留意下さい。
開業届とあわせて青色申告承認申請書も一緒に提出する場合には、上段で「有」を選択します。
また消費税課税事業者を選択するなら、「有」を、選択しないなら「無」を選びます。
開業後の事業内容をできるだけ詳しくかつ簡潔に記載します。
青色事業専従がいればその欄に人数を、それ以外の従業員なら使用人欄に該当人数を記載します。
また税額の有無等、税務に係る専門的なことに関しては、直接税務署に問い合わせしてから記入して下さい。
開業届を提出する方法としては、以下の3つの方法があります。
税務署窓口で直接提出
郵送で提出
e-Taxやスマホでオンライン提出
近年は税務署も業務の効率化・省力化の観点から積極的にe-Taxの活用を訴えており、開業届の提出も同じくe-Taxを利用できます。
e-Taxシステムを使えば、開業届をオンラインで提出でき税務署への訪問が不要となるとともに、Freeeなどのクラウド型開業届サービスを利用すれば、スマホからの提出(電子申請)も可能です。
開業届を提出するメリットは主に以下の5つです。
個人事業主ができる確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、開業届と一緒に青色申告承認請求書を出すことで青色申告ができます。
青色申告のメリットは節税効果の高い青色申告特別控除が利用できることです。
個人事業主の果たす条件にもよりますが、事業所得や不動産所得から得る所得金額から最大65万円を控除できるので、その結果、所得税や住民税を大幅に節税できます。
開業届の書き方で説明したように、開業届にはビジネスでの名称である「屋号」を記載する欄があります。
屋号を記入した開業届を提出すれば、税務署から受領印を押印した控えがもらえるので、それを銀行に提出すれば屋号付きの銀行口座が開設可能です。
もちろん個人名義での口座開設もできますが、同じビジネスをするなら屋号付き口座を持てれば、それを示して対外的に信用を上げられるし、取引相手から振込みしてもらう場合にも口座間違いのリスクも減らせます。
さらに事業では経理業務が付きものですが、プライベート用の個人口座と屋号付きの事業用口座を分けて開設していれば、自宅兼事務所で仕事をしていても電気・電話代等の経費を按分処理できるとともに、入出金も明確に区別することができます。
開業に伴い資金帳達で銀行や日本政策金融公庫の創業融資を利用することも多いです。
また創業融資を受ける際には、審査書類で開業届の控えを金融機関に提出することが一般的になっています。
近年は各金融機関とも創業融資の推進に積極的なので、創業したことを証明する開業届の控えの提出はそれだけで融資を受けやすくする条件といえるでしょう。
個人事業主であっても、カード会社に対して開業届の控えを出すことで、法人用のクレジットカードが申し込みできる点も開業届のメリットです。
法人用のクレジットカードが利用できれば、経費の支払等で業務の効率化・経理の明確化が図れるとともに、屋号付き口座同様、プライベートとビジネスの支出が明確に分けられます。
小規模企業共済とは、企業経営者や個人事業主が廃業したり退職したりした際、それまで積立てしてきた金額に応じた給付金をもらえるシステムです。
いはば小規模企業共済は、企業に勤めている社員が退職時に支給される退職金の個人事業主版と理解できます。
もちろん掛金は一定額まで事業での経費として認められているので節税にも使えます。
個人事業主が小規模企業共済に加入する際には、一般的に確定申告書の控えが必要ですが、開業したばかりで一度も確定申告したことがない事業者ならもちろん控えは提出できません。
しかし小規模企業共済への加入手続きでは、開業届の控えの提出でも認められているので、早めに共済へ加入したい方は開業届の控えを使って手続きするようにしましょう。
一方、開業届を提出する際の主なデメリットは以下の3つになります。
開業届を提出する前、本人が配偶者の扶養に入っていた場合、届けを出すことで配偶者の扶養から外れるケースがあるので要注意です。
開業届を出して個人事業主となり、一定の収入があると、配偶者の扶養には入れなくなります。
一方で配偶者の扶養に入っていれば扶養控除が適用され、納税者は所得控除が受けられることから節税が可能です。
しかし扶養対象者が個人事業主となり、一定の所得を得るようになると、扶養対象から外されてしまうので、ケースにもよりますが、開業届提出前よりデメリットになる場合があります。
失業保険(失業手当)とは、失業者が次の仕事を見つけるまでの間、金銭的に支援を行う保険のことです。(原則、離職日の翌日から1年以内)
しかし会社員を退職後、開業届を出すことで個人事業主になると、「再度就職する意思がない」と見なされ失業手当を受けられないケースがあります。
会社を辞め個人事業主として開業する場合、一時の間、失業手当を受給したい方は、開業のタイミングに十分注意して下さい。
ただし2022年7月1日より「事業開始等による受給期間の特例」が新設されたので、開業のタイミングや届の出し方によっては、離職後最大3年間、失業手当が受けられる可能性が出てきました。
詳しくは以下の公式サイトで各種事例をご確認下さい。
参照先:離職後に事業を開始等した方は、雇用保険受給期間の特例を申請できます|厚生労働省
開業して個人事業主になると、会社員時代にはなかった毎日の記帳や確定申告時の手続きなど、多くの手間が発生します。
これは開業に伴う一種のデメリットといえます。
さらに経理業務で帳簿を付ける際、やり方として「単式簿記」と「複式簿記」の2種類がありますが、青色申告特別控除制度を活用して所得額から最大65万円、または55万円の控除を受けたいなら、複式簿記での帳簿付けが必須の条件になっています。
複式簿記は単式簿記より記帳の仕組みが複雑なので、それだけでも煩雑に感じる方も多いでしょう。
一方で、同じ青色申告制度でも10万円の控除で構わないという方には、単式簿記による帳簿付けが認められています。
とりあえず複式簿記による記帳を避けたい方は、まずは単式簿記で始めて10万円の控除を利用しつつ、徐々に慣れてきてから複式簿記に移行して行ってもよいでしょう。
本章では、開業届提出に係る注意点を3点解説します。
開業届の提出期限ですが、届の書き方で参考にした国税庁のサイトで、「この届出書は事業の開始の事実があった日から1カ月以内に納税地を所管する税務署長に提出して下さい」と記載されています。
参照先:書き方|国税庁
しかし開業届は出さなくても特に罰則はなく、税務署から出すよう督促されることもありません。
過去には古い日付で開業届を出して受け取ってもらえたケースもあります。
しかしメリットの項目でも説明したように、開業届を出すことで得られる利便性も多々あるので、できればルール通り、開業したら早めに(1カ月以内に)提出するよう心がけましょう。
会社員が副業をやっていて、収入がそれほど多くない場合、開業届の提出は原則必要ありません。
一方で名前は副業でも、事業と判定されるレベルの所得を伴う継続的な仕事となれば、開業届を出した方が良い場合もあります。
ただ開業届の提出が、勤めている会社に副業バレの原因となるかについては直接的にはなりにくいと考えますが、会社給与と副業の両収入に対する住民税天引きの取扱いで「住民税が多すぎる」と会社に知られてしまうと、副業がバレてしまう可能性があるので対応には注意が必要です。
個人事業主が開業にあたり、青色申告事業者となるには、開業日から2カ月以内に、管轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
青色申告を選択すれば、青色申告事業者として複式簿記に基づく会計帳簿の作成など、事務負担は伴うものの、最大65万円の青色申告特別控除が利用できたり、青色事業専従者給与として家族などに支払う給与を経費に計上できたりと、メリットも多いです。
開業にあたり、白色申告を選択する個人事業主もいますが、現行は全ての事業者に記帳が義務化されており、青色申告・白色申告とも事務負担の程度は変わらなくなっています。
各メリットを利用したいなら、できれば開業から積極的に青色申告を行った方がいいでしょう。
開業後に注意すべきポイントは主に以下の2つです。
確定申告書を作成する際、元の資料となった領収書や請求書は税法により各々保存期間が決められています。
領収書類の保存期間…7年間
請求書類の保存期間…5年間
税務調査等で署員からこれらの証拠書類の提出を求められたら、すぐに応じる必要があります。
帳簿書類に関しては、日頃からきちんとした整備及び保管を心がけておきましょう。
開業後、毎年確定申告が必要になってきます。
個人事業主は確定申告の期限を確認して期限内には確実に申告を行うようにしましょう。
個人事業主の場合、確定申告は例年2月16日から3月15日に行うことになっています。
3月15日までに申告を終わらせるとともに、所得税額を納税する必要があります。
もし期限までに確定申告ができないと期限後申告となって、さらに税金の納付も遅れれば延滞税(最高年利14.6%)が課されたり、ケースによってはさらに高い無申告加算税(最高20.0%)が課されたりしますので注意が必要です。
本記事においては、税務署に提出する開業届について、出す際の必要書類や書き方、メリット・デメリット、注意点など、詳しく解説しました。
開業届は提出することで、青色申告ができるようになったり屋号付き口座が開設できたりと、多くのメリットがあります。
出すことによるデメリットもありますが、全体としてはメリットの方が大きいと思われますので、事業を始めた方は提出しておく方が無難です。
本記事で解説したポイントを十分に吟味していただき、開業届を提出する際には、漏れのない手続きを進めて下さい。
補助金コネクトでは、中小企業に役立つコンテンツを配信しております。
開業に伴う資金調達のご相談もお受けしておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせ下さい。